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王太子妃候補は、総勢20人。期間は半年。その間に、妃教育を受け王太子妃に相応しい者が1人選ばれる。
アレクシアは、妹のエルヴィーラの侍女として城へとついていく事になってしまった。
無論我が侯爵家には、優秀な侍女は多数いる。だが敢えてアレクシアを侍女として従えていくのは、エルヴィーラの嫌がらせだ。
「お姉様は、私が王太子妃になるのを横で指を咥えて見てるといいわ」
妹の趣味、姉を虐める事。アレクシアは、エルヴィーラの自尊心を満たす為だけに、侍女として連れてこられた。流石にこれは、迷惑極まりない。
これまで、彼女からは様々な嫌がらせをされてきたが、その場をやり過ごせば何とかなった。基本エルヴィーラは気分屋な上飽きっぽい性格なので、やたらとしつこい時もあれば、まるで構ってこない事も多かった。
故に、屋敷では極力エルヴィーラの視界に入らないように、書庫に避難していた。エルヴィーラは頭は悪くはないとは思うが、決して良くもない。
彼女の知識は博学というより、断片的なものばかりで中身が空っぽだ。どこかで聞き齧ったものを、マネして話しているだけ。だが誤魔化し繕うのが上手い故に周囲はそれに騙される。
城へと向かう道中、馬車の中でエルヴィーラは上機嫌で鼻歌を歌っていた。
きっと、頭の中では既に自分が王太子妃にでもなったつもりでいるのだろう。
屋敷を出る際に、両親からは「貴女なら、王太子妃になれるに決まってます」「もう、エルヴィーラに決まったも同然だ」などと囃し立てられていた。
ここまでくると、親バカも大概だ。
王太子妃になるなど、そんな容易いことではない。沢山の中からどの様に20人を選んだか分からないが、正直エルヴィーラに望みがあるとは思えない。
ましてこんな底意地の悪い妹が、王太子妃に延いては将来の王妃になどなったら、この国は終わりだ。考えただけで、頭が痛くなってくる……。
それにしても半年か……長い。
その間、大好きな読書はお預けだ。荷物になるからと母からは、荷造りした中から本を取り上げられてしまった。
私の唯一の、癒しが……。
母は代わりにエルヴィーラの装飾品を、侍女に詰めさせていた。
その光景に、アレクシアは内心ため息を吐いた。そんなに欲張って持って行ってどうするつもりだろうと。多分、馬子にも衣装にすらならない……。
両親には自分の娘だからエルヴィーラは可愛く見えているだろうが、実際はそうでもない。周囲は侯爵である父に気に入られようとして、エルヴィーラを美しい、可愛いなどと褒めちぎる。それを両親やエルヴィーラは鵜呑みにしていた。
もう少し冷静になって、鏡を見たらいいのに……。
そんな風に思わざるを得ない。その理由は……。
エルヴィーラって……結構ポッチャリしてるのよね。隣で、焼き菓子を食べるエルヴィーラに苦笑した。




