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4話-28 祭り

何年振りかの再投稿です。

社会人になって投稿ができず申し訳ありません。

これから機会を見て投稿しようと思いますので、またご覧ください。

ー1ー


午後6時。空は未だ青くまだ夜の気配を見せないが、早くも本殿は人の群れでごった返していた。

「おう、遅かったな。」

先に来て待っていた陽子が声をかける。

「ごめん、着付けに手間取っちゃって。」

駆け足になっていた夜乃は息を切らしながらそう言った。

だが、夜乃は至って普通の格好だ。陽子の視線はそのまま上へと伝っていく。


「おお、凄えな!」

それを見た陽子は素直に感嘆した。着物を着飾った白は喜びながら、しかし少し顔を赤らめた。

「だよね!日本人の着物姿とはまた違った良さがあると思うんだ!」

夜乃は興奮気味に言葉を続ける。

「それ以上はやめてください!!」

白の顔はより赤く染まった。



そうして品評会をする夜乃たち。そこを少し離れたところに小さい影がポツリ。

大きな柱の影からこちらを眺めている少女に先に声をかけたのは夜乃の方だった。

急な視線を受け、少女は反射的に裏へと身をすくめる。しかし少ししてから、首をすくめた亀がゆっくり外の様子を伺うようにそろりそろりとまた身を乗り出した。

陽子は大きく手を振って少女を迎える。白は恥ずかしいのか小さく手を振った。

少女はしばらく柱の影にかじりついていたが、意を決したのか勢いよくこちらへ足を踏み出した。

時節転びそうになりながらも小さな足は一歩一歩と前へ歩を進める。人の波を何とか躱した少女はそのまま出迎えた夜乃の背中側から、膝へと飛び込んだ。

「あ…あの!」

膝にしがみついたまま後ろからひょこっと顔を出して、少女は言葉を続ける。


「探してくれて、あ…ありがとうございます!」


陽子と白はその言葉に照れ臭そうに笑った。



ー2ー


こうして4人での縁日回りは緩やかに始まった。少女は自分の財布から母に貰った軍資金を取り出し、夜乃達に手渡した。どうやら天照から引率代として渡すように言われていたらしい。それでも夜乃は受け取りを渋ったが、どこからともなく聞こえた「気にしないで」という声を受け、渋々それに手をつけた。


突然であるが、彼女達は縁日荒らしの常習犯(プロ)である。手早く金魚とヨーヨーを攻めると、次の瞬間容器の中から全てのものが消え去った。

唖然とする店員を尻目に次は型抜きへと進んでいく。陽子は手先が異様に器用である。

一方、夜乃は次の店を品定めしていた。金魚掬いのポイは適切な強度か?くじ引きに不正はないか?射的の的は床にくっついていないか?客と店員の会話、実施の様子、全てのものに感覚を研ぎ澄ませ、陽子を次の店へと誘導する。


彼女らはハイエナの如き目で祭りの雰囲気を支配する。屋台を出す者は皆、彼女らが屋台の前に来るのを震え恐怖して待っている。

しかし、そんな彼女らの行進を、小さな指が果たして止めた。

「由香里ちゃん?どうかした?」

「お姉さん…私、あれやってみたい。」

少女はくじ引きを指さしていた。夜乃は思わず顔をしかめた。

あの屋台は当たりくじを店頭に出していない。定期的に当たりくじを混ぜて、自分で引いて当たることをアピールする、そんなところだ。


だが、しかしである。少女がやってみたいと言うのである。別に当てねばならないわけでもない。小さい時はくじを引いたというそれ自体が大事なことなのだ。そして、当たらないという経験をもとに人は成長するのである。

「いいよ。行ってみようか。」

「うん!!」

少女の顔はパッと明るくなった。この顔が少し曇るとなると申し訳ない気分にもなる。


店先で少女は硬貨3枚を店員に渡した。夜乃はその様子を少し離れたところから見ていた。

この屋台では紙のくじ引きを実施していた。束の中から紙を選び、それをめくる。数字が小さいほど当たりになるという寸法だ。

少女がいよいよと、前のめりに紙束を見つめる。店員がニヤリとしながらそれを見つめる。夜乃がその様子を見守る。空気が張り詰める。場を緊迫が支配する。


次の瞬間だった。


店員の右手から、ひらひら下へと、一枚の紙が零れ落ちた。白い小さな腕は導かれるようにそこへと伸びていった。

どこかでナニカが微笑んだ。




ハイエナ達は運すらも味方につけた。






ー3ー


「危険すぎるからこれ以上はやめよう。」

ゲーム機の箱を持ちながら、夜乃はそう提案した。

「おいおい、まだまだ行けるだろ?悪質な店、全部潰してやろうぜ。」

陽子は意気揚々と歩く少女の手を引きながら、そう言った。

「別に良いけど…。このまま行くと、来年祭りが出来ないかもよ。」

「それはまずいな。やめておこう。」

屋台出店の危機はなんとか回避された。

「お母さん、喜んでくれるかな?」

「大丈夫だろ。あそこで意気消沈してる店員の分も喜んでくれるさ。」

「……どうやって取ったかは言わないでおこうね。」

夜乃は呆れ顔でそう言う。


さて、もうこれ以上買うものもない。

ここの祭りは花火が上がるような大きなものではないので、これ以上ここにいる意味もないだろう。

戦利品を確認する時間も欲しい。

そろそろ解散しようか。

夜乃がそう言おうと口を開いた、その時だった。




言葉にできない謎の不快感が急に4人を襲った。




白と陽子は即座に警戒体制をとる。

夜乃は怯える少女をそっとこちらに抱き寄せた。

何かが来る。

だが、それと言って目立つ人はいない。

人ごみの中で誰がそれを発しているのかがわからない。

誰だ?

何者だ?


いや、


ナニだ?








「なんだ…もう助かっちゃったんだ。」





夜乃の耳にそれは聞こえた。

即座にその声の方向を振り返る。



黒く短い髪。どこか陰湿そうな後ろ姿。



夜乃はそれを見かけたことがあった。






「箱庭…さん……?」





彼女は学校のクラスメイト。成績は夜乃に次いで2番目。だが、そのことに誰も触れないほど影が薄い。

そして…







神隠しの被害者の一人だった。

夜乃の頭にいくつもの考えが巡る。

何をしにきた?なぜここにいる?少女の顔を知っている?わざわざこちらを確認しにきた?


まさか、神隠しの真相に気づいていた?




「ちっ、消えやがった。何者だったんだ?今のは」

「分かりません。しかし、気配は消えましたね、夜乃」

ふいに呼びかけられて、慌てて思考を中止する。

「え、あ、ああ…そうなんだ。ありがとう。」

「ん?なんかあったのか?」

「え?いや、別に。」

何故か答えをはぐらかしてしまった。特に言う必要がないからか?いや違う。

「お、お姉ちゃん。く、くるしいよお。」

「ふぇ?ああ!ごめんごめん。」

いつの間にか少女を抱く腕に力が入っていたようだ。

白と陽子は何か感じたようだが、特にそれを追求することはなかった。




箱庭 幸子


なぜかその名前が強く頭に残っていた。

箱庭 幸子については、4-11話で名前が出てきてます。

彼女の正体は如何に?

4話は後1つで終了です。

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