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日常編(4)/暗闇を払って(1)

さながら一篇の大長編が如き大量の調書を、アルフレッドは一夜で読みつくした。

約50人分を、まったく飽きずに。一睡もせずに。

心配して起こしに来たアルフィミィを逆に驚かせたほどに。

「あ゛ー、読んだ読んだ……!」

私室から背伸びをしながら出て玉座の間を素通りし、城のロビーへ出る。

彼の城はここから枝分かれして、様々な部屋が作りつけてあった。

「おはようございます、陛下」

「おはよう、ブルーベル。よく眠れたか」

「おかげさまで。私たちの処分は決まりまして?」

紫の瞳の妖魔は、ロビーの壁画から目を離して応じた。

魔物すら眠らせる子守唄を操る、優れた魔導師である。

ちなみに彼女が暗殺組織に加わったのは、単純にクリストフを心配したから、らしい。

妖魔族を始めとして、魔族は基本的に人間の世話を焼きたがる所がある。

「まだだ。けど悪いようにはしない」

「優しいのね、陛下は」

「そんなんじゃないよ。俺は俺の味方が少しでも欲しいの」

「50人近くいるのよ? 皆を陛下おひとりで召し抱えるわけにも行かないでしょう」

「それは……そうだが。役所とか、親戚たちにも相談してみることにする」

ブルーベルはようやく、美しい紫の眼を細める。

「リコシェとダガーはもう、公子の所に着いたかしら」

「叔父貴の屋敷って、ここからそんなに遠くないんだけど」

「ノリですわよ、ノリ。別れた仲間を切に想うのは、人間も同じではなくて?」

「そうだなー……忙しすぎて昔の仲間との連絡を怠ってたのも原因だしな」

サボりたいとかの意味ではなく、本当に国王の激務ぶりを何とかできないものかと考え始めている。

コルトシュタインのような小さな都市国家でさえ、君主の眼を隅々に届かせることは不可能なのだ。西や東の大陸にある大国は、一体どのような政策で統治しているものだろうか。

「冒険者ギルドでも立ち上げてみたらいかがです? ちょうど、腕利きの人員もたくさんいますことよ」

「すわ読心じゅ」

「顔見りゃ分かりますわよ。葛藤する男子も美しいものですけれどねぇ」

見かけはアルフレッドと余り変わらない様子に見えるが、魔族にとって歳勘定は意味をなさない。

某夫人と趣味が合いそうだった。

「いいかもな。もし、お咎めなしにでもなったら、あんたはどうするんだい」

「クリストフ様から聞いています。〝金鞘”という直属部隊を考えられているそうですわね」

「なかなかスカウトが上手く行かないけど」

「あの方とニーナを傍に置いておきたい、だけでもないのでしょ? 私が入ってあげてもいいですわよ」

だから何でバレてんだよ!

という嘆きにも似た感情をうまく押し隠して、王は頷いてみせる。

ラルフの事を責めることが出来ないのは……自分も自分の欲に基づいて動こうとしているからだ。

格好つけて救済者なんぞ気取ってみても、少しでも敏い者にはすぐに見透かされてしまう。

あさましいと笑うだろうか? この妖魔も。

皆に笑われる小さな自己満足だというなら、考えを変える必要があるのかも知れないが……。

2019/7/16更新。

2019/8/31更新。

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