激闘編(13)/戦士の宴(13)
観客たちに急かされる形で、その日の午後から二回戦の試合が行われることになった。
『貴鷹騎士団』、『北海水産』、『白牙傭兵隊』、『異形の騎士団』、『南風団』、『渓谷の狩人』。
遅れて登場した『夜の眷属達』に加え、急遽トーナメントに参戦することになった『金鞘』の面々も、
改めて闘技場に整列した。
アルフレッド王がくじを引いて決まったとおり、『南風団』と『渓谷の狩人』の試合から始まった。
『南風団』の副将ビスマルクが単独で『狩人』を撃破寸前まで追い込んだが、
『狩人』の長クウィラスの本気の速度を『南風団』の誰も捕らえきれず、
温存していたケルガーを引っ張り出されることになった。
「やれやれ。いちばん厄介な相手が残ったか」
「それはこちらの台詞だ、隼の戦士。だが……俺にも負けられん理由がある。全力で来るがいい!」
ケルガーが拳を打ち鳴らすたびに、地鳴りのような音が響く。
彼の気力のなせる業であったろう。彼が背負う観客の期待であったろう。
にやりと笑んだクウィラスも剣を捨て、半猪に殴り合いのケンカを挑んだ。
蜂の巣のようにされても倒れず、最後の一撃で逆転勝利をつかんだのは、半猪の方だった。
――試合後。
「ケルガー! 平気!?」
「おお……ニーナお嬢様か。まったく平気、というわけには行かんがな」
『南風団』の控室に、『翠の』ニーナが飛び込んだ。
すさまじい試合の様子に居ても立ってもいられず、部屋を訪ねたのだった。
「どうして武器を使わないの? いつもの槍があれば、もっと優位に戦えるのに」
「あれはビスマルクに譲ってしまった。酒飲み勝負に負けたのさ」
人間族のお調子者が、自慢げにその槍を掲げてみせている。
「お嬢さん、そいつぁね……あんた達と戦うまで全力出さねぇ気ですぜ?」
オレらまで付き合わされて大変なんスよ、と頭を掻く。
彼はケルガーに憧れて、後から格闘技リーグに参加した、ファーウィンド家のもと用心棒だ。
全身鎧を着込んだままでも素早く立ち回れることから、
『猛牛』のあだ名で呼ばれている。
「ビスマルクったら……でも、本当にそうなのね?」
「オレぁウソつきませんよ、ハッタリは大好きですが」
ニーナがケルガーの方に向き直る。
半猪は照れ臭そうに、わずかに顔をそらした。
令嬢が子供向けの武術教室に通い始めた頃から、鍛錬の相手を務めてきた。
ニーナの成長を最もよく知り、武骨な微笑みと共に見守って来た最古参だ。
「お嬢様」
今度は顔を背けず、ゆっくりと言い聞かせるような口調で言う。
「あなたが、将来のよき伴侶となりうる方に巡り会われたこと。我が事の如く嬉しく思います」
「……うん」
「だが、俺も武人の端くれ。彼の実力をこの目で見ねば、大切なお嬢様を送り出す決意などつきません」
「わかっています。私も、貴方たちと全力で戦う」
「それを聞いて安心いたしました。……会場がおもしろいことになっているようです、観戦しておいでなさい」
わかった、と元気に言って、ニーナは控え室を飛び出して行く。
「ハンカチあるけど」
「いらん。それより、今夜また飲み勝負と行こう、ビスマルク。槍を取り戻しておかなければな」
お調子者がゲラゲラと笑った。
2019/8/8更新。




