4話-22 闇を抜けて
…いつぶりでしょうか?言い訳はTwitterでします。orz
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体は強張って上手く動かなかった。
それは恐怖ゆえだろうか?恐らく違う。これはもっと原始的なものだ。恐怖に結びつく前の段階だ。
単純に驚いているのだ。
初めて見た。
今まで涼しい顔で敵をいなしてきた始祖が、
常に余裕を保っていた先生が、
追い詰められているのだ。
次に湧いてきたのは興味であった。
何が彼女をここまで追い詰めたのだろう。
夜乃はそっと傍から景色の向こう側を覗き見ようとする。幸いなのか不幸なのか、その原因はすぐにでも突き止めることができた。
自分には手も届かないほどの遥か上空から、
眩いばかりの太陽を背中に背負い、
どこか気怠げな雰囲気を出しながらも鋭い視線を始祖に向かって投げかける、
煌びやかな和服を身に纏う女性を。
『…ん?目が覚めたようじゃな、人の子よ。』
不意に目が合う。
蛇に睨まれた蛙。獅子に目をつけられた兎。
体はピクリとも動かない。
『して、汝らに問おう。』
女性は静かに、しかし突き刺すような怒りでもって言葉を続けた。
『何故我が神域を侵す。妾を何と心得るか。』
その低い声は、重く辺りに響き渡った。
女性は遥か上空から夜乃たちを見下ろしていた。突き落とされる視線は、追い討ちをかけるが如く夜乃の体を縛りつける。
「耳を貸すんじゃない、夜乃!早くそこから離れるんだ!」
始祖が必死に語りかけてくるが、その声は夜乃には届かない。
これは夜乃に習慣づいた癖のようなものだ。危機に陥った時、必死に頭を回して挽回策を探ろうとする。
止まらない。
ーあの人は何者だろうか。ここは『神隠し』の中ではなかったのか。
思考は回る。
ー神域とは何だ。なぜ先生がこうも容易く押されているのか。
夜乃にとって不幸だったのは、それが余りにも簡単な問いだったことだ。
辺りを夜にしてしまうはずの始祖がいるにも関わらず、燦然と煌めく「太陽」。始祖を圧倒するほどの力。「神」隠しと「神」域。女性……
「天照っ……!!」
言葉が漏れ出た。口を押さえる事もできなかった。
ー7ー
勝てない。相手は日本で最上位の神だ。いくら先生でも、始祖でも勝てない。
先生は自分に逃げろと言った。足止めをするということだろうか?それが何を意味するのか?それを思うと、もはや夜乃からは何の言葉も出なかった。
「…安心しなよ、夜乃。」
そんな彼女に吸血鬼は優しい声で語りかける。
「死ぬつもりはないさ。ちゃんと奥の手を隠してある。ただ威力がとてつもなく大きくてね、最悪君を巻き込みかねないのさ。」
その言葉に嘘はない。ただ真実でもない。
宙に浮く神の視線は、一瞬の挙動すら見逃さんとするかの如く始祖の体に突き刺さっている。そんな相手に奥の手はそもそも当たるのだろうか。
両者は睨み合う。そこに息つく暇はない。
不利は始祖の方だ。彼女から出てくる灰色の煙は確実に彼女の体力を削っていた。
始祖は奥の手のタイミングを測っている。だが、神はそんな彼女から注意を逸らさない。
隙を作らねばならない。
誰かが神の注意を逸らさねばならない。
誰が?
私しかいない。
だが、どうやって?
………
わからない。
しかし、やらねばならない。
神が注目を向けるものは何だ。何をすれば彼女の狙いは逸れる。
この視線を別の方向へ向けさせるためには…
夜乃はある考えに思い至った。
なぜ彼女がこの場にいないのか?私をここに連れてきた彼女はなぜまだ姿を現さない?
いや、理由などどうでも良い。
これしかない。
夜乃は即座に右へと視線を向けた。
「由香里ちゃん!!」
そして、ありったけの声でそう叫んだ。




