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選ばれたのは私でした  作者: 秘翠 ミツキ


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「シアは、そのさ……どんな王子が好き?」


明らかに、聞き方を間違えた。どんな男性が好きなのかを聞き出そうとしたのに、王子限定にしてしまった。折角気を取り直して質問をしたのに、とんだ失態だ。


アレクシアを見ると、予想通り微妙な表情でこちらを見ていた。


「どんな、王子、様……」


多分気を遣ってどう答えるか悩んでいるらしい彼女は、かなり困惑している。

それはそうだろう。もし逆の立場なら、オリヴェルも同じ反応をした筈だ。何しろ質問している当人が王子なのだから、答え辛い事この上ない。


「見た目が格好いいとか、優しいとか、頭が切れるとか……」


自分で話しながら、何を口走っているんだと思った。これらの条件が王子である必要性を全く以て感じない……自分が莫迦過ぎると生まれて初めて思った。恋をするとこんな腑抜けになるのかと、笑えてくる。


「私などが、その様な事を口にするのは恐れ多い事です」


彼女の事だ。きっと当たり障りのない返答をしてくるものだと思っていたが……答えすら返して貰えなかった。オリヴェルは、項垂れる他ない。だがここで諦めたくはない!


「聞き方が悪かったね。……シアは、どんな男が理想?」


オリヴェルはめげずに再び笑みを作り替え、彼女に質問をする。


「……分かりません」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



唐突なオリヴェルからの質問にアレクシアは困惑し、戸惑っていた。始めの「どんな王子が好き」は質問の真意を測りかねた。だがその後に「どんな男が理想」と言い直しをされ、更に分からなくなってしまう。


そんな事考えた事も無かった。確かに昔は本の中に登場する王子様に憧れたが、それとは違うと思う。彼が訊ねているのはきっとそんな非現実的な事ではなく、結婚相手や恋人にするなら……そういう意味だろう。


「……分かりません」


こんな返答は失礼だと頭では理解していたが、思わず口を衝いて出てしまった。


「も、申し訳ありませんっ。失礼な事を」


「構わないよ。『分からない』それが君の今の率直な気持ちなんでしょう」


だが彼は、優しい声と口調でそう言ってくれた。アレクシアは、言葉もなく静かに頷く。


「それに、僕にとっては朗報だよ」


若干話が噛み合っていないように感じる。何故彼にとって朗報なのだろうか……だがこれ以上失言しないように余り深く考えないようにしようと、アレクシアは聞き流す事にする。



「……殿下は、どの様なお方が理想なんですか」


失言しない様にと考えた矢先、早速やらかしてしまった……。だって、気になってしまったのだ。モニカの事は予想が外れた故、彼の理想は、お気に入りは誰なのだと。

やはりあの中にいるのだろうか。


「王太子妃候補者の方々の中に……いらっしゃいますか」


知りたい様な、知りたくない様な複雑な思いに駆られて口が勝手に動いてしまう。


「あー……どうだろうね……」


歯切れ悪く曖昧な返答に、アレクシアは眉根を寄せた。


もしかして……候補者の中ではなく、別にいらっしゃる、とか。複雑そうな表情を浮かべているオリヴェルを見て、アレクシアはハッとする。


まさか道ならぬ恋をしているのでは……。


「シア?」


「……」


アレクシアは黙り込みオリヴェルをじっと凝視した。


殿下には姉君や妹君はいらっしゃらない故、そういうのではない。ならば、人妻、とか……いやもしかしたら、男性⁉︎とか……はたまた凄い歳の差とか……。


「どうかしたの?僕の顔に何かついてる?」


「え、い、いえ‼︎申し訳ありません、何もございません」


彼の問いにアレクシアは我に返り、急いで謝罪を述べ頭を下げた。


以前なら「頑張って下さい」そう言えたのに、今は何故か言えない。オリヴェルの想い人が誰かは分からないが、もやもやして胸がチクリと痛んだ。



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