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選ばれたのは私でした  作者: 秘翠 ミツキ


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アレクシアが母に叩かれる、そう思い身構えた瞬間だった。扉が勢いよく開いた。そこに立っていたのはなんと……全身汗だくで息を切らしているオリヴェルだった。


「そこまでだ。はぁ、はあっ……っ……こ、これ以上っ……アレクシア、をっ……傷付けるのはっ……こ、この、ぼ、僕が」


何故オリヴェル様が……それより、大丈夫かしら……。アレクシアは息を切らしながら話すオリヴェルを見遣り眉根を寄せる。


「王太子殿下⁉︎」


父と母は目を見張る。あんなに泣き喚いていたエルヴィーラは、オリヴェルの姿を見て泣き止んだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「オリヴェル様、お水を」


後から入って来たリーゼロットが水を差し出すと、オリヴェルはそれを一気に飲み干す。


「落ち着きましたか」


「あ、あぁ、すまない。それより何処から水を」


「あちらの花瓶から少々拝借致しました」


オリヴェルは咳き込む。



「冗談です。そちらにいた侍女から頂きました」


「リーゼロット、君は……」


オリヴェルは恨めしそうに見遣るが、リーゼロットは素知らぬフリをしている。オリヴェルはワザとらしく咳払いをし、仕切り直す事にした。


全速力で馬で駆けて来た所為で、息が切れるは全身汗をかき、少々格好悪い登場になってしまった。本来ならば本の中の王子の様に颯爽と格好良く登場したかった……。だが過ぎた事を後悔した所で何も始まらない。ならば、巻き返しを図るまでの事だ。


オリヴェルは乱れた髪をさり気なく直しながらアレクシアへと近づいた。床に座り込む彼女の前に跪き手を差し出す。


「待たせたね、アレクシア」


そう言った瞬間アレクシアは目を大きく見開いた。何か言いたげに口を開くが言葉が出ないようだ。


「もう、大丈夫だからね。僕が君を護るから……我慢しなくても良いんだ」


彼女は眉根を段々と寄せていき、くしゃりと顔が歪んだ。涙をはらはらと流す。


「アレクシア……」


なんて美しいんだ。君は涙まで綺麗なんだね。それに泣き顔もまた唆られる……違う意味で彼女を鳴かせてみたい……。


オリヴェルは思わず喉を鳴らす。


「ゴホン。オリヴェル様、妄想なさるならまた後になさって下さい」


リーゼロットの言葉に我に返る。事実なので何も言い返せずにバツの悪い顔をした。

アレクシアの涙を拭いながら、自らへと引き寄せる。


「ちょっと、ごめんね」


そう言ってオリヴェルはアレクシアの両耳を手で塞いだ。彼女は不思議そうにしているが、笑って誤魔化した。


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