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その場が静まり返った。だが、アレクシアは取り繕う事すら出来ない。情けないが、自分の言葉に自分で傷付いている。
モニカとリーゼロットはきっと驚いているか呆れているだろう。アレクシアは俯いていて見えないが、2人からの視線が痛い程に刺さる。
「シア、ごめんなさい。変な事聞いてしまって……」
暫くしてモニカの戸惑った声が聞こえてきたと同時に、頭に触れられた。
アレクシアの身体はビクッと震える。頭に触れられるのは余り好きじゃない。いつも、母から叩かれていたのを思い出してしまう……ギュッと目を閉じ、身体を強張らせた。
ポンっポンっ。
「っ……?」
モニカの手は想像したよりも遥かに優しく、そして大きくて温かい。怖くない。寧ろ、心地良い……だがこの感覚、最近どこかで体感した様な……そうだ、あの時だ。木陰で眠ってしまった時に誰かに頭を撫でられたのを、夢現に覚えてる。
まさか、あの時の優しい方はモニカ様?でも、掛けてあった上着はどうみても男性物だったので別人かも……。だが廊下に落ちていた本とあの時置いてあった本は続き物だった。別人と考えるには、不自然過ぎる……。
アレクシアは戸惑いながらもゆっくりと顔を上げ、モニカを見た。瞬間目が合うと、彼女は優しく笑ってくれた。
「そうだわ」
「……?」
「シアをいい所に連れて行ってあげる。きっと元気になるわ。さあ、行きましょう」
モニカは唐突にそう提案すると、シアに手を差し伸べてきた。
「あ、あの」
「シア……おいで」
瞬間心臓が高鳴った。普段より低く優しいモニカの声が耳に響く。まるで引き寄せられるように、アレクシアは差し出された手を取った。
モニカが、まるで違う人に見える……そうまるで、物語に出てくる……。
アレクシアの手を取るとモニカはさっさと歩き出してしまう。完全にリーゼロットをいないものとして扱っているようだ。
「あの、モニカ様。リーゼロット様は」
アレクシアが我に返りリーゼロットを見遣ると、呆れ顔の彼女は、こちらに向かって手をひらひらと動かしている。
「シアさん、またね」
戸惑いながらも、何とか会釈だけはするが、モニカに手を引っ張られてしまう。
「シア、よそ見してはダメ。貴女は、私だけを見て」
「え……は、はい……?」
よく分からないが、取り敢えず返事をするとモニカは満足そうに笑っていた。
「こ、こ、此処は‼︎まさか‼︎」
アレクシアは、モニカにとある場所へと連れて来られた。その場所とは、なんと……。
「書庫……」
余りに広い書庫を前にして、アレクシアは立ち尽くしていた。侯爵家の書庫もそこそこ大きさはあるが、何倍いや何十倍もありそうだ。
こんなに沢山本があるなら、1日1冊読んだとしても全て読み終わる前に一生を終えてしまうだろう。
想像しただけで幸せ過ぎるっ‼︎
目を輝かせながら息を呑んだ。アレクシアはモニカを、無意識に上目遣いで見遣るとおずおずと話しかける。
「あ、あの、モニカ様……その、あの」
「好きなだけ、読んでいいのよ」
その言葉に、アレクシアは衝撃を受けた。
「好きな、だけ……ここは天国ですか⁉︎」
普段ならこんなはしたなく大きな声は上げない。だがアレクシアは、暫く色々と我慢していた事で妙に気持ちが昂ってしまった。




