激闘編(10)/戦士の宴(10)
二回戦へ進出する8チームのうち5チームが決定したところで、ちょっとしたハプニングが起きた。
地元枠の最後を締めていた『アウトロウズ』が闘技場に押しかけ、
今からこの場を占拠すると言い出したのだ。
会場の各所に大量の爆薬を仕掛けたと偉そうに言う。
大爆発を起こしたくなければ賞金をすべてよこせというのである。
大胆きわまる宣言の割には声が震えまくっているので、
すさまじい試合の数々に恐怖してのことだろう。
「会場の皆さま、どうぞ冷静な対処を――ご着席のまま、お待ちいただければ幸いでございます」
それまでと違う冷徹な口調で、実況席のロデルが言い放つ。
どよめいていた会場は冷静さを取り戻したように見える。
「闘技場は魔法金属で作られておる。魔力や人の意志でいかようにも加工できる、繊細な物質だ。
そこにこのような悪意をまき散らせばどうなるか――」
何ほざいてやがる、とがなり立てるゴロツキたちの影が不自然なほど伸びている。
ぐにゃぐにゃと形を変え、今にも踊り出しそうだ。
すぐに、ゴロツキを見限ったように離れた。魔法金属の力を借りて実体を得た。
魔物に変わったのだと、誰にでもわかった。
ゴロツキはすぐにビビって逃げだした。
「逃げ足だけは早いな……。選手諸君、この場はあの魔物どもを排除せねばならない。
お疲れのこととは思うが、是非ご協力願いたい」
うおぉぉー!
という喚声と共に、15人ほどが闘技場に上がった。
余力を残して試合を終えることになってしまった『昔取った剣』や『ドラゴンスケイルズ』が躍動し、
獣や人などの形をとった魔物を相手に奮戦する。
「爆薬の方はいかがでありましょうか?」
ロデルが実況席から、会場を素早く走査する『金鞘』に声を掛けた。
両手いっぱいに爆薬を抱えたブルーベルが、問題ありませんわ~、と応じる。
闘技場の上、天井付近にいる。
「選手の皆様、すぐにご避難を!」
何をするつもりかなど、誰にでも分かることだった。
魔王が瞬時に会場を強力な結界で覆う。
選手たちが一目散に退避した闘技場には、力を削がれた魔物しかいない。
「観客の皆様、花火大会ですわよー! 御唱和ください、」
“せーのーでっ!”
煽られた観客の歓声に応じるように、ブルーベルが爆薬を投下する。
ド派手な爆発音が轟いた。
――。
翌日を臨時の休養日に充てた王の静かな怒りは、
ろくでもない企てをしたゴロツキ達に向けられた。
朝から晩まで懇々と説教し、猛省を促した。
魔法医師に頼んで影を復元させると、参加賞のはく奪と金山への就労を命じた。
不満そうにする連中に、「何に不満があった?」
と優しく問いかける。
スラム街でゆすりたかりをして生きてきたとか、真面目に働くなど考えられない、
というようなことを口々に言う。
「俺は一人一人をぶん殴ろうかと思っている。だがそれでは面白くないな」
アルフレッドは父に宛てた簡潔な書面をさらりと書き上げて魔法で送る。
「父上に鍛えてもらって来い。一日の半分以上が鍛錬だからな、まあがんばれ」
問答無用で転移魔法を発動させ、お片づけを終えた。
2019/8/6更新。
2019/8/7更新。




