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戦闘シーンは難しいですね。
もっと長く戦闘シーンが書けるようになりたい。努力ですね…ハイ
翌日早速、冒険者ギルドの建物へと入るリュウがいた。
いくつかのカウンターがありそのうちの空いている一つのギルド職員に声をかける。
「冒険者登録をしたいんですが」
「登録証明書はお持ちですか?」
「ああ」
リュウはさっそく取り出し職員に手渡す。
「はい、少々おまちください」
職員は証明書を手に奥に姿を消した。
リュウは手持無沙汰でギルド内を見まわすとカウンター横の壁一面に依頼書と思われる紙が貼りつけられた掲示板を見つけた。
今までは眺めているだけだった依頼書を見ていると薬草取りや荷物運びなどに混じって魔物討伐依頼も結構あることに気が付く。
ここはそれなりに魔物が出るらしいな
魔物情報を見ていると討伐しなれた魔物もある一方で見たことのない魔物もあった。
しばらく見ていると名を呼ばれた。
「お待たせしました。リュウ=K=マリノス様。こちらが試用カードと試験用の依頼になります」
「試験用?」
「はい、こちらの試験用依頼を期日までに達成していただき、証明品とこの試用カードを提出いただくことで試験とさせていただいております。期日以内にお持ち込みくださいね」
カードと依頼書を受け取った。
依頼書は見ると魔物討伐を始めたころによく狩っていたコブリンだった。
期日は一週間あったが二時間ほどあればおわる簡単なものだった。
「あのさ、その日に持ってきても問題ないのか?」
「大丈夫ですよ。リュウ様はこの近隣のギルド内で有名人ですので簡単すぎるかと思いますが一応規則ですからこの依頼なんですよ」
「あ、そう」
「それと今までの討伐と売買履歴はその試用カードに登録されているので正式採用されると通常はランクFからのスタートなんですが討伐数と条件討伐もある程度クリアされていますのでランクはCに繰り上げになりますよ」
「そんなに?」
「はい。近隣のギルド職員は皆、リュウさまの正式登録を楽しみにしていたんです」
にこやかに言われた。
「そうか、ありがとう」
依頼書とカードを収納してギルドの建物を後にした。
この時間なら索敵呪文『サーチ』使えばすぐ討伐できるな
さっそく町の外に出た。
索敵をすると街から遠巻きに魔物反応がそれなりにあった。
けっこう魔物がいるな。でもこれくらいの数と質なら問題はないな
魔物は内包する魔素濃度で強さがわかる。反応のあった魔物のなかでも一番弱い反応を探して森の中に一つ見つけるとそこに向かう。
森の中をしばらく進むと足元に見慣れた薬草がちらほら見かけた。
けっこう自生してるな。後でキュアを作るか。この分ならハイキュアが作れそうだな
キュアはMP回復の効果があるのでいくら持っていても損はない。ハイキュアはキュアより効果が高いのでより重宝する。
採りすぎない程度に採取しさらに奥に歩を進めると遠くに獣姿の長い耳を持ったゴブリンがいた。
気配を消し、刀を抜く。
ゆっくりと近寄り、自分の警戒範囲に敵が入る。
一気に駆け出し相手が反応する前にリュウは刀で一刀両断してゴブリンを狩った。魔物はその場で霧散すると討伐証明品でもあるゴブリンの耳だけがドロップ素材として落ちていたので拾いしまう。
もどるか。ギルドに調合施設があったはずだしそこでキュア作るか
用事はすんだので一旦街にもどったリュウだった。
ギルドに戻るとカウンターで討伐完了の報告とその待ち時間で調合施設を借りる。
調合自体は魔道具作成スキル内にまとめられているので手慣れたものだった。
しばらく調合に集中しているとギルド職員が声をかけてきた。
どうやら正規カードが出来上がったらしい。
持ってきてくれたようだ。
「持ってきてくれたんだ。ありがとう。今、手が離せないのでそこに置いてもらえるとありがたいな」
ギルド職員はカードをすぐそばに置いてくれたがなぜか立ち去ろうとしなかった。
「何か不都合でもあったのか?」
手元に視線を固定したまま立ち去ろうとしない職員に声をかける。
「リュウさんにお客が…」
「客?」
「はい。調合しておられるので時間がかかるだろうと申し上げたんですがどうしても待つといわれるので…」
「わかった。もうちょいで終わるから」
「はい、そうお伝えしますね」
職員は部屋を出て行った。
客ね。誰だろう。俺がここにいるのを知っているのは家族くらいだしな
「………」
ふと昨日の貴族一行を思い出した。
まさかな
わざわざ探すようなことでもないだろうと思っていたのだ。
その判断は甘かったことをすぐに知ることになった。
調合を終えてギルドの大広間に戻ると昨日の貴族たちがそこにいた。
俺の姿を見つけると彼女はこちらに駆け寄ってくる。
「見つけた。探したのよ。勝手にいなくならないでよ」
「客って君か?」
「そうよ昨日のお礼がしたいのよ」
俺は呆れた。
「君、クリスだっけ?お礼は要らないって言っただろう」
「そうだけど…」
クリスは言いつつなぜかほんのり顔が赤かった。
「探しちゃいけない?」
「迷惑だ」
「……。助けてもらって何もせずに〈さようなら〉ってわけにはいかないのよ。貴族の沽券にかかわるの」
そういわれると俺は弱り果ててしまう。おもわず頭を掻く。
「よわったな」
「ね。何か欲しいものはある?お金で終わらせたくないのよ」
クリスに腕を引っ張られてギルドを出るとそのまま大通りに連れてこられる。
身長差が20以上ある二人だったが周囲から見ればデートにも見える光景だ。
今日のクリスはすこしラフな姿で女性らしさが強調されている服だった。
スタイルは良いほうなのか歩くたびに胸元が揺れている。
リュウも年頃の男である。
気を抜くと視線が胸元に吸い寄せられそうで視線の場所に困った。
この数年女性には縁がない生活をしていたリュウにとって刺激的過ぎた。
「お礼なんて本当に要らないんだよ。欲しいものもないし、ある程度まとまった金はもってる。大したことなんてしてないのにお礼もないだろう」
「そ、そうなんだ…」
クリスは明らかに落胆しているようだった。
「リュウは冒険者になったのよね?」
「ん?ああ、おかげさまでね」
「じゃあ、護衛依頼お願いしたいわ。王都までの護衛依頼」
「え?」
「実は護衛はもっといたんだけど貴方の言うようにあの馬車のせいなのか盗賊に襲われたのは実はあれば初めてじゃないのよ」
「…だろうな。あの馬車目立ちすぎるからな」
「あれより前に襲撃されたときに半分以上護衛者が護衛できなくなって数が少なかったのよ」
「そうか無事だっただけ、運がよかったな」
「ふふ、そう思うわ。でもあの馬車は捨てるわけにはいかないのよ。母の形見だから」
「そうか」
「王都に帰れば報酬は父上が出してくれるわ。おそらく破格の報酬になる。護衛となれば信用できる人じゃないと厳しいけど貴方なら腕も立つし信用できる。悪い話じゃないはずよ」
「………」
王都にはエルナ姉さんがいる。行かないという選択はない。この町周辺も比較的魔素はきれいだから留まる必要はないのも事実だ
「断る理由はないな。王都には行く理由はある」
「なら決まりね。よろしくね、リュウ」
「ああ、よろしく頼む」
クリスは嬉しそうに笑みを浮かべた。
二日後の朝に王都側の出口に合流することになった。
それまでは自由だ。
ギルドの魔物討伐をこなしつつ食料や旅に必要なものを揃えた。
比較的大きな町だったので防具屋があったのだが品は良くなかった。魔術付与もできない素材でできていたため買う必要はなかった。
この町の防具より自分が付与した村の装備のほうが性能は良かったのだ。
武器もハイスペックな自前があるため金はあまり使わずに済む。
道具収納は本当に便利だった。
専用の異空間にしまうため重さも感じず、時間も止まるので食料をいれても腐らない上に鮮度も維持されるのだ。個別識別が働くのか武器などとも干渉しない。取り出すときも窓から一覧が出るのでしまい忘れもない。
身軽なのは戦闘に必須だからな。なにより武器が念じるだけで取り出せるのは覇王スキルのおかげか。いかに前世で戦闘をしていたのかわかるな
出発当日、町の出入り口に行くとクリス達が待っていた。
俺の姿を見るとクリスは寄ってきた。彼女の姿は身軽な動きやすい服装だった。腰に小さめの杖も持っている。
「時間ぴったりね。行きましょうか」
「ああ」
街を出てしばらくたつとクリスが不思議そうに質問をしてきた。
「リュウは魔術師って話だけど杖は持ってないの?」
「杖はもっているさ。けど大抵はこれで何とかなるし、杖がいるような戦闘はめったにないな」
「魔法より体を動かすほうが好きなのね」
「ああ、魔法は使うけど強化魔法のほうが使いやすいからな」
「攻撃魔法は苦手なのね」
「いや、そんなことはないさ。苦手なわけではないが武器と違って魔法はまだ手加減できないから使うと周囲に被害が大きくでる。使いどころに困っているだけだ」
「え、手加減?」
「ああ」
「魔術師では周囲に被害が出るようなことはないはずよ?」
俺は言われたことでやっと気が付いた。彼女の言う魔術師と自分の魔術師に差があることに。
「……便宜上魔術師を名乗ったが俺は正確には魔術師じゃないんだ」
「魔術師じゃない?魔術師以外に魔法を得意とする職業は聞かないわよ?」
「……」
俺はそれには答えなかった。
クリスは考え込む。ふと一つ心当たりがあったのか俺をじっと見つめてきた。
「まさか賢者とか言わないわよね?」
俺は一息ついた。
「そのまさかがおれだ」
クリスは絶句した。
「…賢者…。初めてね。遭遇したのは。だからなのね、ギルドで調合していたのも」
「ああ」
俺はクリス達の反応でいかに賢者の職業がレアなのか実感したのだった。
賢者は魔術師の上位職。なり手が少ない職だ。
ちなみに、戦士の上位職は騎士。魔戦士の上位は聖騎士。僧侶の上位は司祭だ。
上位職はどれも転職に条件があり、なり手は少ないが賢者は一番条件が厳しい職だ。
これで王者職業がばれたらどうなるのか怖いな。覇王といわれる奴は歴史上でも一人しかいないという話だしな
「珍しい職業だからあまり広めたくないんだ。厄介ごとは背負いたくない」
「そう…」
道中何事もなく進んでいた時だ。
俺は周囲の気配が不穏に包まれていると感じていた。
魔素が汚れているのか。いやな気がする
あまりの不穏な空気に俺も警戒を強める。
不穏な空気はほかのクリス達も感じているらしく警戒を強めていた。
『サーチ』
俺は周囲を囲まれている気配を感じ『サーチ』をかけた。
手元に周囲の地図が浮かび上がる。
見ると俺たちを囲むように赤い光点が浮かび上がる。光り具合からオークの集団に取り囲まれているようだ。
「赤いこれって敵?」
「ああ、取り囲まれているな。おそらくはオークの群れに見つかったようだな」
「オークって、この数は多すぎるわ」
クリスは自分達ではさすがに無理と判断したようだ。
「自分の力量を知っているのならまだ伸びしろはある」
俺は馬車を止めるように言った。
「殲滅する。馬車から離れないでくれ」
「どうするの?」
『マジックシールド』
魔法結界を張ると馬車から数歩離れた。
右手を頭上に掲げた。
『ハリケーン』
呪文を唱えると馬車を中心に竜巻のように周囲を暴風にさらした。
風が収まると馬車の周囲は嵐の後のように荒れていた。オークは全滅していた。ドロップの皮だけ残して。
俺はそれを見て気が滅入りつつ結界を解いた。
「杖なしの最弱魔法なのにこんなのって…」
クリスが周囲の惨状に驚いていた。
「だから使いたくないんだよ。強すぎる魔法はただの災害だ」
俺は言ってため息がでた。
「それに無詠唱。すごいわ」
「まぁいい。全滅したようだし、行こうか」
「え、ええ」
一行はその後何事もなく王都に到着した。