激闘編(6)/戦士の宴(6)
2日目である。
今日はグエン=ファーウィンドが特選した『南風団』の出番だ。
彼らはそれぞれグエンの作った格闘技リーグで活躍し、今回の武術会に合わせて改めて選抜されたチームだ。
もちろん大商人のお眼鏡にかなったハンサム集団で、
女性客からの声援が会場の半分近くを占めてもいた。
そんな『南風団』の前に立ちはだかるのは、ただ一つ東大陸からの参加チーム、『ザ・サムライ』である。
クラウス卿のコネと熱望により参戦が決まった、若き天才たちが揃う優勝候補の一つだ。
さしもの『南風団』も敗北するだろうとの下馬評が沸き上がり、
『ザ・サムライ』への賭け金の額がとんでもないことになっていた。
普段は冷静沈着な『南風団』の団長ケルガーも、この有様には興奮を隠せないようだ。
彼は巨体の半猪で、格闘技リーグの現役チャンピオンである。
敵チームの長と話し合い、勝ち抜き制での試合を行うことになった。
「さあ、対戦形式ひとつをとりましても個性に富んだこの大会!
台風の目となるのは一体どのチームでありましょうか!?」
ロデルの煽るような実況によって、会場は一瞬のうちに熱気に包まれる。
「俺だけで充分だ! 異国の剣士たちよ、遠慮なくかかって来るがいい!」
音響効果を高める魔法が張り巡らされた会場に、ケルガーの大音声が響く。
「それとも怖気づいて、剣の技を披露できずに終わるか!?」
相手と客席の盛り上げ方を知悉する、天然の格闘家であった。
筋骨隆々の巨体に熱き血潮を宿す半猪の挑戦的な態度に応えないほど、
東方の少年剣士らも無機質ではない。
「そこまで言われては……我ら若輩といえども、サムライの名がすたる! オウカ、参る!」
オウカと名乗った少女は小柄な体格で果敢に切りかかり、巨漢を巧みな動きで翻弄する。
もらった、と叫んで跳躍し、腕を狙った瞬間!
巨体に反して猛然と動いたケルガーが、振り下ろされる刀をがっちりと捕えた。
「ケルガー選手、オウカ選手の刀を掴んで離しません! なんという怪力でありましょうか!」
よせ、と警告する相手を無視した半猪は、刀身を握った大きな手にさらなる力を込める。
掌から血を流しながらも刀を粉砕し、平然と少女を見下ろす。
「続けるなら相手をするが?」
「いや。次が待っているのでな。まったく……、無茶な奴だ」
悔しそうに引き下がるのを豪快な笑いで見送る。
少年少女を相手に乱暴な試合を楽しむような残虐さは、この男の持ち合わせにない。
情熱的でありつつも紳士的な振る舞いこそが、ケルガーの人気の秘密だ。
次のツバメという少年は二刀流の腕前を発揮したが、やはり半猪の大きな両手に阻まれて降参した。
残る3人の少年少女も、いずれも勝利を得ることは叶わなかった。
「圧倒的な強さを見せた優しき猛者、ケルガー選手! 『南風団』はどこまで勝ち進むのでしょうか!?」
万雷の拍手と実況席からの賛辞を、生傷だらけの半猪は照れ臭そうに無言で受けた。
2019/8/2更新。




