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中編(5)/金龍躍動(1)

所変わって、コルトシュタイン周辺地域。

大小5町村を拠点に、訓練と戦いの準備に奔走する人々がいる。

そのうちの一つの村に場所を移して開かれている小さな武術教室に、

3人ほどの少年少女が訪ねてきた。

武術教室の主ウォルト=ケネスは、微力ながら黄金王に助力したいと申し出た彼らを、

疑うことなく優しく迎え入れた。

「おやじ、変わったね」

「まあ……孫も生まれるしのぅ。いつまでも偏屈へんくつジジイではイカンじゃろ」

僕ももう叔父さんだな、と笑んだレオン=ケネスは、懸命に訓練に取り組む子供たちに声を掛けて、

休憩がてら魔法書の手ほどきを始めた。

すぐに驚かされることになった。

半猫の少年、シエルは基礎を飛ばして高等な魔法書を読みふけっているし、

妖魔のクォーターだと言うミストは、召喚魔法に用いる難解な図形をおもしろがって解読中だ。

ニーナと名乗った黄金色の少女に至っては、リチャードの秘蔵品である古代語の物語に夢中になっている。

子ども達から放置をくらったレオンは、広場の大きな木にもたれながら、

楽しい『授業』の光景を眺める。

「うかうかしてらんないわね、レオニュディース?」

「いきなり現れるのやめてくれませんかってば、リュミィーシェ先生」

彼の隣に現れて扇をはためかせる銀エルフの貴婦人は、何となく上機嫌なようだ。

水を向けると、いい生徒がたくさんいるから当然だ、というようなことを機嫌よく言う。

「そう仰ると思いましたよ。先生のご注目は?」

「三人ともすごいし、警備隊の若人もいいけど……特に、あのニーナって子。金龍族ね」

「……は?」

魔法や魔族について少しでも学んだ経験があれば、

『ゴールド・ドラゴン』については誰もが一度は聞き、目にする。

「今回のアルフレッドの判断は良かったと思うわ。私らじゃどうしようもなかったかも知れん」

年端もいかない子どもたちでさえ、大人を軽く凌駕りょうがする力を示そうとしている。

当初は50人ほどの規模だった、と王が言うスラムの暗殺組織が、

本気でこの都市国家に刃を向けていたとしたら……。

「ぞっとするね」

「同意。ぜひ何人か雇ってみたいわねぇ」

「ウルヴレヒト公子が二人ほど引き抜いたらしいよ。組織との決戦が済んだら、来てくれるんだって」

「先を越されたわ……あのイケメン金髪ヒゲおやじっ」

「おい」

この人はいつもこうだ。喋り出すとシリアスな雰囲気など吹き飛んでしまう。

「砂漠の狙撃手集団とか北の小島の半狼人部隊とか雇ってるんだから、もういいと思うんだけどなぁ。

 ここは軍事国じゃないっての」

「おい」

「だいたい、あいつはいつも美女連れて旅なんかしちゃってさ……」

本当の気持ちを素直に言えない女のことなんか、考えてもいないんだ。

と、貴婦人が少女の顔に戻って言う。

「……先生?」

「喋りすぎたわね。ま、あんたも私の恋バナを聞けるくらいのイイ男になったんだと思いなさい」

立ち上がった婦人は、ローブの腰にいた魔剣の鞘を光らせながら、

金龍の娘ニーナに手合せを挑みに走る。

どう言えばいいかわからないじゃないか、とボヤきながら、レオンも彼女に続いた。

2019/8/30更新。

2019/8/31更新。

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