激闘編(2)/戦士の宴(2)
それからの忙しない2ヶ月は、まさしくあっという間に過ぎ去っていった。
夏の暑さを十二分に残したまま、季節は秋に移った。
残暑対策を命じてこの日の執務を終えたアルフレッドは、
ニーナとクリストフに誘われて城のテラスへ出た。
「陛下、お疲れではありませんか」
「平気だ。お前たちは?」
「問題ありません」
「大丈夫……です」
“金鞘”としての務めの間は、騎士服も真面目な態度も崩さない二人である。
その徹底ぶりが王にとっては好ましく、嬉しかった。
「最近、あまり話せてなかったからな……」アルフレッドが仕事服の首許を緩める。
「誘ってもらえてうれしいよ」
気取ったしぐさが合図だった。二人の側近は同様に顔を少し赤らめ、頷いてみせる。
都市全体を多忙な雰囲気で包んでしまった張本人とはいえ、志半ばで動けなくなる辛さも知った王だ。
適度に公休を設け、国民の士気を下げないよう努力もしてきた。
その公休の間の思い出について水を向けると、
ウルヴレヒト公子の船で短い旅行を楽しんだことや、周囲の街の農業を手伝ったことなど、
話を器用に分担しつつもおもしろそうに語ってくれた。
二人とも饒舌とまでは言えない女性だが、共に過ごしていてこれほど気楽な人間は多くない。
静かに笑んで聞き役に回っていた王が、最後に口を開いた。
「大会、もうすぐだな。うまく行くかな?」
「緊張なさっているのですか」
「ああ。大規模なイベントを打つのは初めてだし」
「婚約記念の、大会……ってことに、してるし?」
「うん。ジェシー達にお膳立てするには、一番楽だったんだけど……。
どう話を持って行けるかは、当日になってみないとわからんからな」
表面上だけとはいえ、自分の結婚話が絡んでいるとなると、
自然と思考もそちらを向いてしまうわけで――。
はっきり選ばない、決めないという現状は楽だ。
この二人に立場や待遇の違いを与えるのも……やっぱりおもしろくないと思う。
「私は別に……たぶんニーナも、『黄金王の花嫁』なんて立場が欲しいわけではないです」
素直にぶっちゃけてみると、クリストフが平然と答えた。
「お金があるから好きになったんじゃない。王さまだから好きになったんじゃない。
アルフレッドだから、好きになった。好きで好きでたまらなくなったの」
魔界から戻ったクリストフは、愛情について以前よりも積極的だ。
『自分にとって大切な者が大切にする、自分以外の者も大切』という、
魔族の恋愛観を学んできたものだろうか。
「現状がどうしてもいけないって言うんだったら、いっそ――」
クリストフに薄暗い笑みで誘惑(絶対わざとだ!)されるまでもなく。
ひとりでこの件について考えるとつい、
この二人が側にいてくれたら金山も、王の地位もいらないという結論に達しがちである。
「待って、姉上……。陛下も。……みんなを、困らせるの、だめよ」
いつもそれを留めてくれるのが『金の』ニーナだったりする。
叔父ほどでなくても、これはこれで、良い関係を築けているのではないかと思う。
「う、うん、まぁ……あれだ。とにかくだ、武術大会をうまく運んでみせるよ、うん」
結局、真っ赤になってこの場をごまかすよりほかに、王の取りうる方法はないのだった。
2019/7/31更新。




