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中編(6)/金龍躍動(2)

果たして、金龍の娘は桁違いの強さを見せた。

手合せを挑んで来た全員を剣1本で打ち負かして上機嫌のニーナに、

「危険じゃが城の部隊に加わって欲しい」とウォルト=ケネスが頭を下げたのも、

驚きは生んだものの、当然のこととして受け止められた。

ニーナはすぐに、決して使わなかった大剣を小さな背に背負って、支度を始めた。

「あのっ……!」

思い切って声を掛ける少女がいた。傍に立つ少年ははらはらした表情を浮かべているが、

この場は女の子に任せているようだ。

「……?」

「わたし達も、お城へ連れて行ってください!」

王立警備隊の隊長、ニーナ=ファーウィンド嬢である。

同じ名を持つ少女との手合せの途中で何かのきっかけを掴んだものか、

その小さな身体を翡翠ひすい色の気炎が覆っている。

沈黙を守る金龍の娘の様子に、周囲で見守る大人たちまでもが思わず息を吞む。

金色の娘は、ぱぁっと笑みを咲かせて、二人に手招きをした。

「ありがとう、ニーナさん。俺はジェシー=ヴェント。よろしくね」

悪手をした浅黒い肌の少年と、顔を赤らめてはにかむ少女を見比べる。

またにこりと笑んだニーナは、「きっとうまく行くよ」とジェシーに耳打ちした。

「あ……」

真っ赤になって俯くふたりを残して、金龍の娘が歩き出す。

――。

「なるほどねー」

「思わず来てしまいました、陛下。俺たちに危険がないようにしてくださっているのに……」

「いや……お嬢が警備隊に入ってくれた時から、

 いつかは君も来てくれるんじゃないかと思ってた。ようこそ、後輩」

私室にあいさつに来た3人に、アルフレッドは柔らかな笑みを見せた。

王は、ケネス翁が引き継ぐ前の武術教室で学んでいた。

今も時々顔を出しては、鈍りがちな身体を鍛え直している。

この二人は同門にあたるわけだ。

「で、君が『金の』ニーナだね。姉上から話は聞いていたよ」

「姉上がいらっしゃるのですか!?」

「ははは。一体どんな化け物だと思ってるんだい、お嬢」

頓狂な声を上げたもう一人のニーナを落ち着かせる。

「すみません……次元が違っていたものですから、つい」

「だろうね」

『金の』ニーナが顔を思い切り赤らめて王を見つめているのを見たニーナ嬢は、

話を続けたいのをこらえて、ジェシーと共に警備隊の詰め所へと向かった。

「空気、読まなくて……いいのに」

「ははは。緊張してるのか」

「うん。アルフレッド様、かっこいい……から」

そうかなァとおどけて自分をためつすがめつする王の仕草に、ニーナは静かな笑いをこぼした。

「姉上は、どうしてる?」

「お屋敷で……寝込んでいます。あとで、叱ってやってください」

魔王のおじさまが付いているから大丈夫だと聞いて、アルフレッドは胸をなでおろす。

「ねえ、ねえ。陛下は……姉さまのこと、好き?」

「もちろん」

「うーん……じゃあ……私、は?」

思わぬ不意打ちであった。

赤らむ頬。

見つめる金の瞳。

考えるまでもない事だった。考えてみれば、とんでもない事だった。

だが、たとえ一瞬でも、それが頭をよぎってしまった。

――誰にも言ってねぇけど、恋愛とかだけは欲張りなんだよなぁ俺。

複雑な思いが、王の声を止めた。

2019/8/30更新。

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