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4話-29 部屋の一室で

最後は今回の依頼人と始祖との会話です。

ー1ー


「ひとまず、SU認定ということで本部から通達があったよ。」

とある一室で男の声が、静かな部屋に優しく響いた。

「危険度Safeの扱いUntouchableね。なかなか良い感じになったんじゃない?」

「始祖たっての願いということを伝えたら、すんなりと話は通ったさ。」

男の声に、始祖はため息をもらした。

「おいおい、まるで僕が彼らを脅したみたいじゃないか。」

「その方が話を通しやすいんだ。別に問題ないだろう?」

「その前に一言、僕にあってもよかったんじゃないかい?」

「まあまあ、私と君の仲じゃないか。」

彼らは和気藹々と話をしていた。しかし、もし誰かがこの会話を聞いていたなら、その人物は底冷えする恐怖に思わず逃げ出していたに違いない。

彼らは互いに信用はしているが、信頼はしていない。

ビジネスパートナーであり、友人ではない。

そんな仲だった。


「それで?どうだった、夜乃は。君の期待に沿えたかい?」

始祖の問いかけに、男は途端におもちゃを与えられた子供のように目を輝かせた。

「素晴らしいよ!あれだけの情報から短期間で最も最適な解決策を出した!さらに天照を相手に攻撃の起点を作っただって!全く、あの子には感心されっぱなしだ!」

「ははは、珍しく興奮しているね…








…出光 晴人さん」


男の顔が作られた笑みに変わった。

「流石に本名は隠しきれないか。」

「偽名に経歴詐称、随分とやってくれるじゃないか。そこまで信用がないのかい?」

「カードは切らずに持っておく(たち)でね。」

つくづく侮れない男だ。これ以上責めても何もないだろう。

そう思い、始祖はそれ以上の追求はしなかった。

「しかし、なんで僕に夜乃を預けたんだい?こんな危険な場所よりも君のもとで英才教育を受けた方がよっぽど良いと思うけどね。」

当然の疑問だった。彼の娘への愛は本物だ。だが、あの日の家族会議でも彼は、娘の家出について特に止めようとはしなかった。

異形の脅威を知っているにも関わらず、だ。

それは一体なぜか。


そう考えた始祖の目に、遠く夜空を眺める彼の姿が映った。

「夜乃はね。(とび)から生まれた鷹なんだよ。」

始祖は思わず首を(かし)げた。

「君が……鳶、かい?」

「私なんて、あの子に比べたら凡愚さ。」

そう話す彼の表情からは悔しさというよりも、一種の諦めに似た感情が見てとれた。

「私はね、言っちゃなんだが自分よりも優れた人間なんてこの世に誰一人としていないと、本気で思ってたんだ。」

「そう言う君の方が僕のイメージに合っているよ。」

彼女の物言いに男も思わず苦笑する。

「だが、そんな私が身の程を知った瞬間が2回あった。1回目は今の上司と出会った時。そしてもう一つが…」


「夜乃が生まれた時、かい?」

男は笑みを浮かべた。肯定の意味だ。

「妻は知らないんだけどね。あの子は2歳の頃に、私が電話で話した内容を聞いて、敬語を話し始めたんだ。」

「そりゃすごいね。」

「すぐに矯正したがね。しかも彼女は私の話を聞いて、『この歳の自分が敬語を使って話をするのは好ましくない』ということを完璧に理解し、周りの大人達に年相応の振る舞いをするようになったんだ。当然、意識しながらね。全く、ああ……




…たまらないね!」

野生の獰猛さと父としての愛の両方が彼の心に満ちていた。

「世界最高峰の学校?充実した教育環境?ぬるい!あの子の才は間違いなく実践の中でこそ輝く!私ごとき凡愚の考える範疇にあの子はいないのさ!」

「とんだ親バカじゃないか。」

始祖は思わず呆れた顔でそう言った。

「人狼?妖精?大いに結構。あの子ならその経験を糧に私では考えつかない成長をしてくれるだろうさ。」

狂気だろうか?いや、そうではない。

始祖は知っている、夜乃のその計り知れない才の一端を。

「まあ、もちろん。陰では全力で支援するが、ね。」

「それは…僕に対しても、かい?」

「当然さ。夜乃の身の安全に見合うだけの支援は約束しよう。」

それに、と彼は話を続ける。


「それは私の利益にも繋がるからね。」

食えない男だ。始祖は心の中でそう呟いた。

「天照と由香里ちゃんの保護もそっちに任せて良いのかい?」

「ああ。戸籍と偽の経歴、小学校の手続きに天照のための名目上の仕事も用意しておこう。もちろん、変な虫がつかないようにこっそりと護衛もさせてもらうよ。」

「了解。僕から彼女にそう伝えておこう。」

始祖はうっすらと安堵の表情を浮かべた。

「全部そっち任せで良いんだね?」

「ああ、私、いや……






異形管理財団 日本支部長として、全力の支援を約束しよう。」

とんだ鳶だ。世界を牛耳るトップレベルの大富豪たちが理事を務める対異形専門の保護財団。その日本支部のトップに30歳という異例すぎる速さで就任した、通称「最も異形に近い人間」。

それは外部の人間に協力的な異形達との距離感が近いと言う意味と、異形じみたその才能と、両方の意味が兼ねられている。

人類の最高到達点。

そこに至らんとする人間の一人。




「全く、頼りにしてるよ。」

「勿論。私こそ、ね。」


2人は静かに笑い合った。



今回の異形管理財団はいわゆるSCP財団の設定をパク…リスペクトしたものです。私自身そこまで詳しいわけではないので、がわを借りただけで中身はほとんど別物になっています。特にSCP財団に興味がないという人も読むのに支障がないように適宜説明と配慮を心がけますのでご安心ください。


ちなみにお父さん初登場は1話-6です。色々と伏線を散りばめているので、気付いた人はいるかもしれませんね。


次は夜乃についての話をして、4話は終わり!

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