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オリヴェルは今直ぐ意識を手放したくなる程の衝撃を受けてた。
まさか、まさかの悪い予想が当たってしまった……。やはり殿下とはモーリスの事だったのだ。
しかもモーリスは既に彼女に結婚を申し込んでいる。
終わった……もう、無理だ。アレクシアもモーリスも互いに想い合っているのだ。自分が入る余地などありはしない。
少し離れた柱の陰から二人の様子を覗き見していたオリヴェルは、絶望に打ちひしがれていた。
「もう……終わりだ」
「情けないですよ、オリヴェル様」
「っ⁉︎」
突如背後から肩を叩かれ、オリヴェルは思わず飛び退く。
「リーゼロットっ……君なんで、ここに」
気配がまるで無かった……いやあの二人に気を取られていたので気付かなかっただけかも知れない。
「何故とはおかしな事を……ここは離宮ですよ。寧ろオリヴェル様こそ何か御用事でも?」
「……きゅ、急用で、ちょっとね」
「急用、ですか……柱の陰で」
リーゼロットの向けてくる不審な目が痛い。
本当は何時もの時間になってもアレクシアが書庫に姿を現さないので心配になり様子を見に来た。だがそこでモーリスと一緒にいるアレクシアという衝撃的な現場を目撃してしまい思わず柱の陰に隠れた……などとは言える筈がない。
「悔しくないんですか?モーリス様に先を越されて」
「なっ……」
「良いのですか?アレクシア様を奪られてしまっても」
どうやらリーゼロットは確りと覗いていた様だ。相変わらず油断のならない。オリヴェルは顔を引き攣らせ、引き気味にリーゼロットを見遣る。
「そもそもオリヴェル様が、もたもたされていらっしゃるからこんな事になったのではありませんか?折角毎日二人きりになる時間があるにも関わらず、何の進展もしていない様子ですし……紳士たるもの時には強引さも必要ですよ。優しいだけでは女性は落とせません」
一体何処まで筒抜けなんだ……しかも、説教を受けるなど心外だ。
「そうは言っても彼女は……モーリスが好きなんだ。モーリスだって同じだ。なら僕は潔く身を引くしか……ないよ」
肩を落とし自嘲する他ない。リーゼロットはそんな自分に鋭い視線を向けてくるが、それ以上何も言う事が出来なかった。ここまでお膳立てして貰った彼女に対しては本当に申し訳なく思う。だが、仕方ないじゃないか。
諦めたくはないが、彼女を無理矢理手籠にするような真似はしたくない。
「何をまた戯言を仰ってるのですか……情けない。彼女がお好きなら、手籠にするくらいの気持ちでぶつかったら如何ですか」
いやいや、何言ってるんだ⁉︎
オリヴェルはリーゼロットにドン引きした。スッと彼女から距離を取る。昔から少々変わってはいると思っていたが……そういう趣向があるとは……。
「何ですか、その目は。言っておきますが私にそのような趣味はございませんので悪しからず。ただの物の例えです。それくらいの気持ちではないと、奪られてしまいますよ?と言う私からの優しい忠告です」
「……」
確かに、リーゼロットの言葉に一理ある。だがそんな事言っても、一体どうしろと言うんだ。この状況を打破出来る名案など思いつかない。
オリヴェルが頭を抱え悩ませていると、リーゼロットに徐に腕を掴まれた。そして、引っ張られる。
「リーゼロットっ⁉︎」




