5話-7 やっぱりあなたの娘ね
ー 10 ー
「あ?『異人』の連合を作るだ?なんでそんなもんに俺が入んなきゃなんねえんだよ。」
彼らを住処に招き入れ、一通り男の話を聞いたアルマはボロボロになったソファに腰掛けながら、男の提案を鼻で笑った。
「さっきの戦闘を見ただろ?俺はつるまなくても一人で生きていけんだよ。お前らが勝手にやるのは構わねえが、そんなくだらねえことに俺を巻き込むんじゃねえ。」
「貴様!さっきから言わせておけば……っ!」
アルマの物言いに思わず秘書が立ち上がる。しかし、アルマは余裕の態度でパチンと指を鳴らした。突如4人の前に噴き上げる火柱に、片桐も立ち尽くす以外の方法がない。
「分かんだろ?俺にはお前らの助けなんて必要ねえ。他に用がないんならとっとと帰んな。」
何もできず悔しがる片桐に、アルマはそう言って笑った。
男は思う。彼の言うことは確かだろう。彼の能力があれば、ある程度の軍隊規模でも苦戦することなく対応できるであろう。
しかし、ならばなぜ彼は我々4人をここに招いたのであろうか?彼の言い分なら4人を住処に招かずとも、屋上から一方的に帰れと言ってしまえばそれで済んだ話なのだ。
その答えは別に難しいものではない。だが、問題はそれをどう彼に切り出すかだ。今ある答えをそのまま彼に投げかけるのは、彼の性格上正しい選択とは言えないだろう。
さて、どうするか。男が思考を巡らせ始めたその時、
遠ざかる誰かの足音が、男の思考を差し止めた。
「な!?お前、何して…っ!?」
慌てて火柱を消すアルマ。それを察していたように少女は止めることなく足を前へ進めた。
「おい、待て!祈…里……」
急いで連れ戻そうとする男の手を、しかし横にいた彼女はそれを静かに制止した。
「お前、何してんだ!燃え上がる火に近づいて、火傷でもしたらどうする!!」
近づいてくる少女に対して怒りを露わにするアルマ。だが、そんなことを意に介することなく少女は無垢な笑顔で言った。
「優しいんだね、お兄さん。」
「誰も傷つけないように、当たらないようにしてたんだよね?」
戦闘の痕跡は、圧倒的なアルマの力だけでなく、一切の犠牲なく戦闘が終了したことを示していた。
「近づくんじゃねえ!」
少女に向けアルマが指先を向ける。
場に緊張が走る。
しかし、それを意にも介さず少女はアルマの手を取った。
「一緒に行こう。」
少女は屈託のない笑顔でそう言った。
この体質は、火が出るようになったのはいつ頃だっただろうか。確か9歳の誕生日だった。
突然の発火に恐れ慄く(おののく)両親。火傷をして、逃げていった友人。やがて優しかった町の人々は自分のことを遠巻きに罵り、石を投げられたこともあった。
いつしか自分の周りに人はいなくなっていた。怒りがあった。憎しみもあった。それでも、彼らを傷つけたくなかった。
あてもなくふらふらと歩いた先でこの廃墟のビルを見つけた。しばらくは残されていた食料でその場を凌いだ。その後は追い払った軍隊の残していった食料を食べた。
日々を過ごす中で相反する感情が彼の心を支配した。
憎い。
自分を捨てた人が憎い。
自分を恐れる人が憎い。
自分を排除しようとする『人』が憎い。
ただ、それでも、それ以上に……
「もう寂しくないよ。」
俺は誰かと触れ合いたかったのだ。
「やっぱりあなたの娘ね。この人たらし。」
「君の娘でもあるんだがね。」
そう話し合う2人を見て、片桐は思った。とんでもない人たちと組んでしまったな、と。




