5話-8 ダーリン
久しぶりの投稿になります。初期構想がかなり詰め込み気味になったので、色々とテンポよく進めようとしたら展開構成に時間がかかりました(言い訳)。
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ショーの開演とともに、盛大な火柱が舞台の両端に上がった。観客の驚嘆の声の他に聞こえるのは、指を鳴らす音のみ。音響設備から聞こえるその小さく短い音が鳴るたび、更なる火柱、花火、火の輪、その他様々な仕掛けが起きていった。
「凄いですね、夜乃!あの赤い髪の人が、火を出してるんでしょうか!?」
舞台上の演出に興奮を隠しきれない白が、目を輝かせながら夜乃に尋ねた。
「私が『異形』とか何も知らなかったら、火を出す装置をタイミングよく出してるだけだよって断言できるんだけどね。」
白の質問に夜乃はそう答える。何も知らなかった時ならいざ知らず、今の夜乃には目の前の光景を何の気なしに見ることはできなかった。
あの男は本当に火を出す能力者かもしれない。
これから出てくる人達も何かの能力を持った人達かもしれない。
ただの観客としてだからこそ、こうしてのんびりと観ているだけなのだが……
夜乃はふと思う。もし彼ら全てが『異人』だったならば、彼らと争うことを要するのならば、
このサーカス団は一体どれほどの戦力を抱えているのか。
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そして、男たちは世界を回った。友からくる情報を頼りに、『異人』たちを探して回った。
動物と会話をする男、宙に浮く女性。紆余曲折ありながら、彼らは1人、また1人とサーカスに加わった。
やがてかの一団は、新たな脅威として認識され始めた。多くの刺客が彼らを廃そうとし、その全ては『異人』たちによって撃退された。
だが、男は悟った。今のままではサーカスを開演できない。刺客を撃退するには『異人』の力が必要だ。しかし、その『異人』たちが舞台で劇をしていたら、戦場を離れてしまったら…
サーカスによって、民衆の『異人』への認識を改めるには、あと1人、彼の参加が不可欠であった。
誰もいない廃墟。人気のない荒れ果てたその建物の、自然と薄暗い雰囲気を醸すその場に、
不自然なほど自然が溢れている。
男の足音があたり一面に響く。一面の花畑の、しかし唯一コンクリートの残った細道を男はただただ辿っていく。
やがて、開けた空間に月の光が差していた。
月明かりの下、またも不自然に置かれた木の椅子で、白髪の男がまっすぐ彼を見下ろしていた。
「初めまして、ベータ。」
男はゆっくりと中心部へと歩みを進める。
「君の力を借りにきたんだ。」
そう言って、男は彼の方へ手を差し伸べた。
瞬間、薬指の指輪から一輪の花が咲いた。
すぐにベータは椅子の後ろへ移動する。指輪はまるでダリの絵画のように、花と溶け合ったような形で変化を止めた。
「ご、ごめんなさい。大事な指輪が…」
「いや、こちらこそ申し訳ない。私の配慮が足りなかったんだ。」
男は花と溶け合ったその指輪を見つめながら、続ける。
「それに、君のその能力を見れてよかった。」
「範囲内の金属を、植物に変える能力。私たちにはその能力が必要なんだ。」
ベータはたじろいだ。男のその真摯な言葉に、まっすぐな目に。
「い、……っ」
反射的に出そうになった言葉を、口を無理やり塞いで止めた。
視線が泳ぐ。もう一度男の方を見る。変わらずこちらを見つめている。
人が怖かった。危害を加えてくるからじゃない。
自分を恐れるから。
怯えた表情をするから。
その顔を見ると、自分が化け物だと認識してしまうから。
だが、彼には助けが必要だった。あることを成すために、十分な戦力が。
彼はもう一度彼を見つめ、一つ息を整えてから、ゆっくりと口を開いた。
「じょ、条件が、あるんだ。」
「何だい?」
男の返答に、またも目線がブレる。しかし、なんとか目線を戻して言った。
「ひ、ひとり、助けたい…人が、いるんだ。」
精一杯の言葉だった。
その努力を男は確かに感じ取った。
「私にできることは?」
「な、なるべくは、ぼ、僕が、やる。」
その言葉と共に彼の視線に力を感じた。男はほのかに笑みを浮かべた。
「交渉成立だ。」
男は伸ばしていた腕をさらに前に伸ばした。
「あ、ああ、危ないよ。ち、血の中の鉄分だって、き、き、金属なんだ。」
ベータは慌てて後ろへ退く。しかし、男はにこやかに言った。
「これから色んな人たちと関わらなければならない。練習だと思って、さあ。」
ゆっくりと男の手が近づいてくる。
彼はそれに応えるために、恐る恐る手を伸ばした。
そして、すんでのところで止まった彼の手を、男は強引に掴んだ。
ミセスの「ダーリン」という曲のMVをイメージしてます。この子が5話の裏テーマです。




