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アレクシアは、いつも通り書庫へ向かう為廊下を歩いていた。病だとオリヴェルに伝えた日から彼は毎日、薬を持参してくれている。その事に対して、彼の心遣いが酷く嬉しい。ただ、余り薬は効いていないようで彼と一緒にいると益々落ち着かないし、身体が妙に熱くなる。
薬を飲んでも効かないなんて、まさかこれは不治の病では⁉︎とさえ思えてきた。
「私……死んでしまうの」
そんなのは嫌だ。まだあの書庫にある大量の本達のほんの一部しか読んでいないのに……。せめて自分の大好きな冒険物は制覇したい。
「はぁ……」
「どうしたの?元気ないね」
「⁉︎」
不意に声を掛けられ、アレクシアは身体を跳ねさせる。いつの間にか見知らぬ青年が横に立っており、アレクシアの俯き加減の顔を覗き込んでいた。
「あ、あ、あの……どなた、ですか」
彼と距離を取りながら後退る。
「ん?ああ、そっか」
一瞬不思議そうに首を傾げた青年だが、何か合点がいったように手を鳴らした。
「シア、私よ……モニカよ」
青年からは似つかわしくない聞き覚えのある女性の声が聞こえる。アレクシアはその場で固まり彼を凝視した。
「モニカ、様?……え、あの。え……」
アレクシアは隣に座るモニカもといモーリスを横目で見遣る。彼女いや、彼はまさかの第二王子殿下だったなんて……頭が混乱している。
「あはは、実はちょっと些末で色々と深~い事情があって女性に化けてたんだ」
ちょっと些末で色々深い事情で女性に化けるとは、一体どんな理由なのか……聞きたいような、聞きたくないような。そもそも些末で深いなんて矛盾している。
そしてアレクシアはそこである事に気が付いた。彼は以前、モニカの秘密と口にしていた。ならばオリヴェルはモニカの正体に気付いていた……。
「うん?シア?」
アレクシアは息を呑む。最初はオリヴェルとモニカは想い合っているのだと思っていたのだが途中でモニカは妃教育から外れて勘違いだったと思ったが……実は、まさか、これは。
「モーリス殿下は、王太子殿下の事……好き、なんですか?」
「え、兄上の事?……まあ、好きかな?」
やはりそうだ。これは正しく禁断の愛。ちょっと些末で色々深い事情とは、そう言う事だ。きっとモーリスは、二人の複雑な心境を表したかったのだ。
兄弟愛に加え同性愛。
きっとモーリスは、オリヴェルの妃選びを妨害する為に内緒で紛れ込み、彼にバレて叱られるなどして致し方無しに身を引いた。だが、諦めきれずまたこうして離宮にまで足を運んで来た、と言う事だろう。
そこまで推測した時、不意に自分の胸が、苦しい事に気が付いた……。どうしてか分からないが。
アレクシアは胸元に手を置き握り締める。オリヴェルもきっとモーリスを愛している。二人は想い合って……。
「……」
そっか……私、いつの間にかオリヴェル殿下の事を好きになってしまっていたのかも知れない。これが、恋というものなのね。
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オリヴェルにバレてから熱りが冷めるまで暫く大人しくしていようと思っていたが、どうしてもアレクシアの事が気になり離宮まで足を向けた。すると丁度よく廊下を歩いていた彼女と出会した。
彼女はモーリスの姿をしている自分を見て心底驚いた様子だった。その姿に思わず可愛いと、胸が高鳴る。
戸惑う彼女の手を引き、木陰まで引っ張って行くと二人して腰を下ろす。横目でこちらの様子を窺う彼女に口元も緩む。
「モーリス殿下は、王太子殿下の事……好き、なんですか?」
そんな中、彼女から意外な質問をされた。
兄上が好きかどうか……まあ、別に嫌いではない。兄弟仲も可もなく不可もなくという感じで悪くはない、と自分は思っている。兄がどう思っているかは知らないが。
「え、兄上の事?……まあ、好きかな?」
なのでそう答えると、アレクシアは百面相を披露した。驚いた表情の後、頭を抱え悩み、次は悲しみ項垂れた。そして最後には穏やかに微笑んだ。
一体彼女に何が起きたのか。少し抜けて……大分抜けているとは感じていたが、これは面白い。思わずモーリスは笑ってしまう。
「シア、君本当面白いね。……やっぱり欲しいな」
「殿下?」
「あのさ、シア。俺の奥さんにならない?」
この瞬間、二人の少し離れた場所で人影がピクリと揺らいだ。




