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後編(13)/恋愛狂騒(9)

アルフレッドは大損を何食わぬ顔で引き受けてくれた魔王への礼もそこそこに、

次なる目的地へ走る。

大会の開催を3ヶ月後と決めた。グエン氏の了承も取り付けた。

3ヶ月ある。

3ヶ月しかない。

急がなければならない。『王の力』を込めた脚を飛ばして、あっという間に街の西端へたどり着く。

なじみの看板――『銀の歯』だ。

暗殺騒動の時には活躍できなかったものの、本来は腕の立つ戦士がそろった傭兵ギルドである。

ギルドの会頭と一族の長を兼ねる中年の半狼族ハーフウォルフに話をぶっちゃける。

「訊かれるまでもないことだ、アルフレッド。我ら『白牙びゃくが』、出番が足りんと思っていたところよ!」

狼人族の血が濃い男性は、おしなべて狼そのもののような勇壮な顔をしている。

そのあおい目を輝かせて、三代目のホワイト・ファングが出場を確約してくれた。

王は慌てて次の人物の所に行こうとしたが、

「俺の酒が飲めねぇ……んだったなアル坊は」

まあとにかくゆっくりして行けや、と引き留められた。

勧められたノンアルコールを飲むうちに、ギルドの事務を担当する数名が、忙しなく動き始めた。

彼にも何か考えがあるのだろう。

少し気が利きすぎ、手回しがよすぎるのが、当代ホワイト・ファングの長所であり短所である。

ウェイトレス(美人だ)に頼んで貸切を示す札を店先に下げ、分厚い帳面を広げ始めた。

「一体、何をしてるんだい?」

「参加者は多い方がいいだろ。俺の地元に声かけてみようかとな」

「おっさんの地元ってどこよ」

「その呼び方はねぇだろ……。俺は北大陸から来て、ここの婿養子になったんだよ」

アルフレッドも長い付き合いではあるが、あまり『白牙』一族の素性について気にしたことがなかった。

特に当代のホワイト・ファングは、人がくて酒好きなおっさん、という感覚だったのである。

「知らなかった」

「それはいいよ。んでな、親友ダチの息子が15歳くらいだったはずなんだ。

 ええと……ああ、こいつだ。引っ越したって連絡はねぇから……」

豪快な見た目に似合わす、事務仕事も嫌いではないらしい。

さらりと書いた手紙を魔法でどこかへ送り付け、鼻歌を歌いながら待つ。

ぱっと届いた返事に目を通し、嬉しそうに笑む。

「喜べ、アル」

「何て書いてあるんだ」

「奴の知り合いにも話を通してくれるそうだ。あとせがれのトーマがこっちに来てるってよ」

北大陸には半獣人族の国が数ヶ国ある。

アルフレッドは幼い頃にそのうち一国の国王と遊んだことがある程度だが、

半獣人の戦士はみな屈強で眉目秀麗びもくしゅうれいであると聞く。

出場してくれるとなれば、大会の花形は間違いなしだ。

「楽しみになってきたな。俺も血が騒ぐぜ」

「うん。あんがとね、おっさん」

「珍しい酒でもおごってくれりゃ、言う事ねえんだけどなぁ」

調子がいいんだから、と笑いつつ、その口約束をして『銀の歯』を出た。

2019/7/29更新。

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