後編(14)/恋愛狂騒(10)
数えて三日後には、スゴロクのカンパニー『ワンダーダイス』から、
大規模な訓練施設を建設する許可を求める親書が届いた。
議会と協議したうえで、正式な同盟を結ぶための書面にもサインした。
コルトシュタインの建設業ギルドも驚く速度で作り上げられた、ドーム型の訓練施設を見学に行くと、
警備隊や旧自衛軍の面々を始め、宮廷魔導師団や王立学校からも志の高い者が集められていた。
その中でも王の注目を引いたのは……。
「レオンじゃねぇか!」
「やあ、アル。僕も武術大会に出ようと思ってさ」
小さな木の剣をたずさえて突撃して来る数名のわんぱく達を余裕でいなしつつ、青年が王に応える。
どうやら、遊びに来た子どもたちの相手を引き受けているようだ。
ちょっと休もうと声を掛けてから、彼は王の側へやってきた。
「どういう風の吹き回しだ?」
「人聞き悪いなぁ。僕にも目標が出来たんだよ。そのため」
「恋人でもできたか」
アルフレッドは他人の事情についてはやたらと勘が働くことがある。
「……そんなところかな。腕前にはとにかく厳しい人だから、頑張ってみようかなって」
「何だよー、はっきり言えって」
「分かってて言ってるよね。ったく、君の腹心だってのに」
「あいつを射止めるなんて大したもんさ。だから祝ってやるってのに」
「うるせーっての。……ほらほら、僕はいいから他の人も励ましてあげてよ、王様」
さっさと子ども達との遊びに戻ってしまったレオンを追わず(顔が真っ赤だった)、
アルフレッドは訓練施設内をほっつき歩いた。
ひときわ派手な様子の区画にたどり着く。
仕切り扉の中に入った瞬間の違和感が示す通り、そこだけが異空間になっているようだった。
金髪の美女が気づいて近づいてくる。
周囲ではド派手な爆発なんかが起きたりしているのだが、まるで気にしていないらしい。
「貴方がアルフレッド陛下ですわね。お話は兄から常々うかがっております」
「ええと、スゴロクさんの妹さんで?」
「シェリーと申します。わが国との同盟を結んでいただき、感謝しておりますわ」
前方では、ジェシー少年が必死の形相で狼人族の大男と殴り合っている。
吹き飛ばされて来たのの背中を片手で受け止め、
「はい、もう一本ねジェシー君」
シェリー女史はにんまりと笑んだまま、少年の身体を力強く押し返した。
あぎゃー! と叫びながら再び狼人族の目前に立たされたジェシー少年は、
それでもファイティング・ポーズをとった。
「久しぶりにこちらに来ましたが……宝のような人材が溢れていますわね」
「ええ。俺は人間界、わりと好きですよ」
上機嫌のシェリー女史に頷き返す。
「色々と大変な事もおありでしょうが、頑張ってくださいね。特に……恋は焦らず、ですよ?」
「そんなに分かりやすいかなぁ、俺」
とりあえず剣の稽古でもなさったら? と言うシェリーの腰元には、美しい意匠の鞘が光っている。
王は魔界流の鍛錬を体験して、内心の“いろいろ”を棚上げすることにした。
2019/7/30更新。




