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前編(9)/開演(1)

クリストフと共同で打つ芝居の準備を進める最中、義賊事件の方に大きな動きがあった。

頭領だという黒エルフが2名、自衛軍に投降して来たのだ。

「まこと、ふざけた連中でございますな」

とウォルト=ケネスが憤慨する通り、彼らはアルフレッドを前にしても無邪気な態度を崩さなかった。

面談すると、各地で職や食べ物にあぶれた子どもをまとめて義賊団を作ったと言った。

他の各国では悪党だけを標的にしていたのが、ちょっとした悪戯心から、

コルトシュタインの王城に挑んでしまったのだという。

「まぁまぁ、ケネス殿。手柄を上げることが出来たのだから良しとすればいいだろう。

 元を辿れば、王冠をしっかり管理していなかった俺にも、非がないとは言えん」

「むむっ……まあ、王がそう仰るのでしたら」

最近は影を潜めていたとはいえ、一時期の黄金要塞ではただならぬ人気を博した義賊団である。

捕縛を知らせる触れ書きを出した途端に、市民から罪を減免するよう嘆願が集まり出した。

年齢の低い子供たちも複数いたと聞きつけて、

普段は絶対に城に姿を見せないスラム地区のドンが、わざわざ訪れて頭を下げたほど。

処分を決めるために開いた議会(重大な犯罪に対する裁判も行う)では、

財産の一部を奪われた議員から反発も出たが、不正な手法で稼いだカネだと言う事を知られたくないのか、

過激な刑罰を求める声は少なかった。

義賊団の全員を王の独断と偏見で処分することを渋々ながら承諾させ、

頭領のクレシダとクロウを除いた20人ほどを、金山の監督官であるバリス公に預けた。

刑罰なので賃金はないに等しいが、生き方や働き方を身につけるにはよい環境だろう。

「それよりも、自衛軍は大丈夫なのか」

王に対する刺客の侵入を防げていないと言う理由で――おそらくは刺客を送っている連中から、

自衛軍を解体するよう陳情が来ている。自作自演というやつだ。

議会でもたびたび議題に上げられ、集中攻撃を受けているに等しい。

「最早……致し方なき事にござる。時流に取り残されておるのは、わたくしの方でございましょう」

「ケネス殿」

自棄やけを起こして申しているのではございませんぞ、陛下。

 過日クラウス卿より引き継いだ武術教室には、有望な貴族の子女らがたくさん通い来てくれております」

武に優れた師についていたこともあり、彼らを集めて更なる訓練を施せば、

近く新たな国防部隊を創設することも可能であろうという。

ケネス翁は長年袖を通してきた騎士服の懐から、数名分の辞職届を取り出した。

「これよりは市井にあって、陛下のお役に立ちたいと考えております。

 やんちゃな子どもたちと遊ぶので、すっかり疲れてしまいましたわい」

以前なら目くじら立てて義賊団への処分の甘さを指摘しただろうが……。

先王の放蕩ぶりをいさめる時と同じ、楽しげな表情をしている。

「アルフレッド様、あとの事をよろしくお願い致します」

「……今まで世話になった。感謝している、ケネス殿」

王の顔をきちんと保てているかという不安が、アルフレッドの頭を占めていた。

2019/8/25更新。

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