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前編(終)/血風(2)

暗殺組織の魔手は、被害者たちの抵抗すら許さないまま、王の親族に及んだ。

武器コレクターで剣なら誰にも負けないと豪語していた、クラウス卿。

金山の官吏長を務める分家の家長、バリス公。

ついには王が数多い親族のうちで最も信頼を置くと言われ、

漂泊の旅の末、異なる大陸に独自の海路を開いた〝海運公子”ウルヴレヒトまでもが標的になった。

不気味な静寂を保っていた彼の屋敷に、ある時、黒ずくめの影が現れた。

二人組だ。背丈から言ってどちらも少年だろう。

「ウルヴレヒト公子とお見受けする」

「手前ぇらは!?」

「お命頂戴!」

必殺の意志を込めた突撃を、髭面ひげづらの公子は涼しい顔で弾き返す。

彼は若い頃から武芸に秀で、海の魔物と日々渡り合う現役の戦士である。

「くっ……」

「どうした? クラウスのおやっさんを潰したのとは違う連中かよ」

あまりの馬力で得物ごと吹き飛ばされた黒ずくめは、一撃離脱を諦めて武器を構え直す。

一人は二振りの短剣、もう一人は連射式の自動弓オートボウガンを器用にも8丁。

忍者ニンジャ魔弾射手スウィーパーか、惜しいなァ」

少年らは何も言わず、息の合った連携で公子を攻め立てる。

だが、彼が北の海域の主から分け与えられたといわれる剛力と、武術の冴えは伊達ではなく、

思う通りに追い詰めることが出来ずにいた。

その隙に体勢を整え、屋敷の窓という窓から少年らを狙っている指揮下の狙撃手スナイパーたちを制して、

ウルヴレヒトは中庭での戦いを楽しむ。

矢の雨をことごとく叩き落とし、素早い剣技を動きで凌駕する。

凄まじい動きぶりでも、公子の嬉しそうな表情は変わらなかった。

「くそっ……なぜ……!?」

三十路みそじからこっち、あんまり本気出してなくてよぉ。いい歳こいて燃えちゃってんだよなぁ、おれ」

挑発された少年は怒りに火をつけ、覆面を自ら取り払う。

「ひゅう、美少年」

「愛でる趣味でもあるの、おっさん! それとも捕らえていじめてみるかい!?」

「おっさん悲しいね、おれは他人を大事にするんだぞう?」

「それにしちゃあ人使いが荒いって、調べはついてるんですからねこの野郎!」

鍔迫り合いをしながら激しく唾を飛ばし合う。効率のいい暗殺術ばかり学んできた少年にとって、

これほどに掴みどころがなく、破りがたい剣技と人物は初めて目にする。

「ちょっと楽しんでるだろ。分かるぜ少年、名前は」

「リコシェ! 後ろで矢を撃ちまくってるのがダガー! ってか何で魔法の矢が当たらねぇんだよクソっ!」

「駄目駄目、おれを殺りたきゃ龍族でも連れて来るんだな。

 ……それよか、随分うまく殺ってるみてぇじゃんか」

「――なんのこと?」

「とぼけんでいい。おれにも一枚噛ませろや」

「信用しても?」

「海の男は嘘つかねぇ。陸戦艦持って参上してやらぁ」

「見返りは」

「お前ら、っつったら、どうする?」

リコシェは相棒を振り向き、頷き合う。

「決まりました。……光栄です、ウルヴレヒト公子」

よし、と歯を見せた髭面は剣を捨てると、一撃で少年達を殴り飛ばしてみせた。

狙撃手らの弓が、すべて役目を解かれた。

2019/7/12更新。

2019/8/27更新。サブタイトルを変更しました。

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