激闘編(4)/戦士の宴(4)
さて、第2試合がもうすぐ始まるという時刻なのだが……。
このまま大会のの概要だけ淡々と語ってもつまらないので、実況席に視点を移して行こう。
「――メタ手法の乱用はやめた方がいいと思うぞ……」
「えー、解説者はよくわからないことを言っていますが、闘技場のほうは準備が整ったようです」
魔王スゴロクの側近、ロデル=カッツェは、持ち前の順応力ですでに実況役を楽しんでいる。
普段からものすごいお喋りとして有名らしいが、それはさておき。
「第2試合! 種族も性別もバラバラの冒険者が集まった『自己中心アドベンチャーズ』に対しますは、
黄金要塞の隠し反則級ことウルヴレヒト公子の弟子と部下が集う、『あばれ海賊隊』であります!」
「西大陸の国々には優秀な人材が豊富にいる。
地元枠の暴れん坊たちとどんな試合を繰り広げるか、是非ご期待いただきたい」
『あばれ海賊隊』を率いて観客に愛想よく手を振っているのは、もと暗殺組織のリコシェである。
黒ずくめの戦闘服を空の青を染めた衣装に着替えるほどには、明るさを取り戻しているようだ。
「ちょい待った! ウチ、いい考えがありますんや!」
『自己中心アドベンチャーズ』のリーダー格なのだろう、
美しい銀の髪を持つ半猫人の娘が、跳びはねながら手を挙げる。
一人ずつ戦うのは地味で真面目で面倒だという提案に双方が合意し、5対5の乱戦となった。
10人もの戦士らが縦横無尽に戦う姿は、コミカルでありつつも美しく、会場を魅了する。
「『アドベンチャーズ』は解説者から見ても実力があるのだが……いろいろと大味な連中のようだ」
「実に派手で面白い、なんとも実況泣かせの試合になってしまいました。
皆さま、会場の映像をご注目いただければ幸いでございますぅ……」
「激戦だが実力伯仲だ。忍者の少年と、銀髪の半猫人が残るだろうな」
ド派手な乱戦が観客の心を鷲掴みに掴み、武術大会は初日から大きく盛り上がりを見せる。
解説の魔王がボヤいたとおり、リコシェと銀髪の半猫人が最後まで残って戦い、引き分けとなった。
「ああっと! ここで2チーム同時に脱落という波乱であります。選手たちの救護活動を行いますので、
観客の皆様にもご休憩をおすすめいたします! トーナメントは一体どうなってしまうのかっ!?」
とはいえ、あわせて10人が10人ともボロボロというわけではない。
魔王の眼から見ると、明らかに手加減して戦っている魔族が『アドベンチャーズ』にいたのだが……。
歓声と拍手と指笛が鳴りやまない会場に水を差すこともないので黙っていることにした。
本当のことをいつも正しく言えばいいというものではない。
格闘技は娯楽なのだ。
貴賓席からためらうことなく駈け下りて、救護を手伝う友の背中を見ながら、
魔王スゴロクも救護に手を貸したのだった。
2019/8/1更新。




