表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/94

中編(4)/魔王暗躍(4)

王の事を考えてか、柔らかく笑んでいた顔が、少しすると再び曇ってしまう。

自分の攻撃性を含めた全部を王にご覧頂きたいのだと言って、あえて挑んでいった。

そんなことをしなくても、喜怒哀楽を彼と共にしていれば、悪い扱いを受けるような女子ではなかろうに……などと、お節介なスゴロクは考えてしまうのだが。

まあ、魔族と考え方が似て非なればこそ、人間族とはおもしろい。

勝手に結論付けてから、ふたつの異能を持つ魔眼まがんが伝え来る直感に従って、口を開く。

「父君のことか」

「何でも見通す魔眼か。気に入らないわね」

「そういう奴に目をつけられたのだと諦めてもらうしかないな」

クリストフはひとつ息をついて、

「止められなかったのかな、って」

ジェノク=スチュアートは、人間ではない何者かに変わろうとしている。

再生も転生も、人々の身近に起こりうる現象だ。

存在のありようなど、たやすく変わってしまう。

「もう、無理だ」

「頭じゃわかってるの。ひどい人だったけど、父親だし……どうしても考えちゃう」

「……そうか。これほど娘に想われていながら、気づけぬとはな」

「あなたみたいな人が、お父様なら良かった」

「養子にでもなるか」

「結婚は?」

「まだだ」

「だよね。城でお嫁さんとのんびり、なんて風には見えないもの。モテモテなくせに朴念仁のドンカン男って感じぃ」

「うむむ、何という言われようであるか。弁解できんが」

「あははは」

この魔王は、おどけたり冗談を言う機会を心得ている。

と、これまで関わってきた中で、クリストフは思っている。

どう言葉を使い、どう動けば他人が喜ぶか、笑うか、希望を見出すかをきちんと心得ているのだ。

アルフレッド王は彼を評して、「勇者のようだ」と仰っていた。

本当にそうだと思う。物事や人心を敏く見通す目、困難に苦しむ者の声を聞き逃さない耳。

山を吹き飛ばし、海をも涸らすだろう力。

魔界でなく人間界に生まれていたならば、間違いなく『勇者』と呼ばれる英雄の器だったろう。

だが、彼は魔王だ。

そのことに誇りを持っているようだ。

ならば、手を貸してくれていることを素直に喜ぼうと、クリストフは思う。

「ラルフ殿の様子はどうだ」

ジェノク=スチュアートがもうすぐ人間でなくなると聞いて、ただならぬ衝撃を受けたのは、

クリストフよりも彼である。

ブルーベルが気を利かせて話し相手になってくれているが、

時々ふらりと外出しては戻る彼の後までは追っていないという。

時折様子見がてら仕事を頼むが、いつも通りきっちりこなしている。

芝居について打ち合わせた時も、悪役を引き受けたい旨、頑として譲らなかった。

その彼が出す結論を信じるつもりだ、とクリストフは言った。

全てがうまく回るといいな、と、魔王は薄い笑みを浮かべる。

「うん。ありがとう……」

おとうさま、

と呟いてみた迂闊な言葉が、彼の『勇者の耳』に届いてはいまいかと、

余計な心配をしてしまうのだった。

2019/8/30更新。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ