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4話-21 夜を越えて

ー4ー




白い空間にぽつんと1人立っている。


手足の感覚が薄い。自分が浮かんでいるような錯覚にさえ陥る。




ここは何処だろうか。




私は辺りを見渡した。


景色は均一に真っ白だ。自分が立っている地面すら、透き通るように白くて薄い。光の中はきっとこんな感じに見えるのだろう。

自分がどこを向いているのかさえ定かではない。


私はどこへ向えば良い?



どこに向かって歩いていけば良い?










ふと、右手に仄かな温かみを感じた。



それは私の手を引き、前へと進もうとしている。


私は流されるままにその手の方へ足を向けた。



それは駆けるように上下へ振れ、私はそれに小走りでついていく。



走る。駆ける。



走る。駆ける。




時節、躓くように倒れるそれを私は手で支えた。




走る。駆ける。




走る。駆ける。




辺りは夜明け直後の朝のように、徐々にその光を強くしていった。



それは止まらず走り続ける。



止まることを知らない無邪気な子供のように、



後ろなど一切顧みず、



強い光の方へ向かって。

 




この光を抜ければ、いつの日か見たあの『神隠し』の世界に辿り着くのだろう。


その時、私はまた気絶してしまうかもしれない。





その前に伝えておこう。


私はそれに話しかけるように口を開いた。




「あのね、由香里ちゃん!」




右手から少女の動揺が伝わる。


だが、足は止まらない。


光は一層強くなる。


手から伝わる熱の鼓動は、全身を巡って心まで行き渡る。




「また!会いにきたよ!」




その声は心を伝って白い世界に響いていく。



その言葉に応えるように、最後の一歩は思い切りよく踏み切られる。









瞬間、視界に真っ青な空が広がった。



若干の浮遊感。

それから落ちていく体とともに、重くなる目蓋と沈む意識。


右手にあった感触は消え、雲一つない大空だけが視覚を通じて全ての感覚を支配した。




そして、私は実感した。




そうだ。私は、




多くの謎を、





様々な困難を、










幾たびの夜を超えてきたんだ。








ー5ー


鼻につく焦げ付いた匂い。

次に私の目を覚まさせたのは、それであった。

どうやら私はまた気絶していたらしい。


しかし、何故だろう。日常的に慣れないはずのそんな匂いから、



どこか懐かしさに似たノスタルジーを感じるのは。  




「…ん?やあ、夜乃。目覚めたようだね。」


次に聞こえてきたのは先生の声だった。

どうやら近くにいるらしい。ささやかな日の光とともに、緊張で固まった体が解れていくのを夜乃は感じた。


「先生…。何とか上手く入れたようですね。」


そう言って、寝惚け眼を擦りながらゆっくりと姿勢を起こそうとする。

だが、次の瞬間。




強烈な焦燥感が夜乃の身を襲った。





「ははは、どうやらそのようだね。」


彼女の言葉遣いは普段通りの淡々としたものだ。だが、それでは隠せないほどの鬼気迫る思いが彼女の声から滲み出ていた。


「本当なら君の推理が正しかったことを君と一緒に喜びたいところなんだけどね。残念ながら、今はそんな余裕がなくてさ。」


すぐにでも気づけたはずだ。肉の焦げるような匂いなど、あの時しかなかったではないか。

真夜中の、

誰もいないような暗がりで、

私が先生と出会った、



ーーあの時しか。




「一度しか言わないからよく聞いてくれ。返答の必要はない。聞こえたら即実行しろ。良いね?」



私は理性の拒絶を振り切って、目蓋を押し上げる。



その時、目に飛び込んできたのは…





「せん…せ……

「今すぐ後ろに向かって走れ!なるべく僕の背に隠れながら!とにかくここを離れるんだ!夜乃!!」






体から灰色の煙を上げている先生の姿だった。











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