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前夜(12)/黎明(4)

半年が過ぎたあたりから、コルトシュタインの城下町が騒がしくなった。

スパイを送って内情を探らせた。

その役目にはラルフが手を挙げた。クリストフの意図を、話し合って理解した上でだ。

ラルフは、父に必要とされたい一心で暗殺組織とその計画の参謀役となった男だ。

この半年間だけを見ても、クリストフとの約束を反故にした父に命じられるたびに、

魔物を操って王城に襲撃をかけ、

失敗を重ねては父にひどく責められるという循環を繰り返してきた。

クリストフは、組織での立場が上という事になっているのを利用して、彼の本音を引き出した。

王の命を狙うと言うより、むしろその責めを受けることが目的になっていたと、

父に王を殺させたくはなかったと、彼は言った。

同族殺しの禁止は、この自由な世界においても最低限、守らねばならない事項の一つだ。

破れば魂を牢獄につながれ、再生も転生も与えられずに苦しみ続け、

最後には魔物と成り果ててしまう。

父がそうなることだけは避けたかったのだろう。おそらくは、彼が望む苦痛を与えられ続けるために。

クリストフは、自分が彼に何も言えない立場であると分かっていながら、

「もう『暗殺計画』なんて終わりにしよう」と説得した。

ラルフはそれに応じてくれたのだった。

その彼からもたらされる情報によれば、このところのコルトシュタインは、

鮮やかすぎる手並みを持つ盗賊団による物品盗難事件が相次いでいるらしい。

ウォルト=ケネス団長を始めとする自衛軍は、躍起になって盗賊たちを追っかけ回しているのだそうだ。

期せずして、と喜ぶべきか。それともご都合主義を疑うべきか……。

この国の防犯意識は、これまでと比べれば高まっているのだろう。

アルフレッド王も、城や町の警備を強化すべく、自ら警備員の募集を行っているそうだ。

「……ふむふむ、なるほどね」

「何か閃いたのか、リコシェ?」

ラルフから送られてくる情報を、クリストフは自らの直属とした4人の精鋭たちと頻繁に共有している。

リコシェは、大胆きわまる考えを披露した。

警備隊の一員として王城に潜入してはどうか、というのである。

先王の時代から勤めるベテランが多く、

柔軟さを大いに欠く自衛軍に暗殺計画を密告しようとするより、

国事に関して強い決定権を持ち、クリストフとも縁の深いアルフレッド王に、

ジェノク=スチュアートの捕縛を願い出た方がいいのではないかと考えたらしい。

「自衛軍に密告するって方も、試してみたらどうかしら?」

「そうする。でも、ブルーベル。僕らが行っても相手にされないかもだよ」

「そうねぇ……ちゃんと信用してもらうなら、やっぱり潜入するのがいいのかしらね。

 問題は、誰が行くかなんだけど……」

クリストフが、恐る恐る手を挙げた。

「私が、行く」

ブルーベルが目を丸くする。

「あらまぁ、大胆……どうなさったの、クリストフ様」

「どうしても、王にお会いしたくなった。感情的で申し訳ないんだけど」

「ご自分の感情にも従えない方の指揮を受ける気はありませんわ」

他の3人も一斉に頷く。

自分の顔が真っ赤になっていやしないかと、余計な心配をしてしまうクリストフだった。

2019/8/22更新。

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