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激闘編(1)/戦士の宴(1)

王立学校時代の長期休みの課題はさっさと済ませるタイプだった。

王としてほぼ最初に行う大規模な公共事業の概略が決まった時点で、既に動き始めていた。

周囲の町や村の長、森や山に暮らす魔族を仕切る者らなど、

話さなければならない相手は今までになく多かった。

ブルーベルに連絡を頼んでは日程を調整して直接出向き、

武術大会に関する約束事を首尾よくまとめて戻る。そんな日々の繰り返しであった。

やりたいことを出来ている幸福感からか、疲労を感じることはほとんどなかった。

無理をしてまた倒れても、ニーナやクリストフに心配をかけてしまうだけなので、

周囲の人材に頼ることも忘れなかった。

スゴロクの旅はすこぶる順調なようで、西大陸の帝国や騎士団領からも、

大会に出場する選手が次々と到着している。

ホテル・コテージ組合は多忙さで煮えくり返り、他の街に宿泊客を振り分けるよう要請してきたほどだ。

都市国家と言っても、広い領土を持っているというわけではない。

国民と王との距離もそう遠くない国である。

「無茶をしてくれて」というような悪評は、それでも民衆からは出てきていない。

“王様からのお願い”ではなく、“王からの挑戦状”と題した触れ書きを出したせいだろう。

国王婚約記念の武術大会に向けて、皆々でコルトシュタイン全体を盛り上げて行こうではないか、というような主旨である。

貴族や商人たちの中には『ワンダーダイス社』が責任編集を行った詳細な地図を大量に仕入れ、

周囲から遠方までの街や村との販売ルートを確保する者もあらわれた。

これには国の更なる発展のためにと国政改革を主張してきたドナーグ議長も上機嫌で、

何の脈絡もなくカツラを取っ払ってハゲ頭を披露し、議場を笑いに包んでみせたほどである。

アルフレッドも意味をよく理解しないまま笑ってしまった方だが、それ以来、

良好な信頼関係を築きつつあるので、ドナーグにとってもよい機会だったのかも知れない。

「まるで宴の前のにぎやかさでございますな、陛下」

真面目な顔で面会を求めて来たグエン=ファーウィンドが、城の応接室の窓から街を眺めながら言った。

「日を追うごとに熱量を増している気がするよ」

「私が行った統制では、決してこのように市場が活発になることはなかったでしょう。このグエン、敬服いたします」

「らしくないな。貴殿と俺は今、金山を巡るライバルだぞ?」

「それは承知しております。陛下に救っていただいた民の一人として、お伝えしたかったのです」

「ニーナから話を聞いたのか?」

「は。自分は王のところには嫁がない、望み、望まれる人の傍にありたいと。

 娘の気も考えず、また愚かな父になってしまいました」

「悔いるのも結構だが、器の大きい所を見せてやってはどうだ」

「そのようにしたつもりです」

私兵団から特選したチームと武術会で対戦し、勝てば思う通りにしてよいと言ったそうだ。

「思っていたより良い男ぶりだな、グエン殿」

「もったいなきお言葉。もう一つ抱えていた欲が、今報われたように思います」

「ああ……貴殿は俺自身も欲しかったわけか」

「お恥ずかしい」

男色じゃなくて悪かったな、と口を尖らせてみせる。

大商人は、豪快に爆笑した。

2019/7/31更新。

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