日常編(11)/暗闇を払って(8)
3日間の休みをゆっくりと楽しんだ王は、
公休明けの朝、一日の初めに行う会議で暗殺組織の処分を発表した。
組織の主立った人物と直に面談した結果をまとめたレポートを改めて議員に配布し、
熟読してもらったところ、王の決定に異を唱えないことを、
新たな議長に選ばれたドナーグ氏が確約した。
王は、ひとつずつ項目を上げて、丁寧に説明する。
いわく――。
暗殺組織のメンバー全員に王の権限と尾責任で特赦を与え、
無期限の社会貢献活動を義務付ける事。
本人たちに希望を聞いたとおりに、信用できる人物のもとへ彼らを送ること。
そこでの処遇はバリス公以下、王の選んだ人間に任せるが、
決して手荒に扱ったり虐待を行わないよう誓約させること。
組織の精鋭5人のうち城に残った3人は、
直属護衛隊〝金鞘”としてアルフレッドの指揮下に置くこと。
新たな冒険者ギルドを創設し、その立ち上げの人員を広く民間からも募ること。
「組織の人員の力を活かすおつもりですな? あえて罪に問うまいとされておる」
欲しかった地位を思いがけず円満に手に入れて、悪だくみをする必要のなくなったドナーグが、
生来の舌の鋭さで王の意志を読み取って見せた。
「問題があるか、新議会長」
「ございません。彼らが皆、信のおける者であることは承知いたしました。
真に裁かれるべき者どももいる。議会にも責任がある。
ギルドの立ち上げには、我らも協力を惜しみません」
前議長から懇切に、議会運営を穏やかに行うよう任されたことも、上機嫌の原因だろうか。
ずる賢い彼なりに、以前の行いを恥じているのかも知れなかった。
「警備隊について王から提案がある。諸君に諮ってもらいたく思う」
「何なりと」
「復帰させろとまでは言わぬ。今の警備隊に、もと自衛軍の皆と交流を持てるようにできないか。
名誉ある職にあった者が、一斉に隠居して悠々生活では、国家として格好がつかぬのではないかな」
ドナーグは何かを考え込んで沈黙した。
ざわめく議場を、余裕を持って睥睨する。
若い王から見れば、年かさの議員ばかりだ。
と言って遠慮していては、クリストフとの大事な約束を果たせない。
言いたいことは言う、やりたいことはやる。
そういう君主になりたいと、アルフレッドは思う。
彼女が魔界から戻る一年後には、ここをより良い国家にしてみせる。
そのためなら何でもするという覚悟が、王の肚をしっかりと定めさせていた。
「おそれながら、アルフレッド王。議長でなく我が派閥の代表として、申し上げます」
「続けてくれ」
「これまでの無礼をお許しいただきたい。王は我らの命を守ってくださった。
求めに応じ、かの暗殺組織が罪なき者であることを証明してくださった」
話を大きくし過ぎだと思わないではないが、重々しく頷くだけにしておく。
「翻って我らは如何だったか。自分たちの思う改革を推し進めんとするばかりに、
過激な主張と向こう見ずな提案を繰り返すのみだった……!」
自衛軍の解体・再編を始め、議会の権限を強くするべきだとか、
商工会や水道事業を民営化するべきだとか。
彼らの主張は理にかなってはいたが、急ぎ過ぎている感があったのは確かである。
王が民の命を守ることなど当然だが、この男には何か感じる所があったという事だろう。
何も言わず木石となることも、人の心を引き出すのには必要なのだ。
2019/7/18更新。
2019/8/31更新。




