後編(8)/恋愛狂騒(4)
桁違いの美少年と化した魔王に見つめられ、思わず息を吞む。
待て待て落ち着け――しっかりしろ、俺。
「……思わぬ方向に進みそうだな。あまり追い詰めずにおいてやるか」
「ぜひそうしてくれ。気が利きすぎる気もするけど」
「大体のことは見れば分かるからな。善し悪しといったところか」
魔王はようやくアルフレッドから視線を外し、ひとつ息をついた。「で?」
「今度は何にお悩みなのかな」
「世話かけっぱなしだな……こんなんでいいのかな、俺」
魔王は口の端を歪めて、
「もちろん、ご依頼として冒険者ギルドを通していただいても結構だが。
王の依頼となれば高額ギャラ案件間違いなし、余に損はない」
人間界を旅するならば、冒険者ギルドに登録するのが最も便利のいい方法だ。
冒険者の試験にパスし、資格を得ることが出来れば、
各地に点在するギルドで、事務手続きの代行、食事や宿泊所の提供といった補助を受けることが出来るようになる。資格証を持っている限り、探索の自由も保証される。
最も大きいのは、王族や貴族など地位を持った人々からの信用を得やすいという事だろう。
腕前は経験を積めば当然上がって行くものだが、国の信用を独力で得るのは簡単ではない。
魔王が冗談半分で言ったとおり、地位ある者からの依頼は複雑で多岐にわたる分、ギャラも高額になるのだ。
「その顔やめろよなー、どんだけぼったくる気なんだよ」
「最初から頼ってくれればいいのだ。忌憚なく手を貸すと言っただろう。約束は守る」
「ありがとな。……旅のついでにさ、腕が立ちそうな連中に声を掛けて欲しいんだ。
あと、特訓とかしたら強くなりそうな子ども達とかにも」
「その特訓とやらはどうする」
「俺の親戚に頼もうかなと」
魔王は頷いてみせたが、少し考えてから、「どうせならもっと壮大にやらんか」とニヤリ笑って言う。
「どういうこった」
「魔界十傑同盟にそういうのが大好きな連中がたくさんいる。都合をつけて進ぜよう」
「マジで言ってんの?」
「無論だ。何をするつもりなのかを話してくれればもっといいが」
「すまん、忘れてた」
アルフレッドはメモ書きを見せつつ、胸中の計画を披露してみせた。
究極のプライベートに関する大問題も、正直に。
魔王はすぐに納得して、全力で助力すると確約した。
「スゴロクさんが動いてくれるなら安心だ。俺は俺のするべきことをする」
「よし。気鬱なようだから話を聞いてやって欲しいと頼まれた時は、正直どうしたものかと思ったが……。
気力が戻ったようで何よりである」
「また心配かけちまった」
「貴公は良き人間となり、よき君主となる。自信など持てぬかもしれぬが、余には分かるのだ。
しっかりと伸びている芽を潰すわけには行かぬ」
「……なんか、『勇者』みたいだな」
「そうか?」
魔王が薄く笑みを刷く。
どうやら悪い気はしていないようだった。
2019/7/25更新。




