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日常編(5)/暗闇を払って(2)

黙ってしまった王のために、ブルーベルもまた声を止める。

短い時間が過ぎた。

アルフレッドには、途方もなく長く感じられる時間だった。

まつりごとの上の決断ならば、秒単位で行える自信がある。

自分の感情の事となると、とたんに思春期の少年のごとくなってしまう。

「どうしても欲しいものが、同時にたくさんあったら……ブルーベルなら、どうする?」

「魔族ですからねぇ……全部手に入れる方法から考えていきますわ」

「だよなぁ」

「王とか地位の高い貴族なら、人間だってそうできるんじゃなくて?

 欲しいものの全部を大事にできる自信があるなら、手に入れればいい。単純なことよ」

姉上みたいだな、という言葉が、自然と王の口をついていた。

ブルーベルは急に顔を赤らめて、「そんな風に言われたのは初めてですわ。お戯れを」

「ふざけてないよ。俺は一人っ子だし。おやじは側室を持たなかったから」

「そ…そう……なら仕方ないわね。姉上だと思ってもいいわ。婆さんって言われなくてよかったわよ」

ああ暑い、と取り出した扇で自分を仰ぐうちに、落ち着きを取り戻したようだ。

しっかりゆっくり悩みなさいというようなことを言い置いて、妖魔はあてがわれた部屋に戻った。

コルトシュタイン城は周辺に四つの小さな塔を持っていて、暗殺騒動を教訓に、

宿泊所としても使えるように改装を進めている段階だ。

突貫工事で出来上がった数部屋を、もと暗殺組織のメンバーにツケ(商店街の手法だ)で貸し出している。

工事関係者にはしっかりと賞与を給し、今後のことも頼んである。

本当に、国政の方が簡単だ。

しんどいとばかり思っていたけれど……自分の感情を上手に処理する難しさに比べれば。

とにかく今は、暗殺事件の全容と、組織そのものを理解することが先決だ。

王は半ば強引に考えを切り替え、改めて彼らに話を聞いて回ることにした。

時間は有限だ。

王の地位にある限りは、気分や疲労などで手を止めてはならない。

まずは、義賊団を率いていた黒エルフの双子だ。

あの事件についても、どうしても確かめたいことがある。

二人は直射日光を避け、四つの塔のうち最も日陰にある時間が長いひとつに間借りしている。

アルフレッドは手抜きして、転移魔法で部屋に向かった。

「うわ! 王様!?」

「何!?」

着替えの最中だった。

二人とも蝋のように白い肌をしている。黒エルフに特有の、生まれつきの色素不足だ。

なまめかしいほど長く黒い髪との対比が美しい。

「す、すまん!」

男色趣味はないはずなので別に気にしなくていいのだが、双子の反応につられてつい顔を背けてしまう。

俺どうなっちゃうのかな……などと不安に思いつつ、双子が着替え終わるのを待った。

「やー、ごめんごめん。警備隊の稽古けいこに付き合ってて、汗かいちゃったから」

「ごめん、ね、王さま」

快活なクレシダと無口なクロウ。

クロウは、なぜか現代語の会話が得意でないのだと不思議そうに言っていた。

魔王に尋ねてみたが、言語関連の軽い症状だろうと言うだけだった。

なので、そういう理解をしている。

闇に生きる義賊団を名乗るには、構成員が個性的過ぎると思わなくもないのだが。

2019/7/17更新。

2019/8/31更新。

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