第32話:ル・ワンダ商会
お読み頂きありがとうございます。
ニーハイ…良いですよね。この世界にもあるようです。
よかったら最後までお読み頂けますと嬉しいです。
ダリの都バッカナールは、長期化する内紛によって、嘗てないほどに混乱していた。
その影響は勿論商業にも現れはじめ、街の店は次々と閉店していく。
もともと宝石などの豪華な装飾品を好んだダリの王族や貴族たちも、民衆の蜂起によってその地位や財産を失っていた。
・・・
「ちょっと!!聞いてへんよ!!店長でて来てや!!せっかくバッカナールまで来たんやけど…なんやのこの状況!?」
彼女はル・ワンダ商会のナキ。
たった今、バッカナールの大手の取引先が廃業しているのを目の当たりにしたのだ。
ル・ワンダ商会は、帝国では一時代を築いた名商会であったが…栄枯盛衰。競合他社の台頭により、今は落ち目の商会だ。
彼女はそこの駆け出しの商人である。
「こないな状態じゃ、他の取引先もあかんのやないか?もう…せっかくダリは羽振りがええから、仰山商品持って来とったのに~。」
新入りながら、彼女の目利きはなかなかの評判だ。しかしながら、世の中の情報に疎いのが「玉に瑕」であった。今回もダリの戦争に関してはちょっとは聞いていたが、その後のダリの情勢に関しては全く知らなかったのである。
そこに、バッカナールの兵士らしき青年が通りがかる。
「ちょっと兄さん、聞きたいんやけど。どうしたんやバッカナールは?」
「お姉さん、知らないのかい?この街は少し前に戦争があってね。それを機に市民が共和制を掲げて、ダリの王族に蜂起しているのさ。俺もその一人。よかったら一緒に戦わないかい?」
青年は爽やかに答える。
「蜂起って…知らんかったわ…。あたしは商人やで、一緒には戦えへんわ。やけど…質の良いポーションなら仰山持っとるで?よかったら買うてくか?今ならまけとくで?」
そういって、ナキは自身の艶やかな太腿をチラつかせる。
青年は少し顔を赤らめ…太腿に目が奪われる。
「いやいや…ポーションなら足りてるんだ!友達が近くの街に住んでいて、質のいいポーションを定期的に送ってくれてるから。」
青年は邪念を振り払うように、無理やりナキの脚から視線を逸らす。
「なんなら、その街…噂だけど、“エクスポーション”まであるって…。」
「エクスポーション!?」
「…そう。たしか、エクスポーションって言ってたと思うけど。どうやら領主が相当な“薬師”らしいよ。そのポーションも、エクスポーションも、全部領主が作っているんだってよ。」
「その街、どこにあるんや?!」
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ソフィアがこの街に住んで数週間が経つ。
彼女は本当に薬草が好きみたいで、毎日のようにポーション作りを楽しんでいた。
この間なんて…
「この薬の効果を確認したいので、ケガさせてみてもいいですか?」
とか、過激なことも聞いてくる。自分で作ったエクスポーションを試してみたいらしい。
ちょっとだけ、ケガさせられたい気分もするが…♡?
少なくとも、普通のポーションの効果は良いみたいだ。バッカナールの兵士の間でも噂になっていると、移住してきた兵士が言っていた。
バッカナールの街とも、だいぶ交易が進んできた。だが、問題なのは、うちにはまだ貨幣制度がないんだよな。ほぼ物々交換だ。ロジーに頼んで、硬貨でも造ってみようかな…。
などと考えていると、街の外に見たことがない馬車が来た。
中から女の子が現れる。
ショートカットに八重歯が可愛い。そして、何といっても“ニーハイ”が良い!
ニーハイ女子は俺の視線に気づいたのか、ニヤっとしながら口を開く。
「兄さん、ここの人か?ここに腕利きの薬師がおるんやろ?よかったら案内してほしいんやけど?」
そういって、チラッと太腿を見せる。“絶対領域”ってやつですか!
「はい、喜んで!」
・・・
「ここが、薬師のソフィアのいる場所です。お~い、ソフィア。」
「あ、ユラさん、どうしました?私にケガさせてもらう気になりましたか?」
「え♡?じゃなくて、こちらの美人が、ソフィアに用があるって。」
ちょっとドキドキしてしまう。
そんなやり取りはお構いなしに、八重歯の可愛い子がソフィアに挨拶をする。
「どうも領主様、はじめまして。あたしはル・ワンダ商会のナキと申します。ソフィア様の薬師としての腕、バッカナールで聞きましたで?なんでも、かなり質の良いポーションを作れるとか?しかも“エクスポーション”まで作れるって!」
この女の子の名前はナキというらしい。
それにしても、今ソフィアの事を“領主”って言わなかったか?
「ル・ワンダ商会のある“帝国”では、いま質の良いポーションの需要が高まっとるんですわ。また戦争でも起こそうとしとるんですかね?で、エクスポーションはその中でも高く売れるんです。」
ナキは続ける。
「ただ、なかなかエクスポーションを作れる人って、この近辺には居らんのですよ。たしか、聖ルクス国にも有名な薬師が居て…作れるって聞いたことはあるんですが…。どうにも変わった人で、年がら年中薬草を手に入れるために出払ってて、なかなか会えん人らしいんですわ。」
聖ルクス国の有名な薬師…それって。
ふとソフィアをみると、下を向きながらプルプル震えている。
お構いなしにナキが言う。
「で、領主様に相談なんやけども、よければその“エクスポーション”、あたしんとこで卸させてくれないやろか?何なら、特別に普通のポーションも良い値で買いまっせ?どうやろか?」
ナキはキラキラした目で訴える。
何なら俺に対して、また太腿をチラ見せしてる。「お前も説得しろ」的な圧を感じるな。
「ナキさん?って言いましたっけ?まず、私がその変わった薬師のソフィアです。訳あって、今はこのグラスランに住んでいるんです。ちょっと“変”で失礼しました。」
ソフィアが淡々と伝える。
「え!?」と、ナキは動揺する。
「それに、領主は私ではありません。そこにいる、ちょっと視線のエッチなユラさんです。」
“視線のエッチな”は要らない補足だろ!
「ええ!?こんなのが!?」と、ナキは余計混乱して言葉を乱している。失礼な。
「確かにエクスポーションはありますけど、人を“オカシイ”という人には簡単に売りたくありません。売るか売らないかは領主のユラさんにお任せします。」
完全に怒ってるな、ソフィア。
まぁまぁ、そんなに怒るなって。
そして、俺は地雷を踏んでしまうのだった。
「ソフィア…お前、やっぱり“ちょっとオカシイ”で有名だったんだな。」
次の瞬間、強烈なビンタが飛んでくる。
…誰か、エクスポーション…を…。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
ちょっと登場人物が増えてきましたので、どこかで閑話で整理したいと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。




