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日常編(7)/暗闇を払って(4)

次に話を聞くべく、王がクリストフの部屋に向かって歩いていると、中庭でふと呼び止められた。

スラム街の代表カーン氏に仕えるようになった、半猫のシエルだった。

「シエル。スラム街の復興はどうだ」

「うん。その報告に来たんだ。ずいぶん進んでるよ」

どうしても自分たちで住処を立て直したいというカーン氏の意向と誇りをみ、

税の減免措置だけを行った。

半猫から詳しく聞けば、暗殺組織との決戦の際に避難した街で、

住民総出の出稼ぎを行っているという。

いわく、農業、林業、漁業。

体ひとつで行える作業の駄賃がわりに、余った資材や資源を集めているのだとか。

「それで家を建てようってんだな。面白そうだなぁ」

「うん。今度はもっとお洒落な家にするんだってさ。

 ミストなんか張り切っちゃって、召喚魔法で手伝いしてるくらい」

「へぇー、大したもんだな」

人間には扱いが難しいとされる召喚魔法を軽々と扱って見せるあたり、

ミストという娘はかなりの才覚を秘めているのだろう。

「あいつも欲しかった、とか言わないでよ」

「信用ねぇなぁ……そんなに凶悪な王に見える?」

「だって……」

「拗ねるなよ。お前が俺よりすげぇ奴になって、守ってやりゃあイイじゃねぇの」

ぼむ、と音がしそうなほど真っ赤になったシエルは、それでも素直に頷いてみせる。

「が、がんばり……ます」

「素直が一番だ。本音を隠してたって、いいことなんかない」

アルフレッドは、今般の暗殺騒動を通じて得た実感を込めて言った。

本音を隠した挙句に無茶をしたり、大事な者を失ったりしてしまうのだ、人間というやつは。

「うん。……あ、陛下。カーン様が議会の様子も聞いて来い、って」

「上手くやれてる方だと思うぞ。もうスチュアート卿みたいなのを出すわけにゃいかんし」

カーン翁はアルフレッドの曽祖父の代に議会に仕えていたが、ドロドロの権力闘争を見せつけられて、

疲れ果てて隠居してしまったのだとか。

ちなみにこのカーン翁、今年で150歳――白エルフの末席である。

アルフィミィと同じく、この国をずっと見守ってくれる、優しき魔族だ。

「用件は終わりかな」

「うん。でも、ついでだから話とかしようよ」黒髪の半猫はぐいっと背伸びして、「クリストフ様はお湯浴びてるみたいだし」

「ばっかこの、お前シエルこの野郎、シレっと覗いてんじゃねぇだろうなコラ!」

「うっそだよーん。しっかり起きて、貴方を待ってる。あの方を助けてくれて、ありがとう……陛下」

王はぺこりと下げたシエルの頭を、わしゃわしゃと撫でる。

「良い子だ。シエルもミストも、ニーナも……俺が会えてない組織の連中も、みんないい奴だろう?」

「……うん。許してあげられるなら、そうして欲しい。僕の……子どもの、考えだけど」

そのための事情聴取である。

いかに議会を納得させ、思惑通りに特赦を与えることが出来るか。

アルフレッドの肩には今、50人分の人生が乗っている。

2019/8/31更新。

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