激闘編(17)/戦士の宴(17)
「なんか、すっごい予定調和な気がするんだけど」
「それは……そうかも知れませんが。俺はお嬢様がたと戦えれば、文句はありませんよ」
ニーナ=ファーウィンドには、初戦を突破して以来、どうしても納得できない疑問があった。
この催しもの自体が、武術会の名を借りた遊びの場なのではないか、
という疑念である。
皆が皆おちゃらけた戦いをしてきているように見えてならない。
「私だけなのかしら」
日常の会話ではない、と言えば、少しは驚いて頂けるだろうか。
半猪と令嬢の穏やかなやり取りは、激しい戦いの最中に行われている。
準決勝の第1試合である。
連日の激闘の疲れも見せない『白牙傭兵隊』と『南風団』の対決だ。
互いの手の内を知り尽くした半猪と令嬢が、まったく互角の戦いを演じている。
「……少なくとも俺は、お嬢様の熱いお気持ちを痛感しています」
「貴方たちは今、私の壁なのよ『南風団』。どうしても越えたいの!」
「ふっ……ジェシー殿は果報者ですなぁ」
跳躍したニーナの剣を、半猪が受け止める。
「どうしました、お嬢様。俺の知らない攻め方をなさらねば、決着がつきませんぞ!」
思い切って、令嬢が仕掛けた。
一瞬の隙を突いて槍の間合いの中に飛び込むと、素早く半猪の左腕を掴み、小手投げを打った!
ケルガーの巨体が宙を滑る。
場外すれすれで体勢を立て直し、槍を投擲した。
風を切って迫る槍を回避し、もう一度ニーナが走る。
小柄な身体ごと厚い鎧に激突させたひじ打ちで、ケルガーの胸当てを砕いて場外へ弾き飛ばした。
「参りました、お嬢様」
壁に激突しても平気な顔で起き上がった半猪が降参を宣言する。
「今度は未来の婿殿の出番ですな」
とからかわれて、令嬢は頬を真っ赤に染めた。
「っつーわけで、よろしくなボウズ」
「よろしくお願いします、ビスマルク殿」
「礼儀正しいな。おじさん感心しちゃうぜ」
お調子者の声は鋼鉄の兜のマスクから聞こえる。
いきなり、ビスマルクが動いた。
『猛牛』の異名にふさわしい迫力ある突撃。唸りを上げる大剣を、少年は堂々と受け止めた。
ジェシーが吠える。振り下ろす腕の勢いで闘技場の床を破壊しながら、何度も剣を合わせる。
「痛いのとか、イヤなんじゃねぇの? お前くらいの歳ならさぁ」
「そうでもないっすね、どうしても欲しいものとかあるし」
「ふぅん。ってか、鍔迫り合いしながら平然と答えてんなよ」
「そう思うなら話しかけないでください……よっ!」
ビスマルクは少年が強く払った剣に押されて後退し、闘技場から落ちる寸前で止まった。
「大事なお嬢さんのためだぁ……簡単に負けてやるかよ!」
跳び上がって元の位置に戻ると、再び剣の打ち合いに持ち込んだ。
彼本来のトリッキーな動きは、そこにはない。
的確な攻撃で容赦なくジェシーを追い込んでいく。「あー、お嬢さんに嫌われちゃうかな」
「俺が勝てば問題ないんでしょ」
「生意気っ!」
怒りをわざと声に出し、剣を大振りで振る。
あからさまな隙をついて剣を跳ね飛ばす。
「降参……してやんねぇーっ!」
また跳び上がって剣を掴み、着地。へっへっへ、と笑いながら剣を構え直した。
「うーん、とんでもねぇおじさんだなぁ」
どこまで真剣なのかを掴みかねたまま、ジェシーは根気強く戦ってビスマルクを撃破した。
2019/8/9更新。




