第46話:奪われたマナ
更新が遅くなってしまい、申し訳御座いません。
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「ここは…?」
花木に溢れた空間に、アレクは立っていた。
さっきまでの戦いが嘘のように、静寂に満たされた場所だ。
心が満たされる感じがする。
「戦いは…どうなったんだ…?」
近くで“炎の精霊サラマンダー”が楽しげに飛び回り、他の精霊達と何やら分からない言葉で話している様子だ。
「サラマンダー!戦いは!?どうなったんだ?」
アレクが声をかけるも、サラマンダーは反応しない。
他の精霊達も、まるでアレクの存在に気づいてないように、彼を無視して楽しげに飛び回る。
「サラマンダー!どうしたんだ?僕の声が聞こえないのか?」
・・・
刹那、闇が訪れた。
幸福な空間を満たす、真っ暗な闇。
闇は、アレクを飲み込む。
「なんだ?これ?サラマンダー!辺りを照らしてくれ!サラマンダー!!!」
闇は、アレクの力を絡めとる。
“マナの力”を絡めとる。
「サラマンダー!!答えてくれ!!だれか!!!!」
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場所は戻って、戦いの場。
アレクの前で、“漆黒の箱”を片手に魔王ヴェルネが高らかに笑う。
「ハハハハ!!奪ってやったぞ、勇者の“マナの力”!!僕を怒らせた報いだ!!」
ヴェルネは短い金髪の髪を片手でかき上げながら、ほっとため息をつく。
そして、アレクに向け魔力を込める。
「ふう…ずいぶん手こずらせてくれたね…だが、終わりだ。“魔水の流”。」
黒い水の塊が、アレクに向かう。
アレクは…意識を失っているのか、反応をしようともしない。
「(まずい!)」
タイランがすんでのところでアレクを抱きかかえながら魔法を回避する。
「…まだ動けたのか、死にかけの獣人が…邪魔だ!」
黒い水流がタイランに向かうが、タイランは四足を活かして疾走する。
そのままの勢いで他の倒れているメンバーも抱き込み、逃走を計る。
「な!?逃げ!!」
ヴェルネは追いうちを掛けようとするが、思うように体が動かない。
アレクとの戦闘で、彼もまた消耗していたのだ。
タイランは後ろを見向きもしない。
生きて逃げ帰ることができれば、まだチャンスはある。
その想いを胸に、ただ、ひたすらに魔王たちから距離を取る。
あっという間に遠く離れたタイランたちを見やり、ヴェルネは諦める。
「…まぁ、いい。逃げたところで何もできまい。“マナの力”はここにあるんだ。」
そう言って、ヴェルネは瀕死のガルバートとともに転移した。
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「アレクの“マナ”が…消えた?」
全速力でマリに向かっている途中、遠くの方で大きなマナと魔力の衝突を感じていた。
一つは以前感じたことのある、アレクの“マナ”だ。
もう一つは、おそらく他の魔王のものだろう。
アレクの“マナ”の力が爆発的に溢れだしたと思った次の瞬間、嘘のように“マナ”は消失してしまった。
「アレクに何かあった…?おい、ギル!マリの街までは、あとどのくらいの距離だ!?急いだほうが良さそうだ!」
振り返って、狼人族のギルに聞く。
「もうそんなに遠くない!タイラン様の匂いを感じる…。あっ!ユラ!前!」
前を再び向くと、遠くに大きな砂煙が上がっていた。
魔力を感じる…。俺達は注意しながら砂煙に近づいた。
大きな戦いがあったのか、周りは焦土化していた。
よく見ると、砂塵の中に金髪の青年が宙に浮かんでいる。
大きな魔力を纏っている…あれが噂の魔王か?
傍らには大きな獣が倒れているようだ。
金髪の青年は肩で息をし、こちらに気づく様子もない。
そのまま、隣の獣を担いで、“闇”の中に消えていった。
「魔王ヴェルネと、倒れていた獣は…おそらくランバートね…。」
ローゼが呟く。
あれが魔王か…だいぶ消耗していたみたいだが…。
「そんなことより、アレクは?タイランは!?」
「タイラン様ならあっちだ。タイラン様の匂いがする!マリとは方向が違う…」
「とりあえず、タイランを追おう!」
俺達は、タイランの匂いを頼りに南下することにした。
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