日常編(6)/暗闇を払って(3)
アルフレッドはひとしきり謝ってから、改めて尋ねた。
「警備隊はどうだ? 期待できそうなのか」
狂言暗殺騒動での活躍が認められたジェシー=ヴェントが正式に警備隊に加わり、
ニーナ=ファーウィンドはますます職務にまい進していると聞く。
巷では、お堅い公務員というよりは、警備隊のアイドルとして人気なようだが。
「んー、隊長さん始めエリート集団なのは間違いないからね。実力はついてると思う」
「あの隊長……すごいよ」
自分はよい人材に囲まれているようだ、と王は思う。
優秀な人材をそろえ、適所に配置しているから、他の国もうまく行っているのだろう。
「引き続き鍛えてやってくれ」
「ん、わかった。それで王様、本題は? 調子伺いだけじゃないでしょうよ」
「顔にでも出てたか」
「そんなもん。貴方は素直なひとなんだろうし」
「むぅ」
いいことだよ、と笑ったクレシダは「何を聞きたいの?」と居住まいをただす。
髪を複雑な形に結び終えて上機嫌なのもあるだろうか。
「義賊事件のことだ」
「他の刑事さんに全部お話しました。話す事はございません」
確かに報告書は読んだ。
狂言暗殺の影に隠れる形になったとはいえ、自分の耳で確かめておきたいこともある。
暗殺組織にまるごと特赦を出そうと言うのだから、
この二人を始めとする『義賊』の子どもたちを、同様に救いとらないわけにはいかない。
「だから帰ってくれ、とか言うなよ。あと刑事って何だよ」
「ま、いいから。それで、何が知りたいのさ」
「誰に頼まれたか」
「……何のこと?」
「今さらごまかさなくたっていい。特赦は取り消さねぇよ――俺が真相を知りたくてむずむずするってだけだ」
クレシダは、改めて王を値踏みするように見つめた。
「驚かないでね――僕らにひと暴れするよう仰ったのは、ウィルフレド様だよ」
やっぱりかぁ、と王が天井を見上げる。
「まさか、続けてあんなことになるなんて事までは、親父も見通せてなかったろ?」
「うん。自分の残した禍根でアルフレッドを苦しめてしまったって、お嘆きだった。
自衛軍の問題とか治安維持をどうなさるのか、試してみたかっただけみたい。
あとは、議会と民の意見が食い違った場合どうするのか、とかね」
治世を続けて行けるかどうかの、先王からの実地テストといったところだったのだろう。
事情を聴いた今なら、ちょっと担いでやろうか、
という悪戯心までが透けて見えてくる。
自分は改めて父の事を敬愛しているのだな、と自覚する。
「親父は何て言ってた?」
「その後の暗殺の芝居ふくめて、悪くなかった、ってさ」
「ん、わかった。しばらく好物の酒は送ってやらんと伝えてくれ」
少しは仕返しをしてやらないと気が済まない。
大爆笑するクレシダ達を残して、王は部屋を出た。
2019/7/17更新。
2019/8/31更新。




