4話-15 行方不明事件
な…7月中に書き上げたからセーフ(( ;゜Д゜)
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『例外』のないルールはない。ありとあらゆる規則には例外なく『例外』が存在する。それが何故かと言われれば、規則とはその『内容』に意味があるのでなく、その中身を定めた『意図』に意味があるからだ。故にその者の意図しないことが起こった場合、優先されるのはその『内容』ではなく『意図』である。そうやって規則に『例外』が生まれるのだ。
もちろん中にはその規則の重さ故に『内容』を重視せざるを得ないものもある。そういった場合には規則の中に『例外』を作るのだが、ここでは関係ないので放っておこう。
すなわち何が言いたいかと言えば、『例外』にはその規則の『意図』が反映されているということだ。『例外』を見れば規則の『意図』が分かり、同時にルール製作者の『人格』が掴める。
だからこそ、ここなのだ。ここ1年に事件が頻発している中、そこから外れた『2年前』の事件。皆が生還している中で唯一の『行方不明者』。全てが『例外』。だからこそ、あらゆる『意図』がこの事件に詰まっている。
今までの推測は正しかったのか。
少女は何故『神隠し』を行うのか。
そして…
「お母さん」とは誰なのか。
全てはこの調査に託された。
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「ここが…例のアパートですか……。」
白が驚嘆の声をあげる。だが、そこには困惑の意味が強いのだろう。
それほどまでにこのアパートには生活感がなかった。ベランダに洗濯物らしきものもなく、もう廃墟になっているのかもしれない。
「神野 由香里って子がここに住んでたんだっけ?」
「そのはずなんだけど…」
それと同時に半壊したガラス窓が風に煽られカタカタと音を立てる。その様子に夜乃も言葉を詰まらせた。
捜査資料には、彼女の情報についてこのアパートに住んでいたという情報しか載っていない。だが、誰もいないのでは調査も何もない。ボロボロの家屋を尻目に夜乃は来た道を引き返そうかとさえ考えた。
しかし、その時である。
ギィィィという甲高い…明らかに耳に悪そうな音とともに錆び付いた玄関の扉がゆっくりと開いた。出てきたのは70歳ぐらいの老人。アパートに比べると少し小綺麗な印象を受けた。
「居住希望かい?」
最初、夜乃達を見た老人は形式的にそう言ったが、
「…そんな訳ないか。」
と、すぐにその言葉を訂正した。
笑えば良いのでしょうか、と白は視線で尋ねる。夜乃は首を横に振った。さしもの陽子も口を出さない。
「まあ、汚いところだけどね。お茶の一杯ぐらいなら出せるよ。」
一方の彼は夜乃達の沈黙を気にすることなく、扉をさらに大きく開き夜乃達を手招いた。そして、来るならこいとでも言うようにそのまま奥へと下がっていった。
「ついていくんですか?」
「…行く以外の選択肢がないんだよね。」
そう言って夜乃もまた…非常に残念そうな顔をしながら、後を追うように扉の中へと入っていった。
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ついて行った先はアパートの管理人室であった。
部屋の中はボロボロの外見とは裏腹に清潔さを保っていた。物はほとんどなく、申し訳程度にテレビと机が置かれている。ここは仮拠点のようなものらしい。
夜乃達は連れられるがままに中央の机を囲む。老人は部屋の奥からコップと麦茶を持ってくると、丁寧な所作でその上に配置した。
「あ、すみません…わざわざ。」
「あったから持ってきただけだよ。礼を言われることじゃない。」
そう言って、彼はそっとコップに口をつけた。コップの模様がキャラものだったことに気づいたが、指摘しても面倒なので見なかったことにした。
それより、どうやって話をしようか。突然『神隠し』の話をしても、おそらく真剣に受け取ってくれないだろう。
とりあえず遠回しに話を切り出そう。
「あの…」
夜乃は老人がコップを置くのを見てから、口を開いた。
「由香里ちゃんの話だろう?」
だが、彼は夜乃の遠回りを許さなかった。
「…分かってたんですか?」
「つい1ヶ月前にも同じことがあってね。その時彼に、高校生ぐらいの女子が訪ねてくるだろうから話をしてやってくれって頼まれたんだよ。」
おそらく依頼主のことだ。事前に話を通してくれていたのだろう。道理ですんなり通してくれたはずだ。
「それで?何が聞きたいんだい?」
老人は快く…というほどでもないが、敵視するわけでもなくこちらに尋ねかけた。
どうやらある程度好意的に接してくれるらしい。
ならば…
「それじゃあ、まず…」
「由香里ちゃんの行方不明事件はどうなったんでしょうか?」
夜乃は最初に核心をついた。白と陽子の顔が凍りつく。目の前の老人も、目を大きく見開いていた。
確かに普通なら何個かクッションを置いてから話すべきだろう。だが、ここまで情報を見透かせれているならば、下手に話を迂回させても意味がない。最初から思惑がバレているのなら、初手で聞きたいことを聞いた方が良いのだ。
「君は随分、大胆な性格のようだね。」
「聞きたいことは先に聞きたいだけです。」
「…そうかい。」
夜乃の言葉に対し、老人は笑みを見せた。感触は悪くなかったようだ。
「それで、事件はどうなったかだったっけ?」
「はい。」
夜乃は少し食い気味に答える。今まではあくまで学生の範囲内で出来る調査であった。だが、行方不明事件となれば、警察が動く。新聞も事件について書き立てるだろう。学生ではできない大規模な捜査だ。その捜査の片鱗だけでも得られれば、それはきっと今まで以上に重要な情報となるだろう。
夜乃はこの答えに大きな期待を寄せていた。この調査で結論が出るとまで考えていた。
そう、だからこそ…
「そうだなあ…その質問の答えは、」
「質問の前提自体が間違っているってところかな。」
その返答は夜乃の予想に反していた。
「…質問の前提が、間違っている?」
「ああ、そもそもその質問はおかしいんだよ。なぜなら…」
「事件なんて元から存在していないんだから。」




