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後編(6)/恋愛狂騒(2)

ニーナ=ファーウィンドに打ち明けられるまでもなく。

彼女に想い人がいることは、アルフレッドも知っている。

クラウス卿が主催していた子供向けの武術教室で知り合った、幼馴染のジェシー少年だ。

ふたつ年上の彼を、兄のように思って、慕っていると。

ニーナは緑の瞳をわずかに潤ませて、決心したように告げた。

卿が隠居した今でも、ふたりはウォルト=ケネスの武術教室に、一緒に通っている。

話を聞いてから見に行ったが、アルフレッドでなければ見抜けないほど、互いに対する好意を隠したまま過ごしていた。

素直な気持ちを隠すすべを、子どもの身に付けさせてどうするのか。

一瞬の義憤が、王の気鬱を払う一助となったのは間違いない。

どうにか行動を我慢し、重々考えてきた。

もう限界だ。

すっかり顔を見せなくなってしまったから、娘の父の本意など知らない。

この見合い話こそ、グエン氏からの要救助のサインなのだ。そう思う事にした。

惚れ、惚れられての結婚なら大歓迎だが、

女性の気持ちを踏みにじってまで手に入れようと思うほど強欲ではないつもりだ。

王は執務室に篭り、計画を練った。

そして今こそ、その発動の時である。

「ブルーベル、居る?」

「はいはい、姉上はここですよ」

しゅぱっと軽い音をさせて、妖魔の淑女が目前に現れた。

基本、どこからでも現れる女性である。

行きたい場所に簡単に、ときには瞬時に行ける特殊な移動手段の数々こそが、妖魔族の特権とも言える特徴なのだ。

「ああ、姉上……ちょっと魔界へ伝言をしてきて欲しいんだけど。なるべく早い方がいいかな」

「わかりました。ちょちょいと遊びに行って参りますね」

何度目かのやり取りのあと、王の親書を携えたブルーベルが姿を消す。

朝に頼んで、戻って来たのが昼過ぎ。伝令としての腕前はアルフィミィといい勝負だ。

「スゴロクさんには会えた?」

「ええ。お元気そうでしたよ。……驚かないでくださいまし」

ブルーベルが冷や汗を搔きながら言い終わるのとほぼ同時に、執務室のドアが大きく開かれた。

「陛下、陛下! たたたたた大変でございますぅ!」

「どうした、アルフィミィ」

「ま、魔王殿が……スゴロク殿が、城門前にお見えです!」

お通ししてくれ、と、アルフレッドはようよう言った。


「やあ、アルフレッド陛下。ご壮健であられただろうか」

「あー、まあ色々あってね。ちょっとピンチなんだ」

「毎回そうではないか。おぬし、余を助け船の専門家だとでも思っておらんか?」

「え、違うの!?」

「このっ……。まあ、冗談を言う余裕があるなら大丈夫だな。連絡くらいよこせよ、ったく」

以前に会った時より表情が豊かになっている。新品の銀縁眼鏡がよく似合っていた。

少年の姿で、黒いローブをまとっている。

「スゴロクさんこそ。……で、どうしたの、その格好」

「ああ。ちと世界の果てに興味が沸いたのだ。

 詳細な地図を作りながら、人間界を旅してみる事にした。魔界は広大で厳しいからな」

「壮大な夢だな」

「ばかだと思うか」

「いや……そうでもねぇよ」

志のスケールが違う。

器の大きな友を持ったものだと思い至って、うかつにも嬉しくなってしまうアルフレッドである。

2019/7/24更新。

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