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4話-13 …君達すっかり仲良しだね

ー13ー


土曜日の午前9時。休日の解放感から来る気の緩みに、ついつい惰眠を貪りたくなる時間帯。だが皆そろって真面目なのか、待ち合わせ場所に来た頃には眠たげな様子もなく意識もはっきりとさせていた…


…約1名を除いて。

「絶対おかしい。別に昼から集合でよかっただろ。」

未だ眠気に押されている陽子が眼を擦りながらそう言った。

「そうしたら陽子、昼まで寝てるでしょ。休日も規則正しく生活しなきゃ。それに今日は隣町まで行くんだからさ。」

「いやいや、こんな早い時間に行っても起きてないかもしれないぜ。」

陽子はさも当然のようにそう言う。

隣町の目的地に着くのはおよそ30分後。つまり、陽子は9時半なんてまだ寝ている時間だと明言したわけだ。

「…大丈夫。今から取材しに行く子の親にアポとってあるから。」

夜乃は呆れた表情でそう言い返した。


「あ、あの…」

と、ここでこれまで黙って会話を見守っていた白がとうとう声をあげた。

「ん?あっ、そっか。紹介まだだったね。」

ごめんごめん、と手を合わせて謝る夜乃。一方の白は、少し俯きながらどこかソワソワしていた。案外人見知りするタイプなのかもしれない。

「じゃあ紹介するね。この子は白。吸血鬼の森で番人してた子で、今日はボディーガードとして付いてきてもらったの。」

夜乃は白が異形であることを一部ぼかしてそう言った。

「ああ、森に行った時に会ったことあるな。」

だが、陽子は既に知っていたようだ。言われてみれば森に駆けつけたあの日、森の入り口で顔を見合わせていた気がする。

一方で、陽子の言葉に白はびくっと背筋を震わせた。

「そ、その節は誠に申し訳ありませんでした…!」

妙に丁寧な姿勢で陽子に謝罪する白。

「別に良いって。今は気にしてないから。」

陽子はその謝罪の言葉に笑顔で答えた。そして、その様子から自分があの場に行く前に一悶着あったのだろうなと夜乃は察した。

「ですが…」

「まあまあ、陽子もああ言ってるんだし。大丈夫だよ。陽子って器大きいから。」

夜乃も即座にフォローに入る。

「いや、しかし…」

だが白はまだどこか躊躇われるのか、依然俯いた様子で言葉を続けた。


「危うく矢で殺しかけてしまったので…。」


「それは器が大きすぎるんじゃない⁉︎」

衝撃の事実に思わず陽子の方を振り返る。

「え?でも、ライトの奴が悪いわけだしなあ。私も死んでないし。」

陽子はあっけらかんとそう言った。ここまで来れば器が大きいというより馬鹿の要素の方が強いかもしれない。

白が言動を躊躇うのも当然だ。

これは馴染めるまで時間がかかるだろう。


この2人を引き合わせるのは早急だったかと夜乃は1人頭をかかえた…





…はずだったのだが。


「その時、夜乃が突撃命令を出してさ。隠れてた伏兵で敵が一網打尽になった訳だ。」

「さ…さすが夜乃…!」

アイスブレイクはあまりに短かった。陽子の人たらし能力は見ない間に、もはや異形レベルに達していたらしい。

「そんでさ。その時の決め台詞がまた…っ、凄くてさ…っっ!」

「何ですか⁉︎私、凄く気になります!」

話は盛り上がり、展開があらぬ方向へと進んでいく。


「あ!ダメっ!!それだけはやめてえええ!!!」



黒歴史暴露を阻止するための夜乃の悲鳴が木霊した。




ー14ー


そんなこんなと騒ぎがありながらも、夜乃達は目的地に向かって歩き始めた。

今後のことも考えて白と陽子とをこの機会に会わせておこう。そう考えて白を連れてきたは良いが、しかし2人の性格が合わずギクシャクしてしまう危険性もあった。

もしかしたら上手くいかないかもしれない。

そんな不安も抱えながらの今回の遠征であったのだが…



「そういや、来週辺りにここらででっかい祭りがあるんだけどよ。」

「へー、いいですね。ぜひ一度行ってみたいです。」

…どうやら杞憂だったらしい。

それどころか2人は早速、外出計画を立てていた。もはや彼女達を数年来の友人といっても疑うものはいないだろう。

「…君達すっかり仲良しだね。」

夜乃の乾いた笑いが微かに響く。それに呼応するように2人は笑い声をあげた。


来週の祭りというのは、「七大祭り」のことだろう。周辺地区の神社が合同でやっているもので、子供の頃は陽子と一緒に自転車で各神社の祭りを巡ったりしたものだ。最近は近くの河北神社に行くだけに留まっていたが、久しぶりに白を連れて遠出しても良いかもしれない。


そうして、夜乃達は雑談を交えながら目的地までの道のりを歩いていった。30分と聞くと長く感じるかもしれないが、会話するとなると短く感じるものである。

「…何かこの辺、見たことある気がすんだよなあ。」

すると、目的地も間近というところで陽子がふとそう呟いた。

「見たことあるって…隣の地区だから見たことあるに決まってるでしょ。」

「いや、そういうんじゃないんだけどな…。まあいいや。気のせいだろ、多分。」

そう言うと、陽子は手をパパッと振って一方的に会話を打ち切った。

夜乃も追求しようとする素振りを見せたが、前方を見てその手を止めた。


時間というものは、本当に自分の思っている以上に早く過ぎていくものだ。

少し遅れて2人も気付き、その場で足を止めた。




一方の夜乃はそのままの足取りでインターホンに手を伸ばした。

推理編もようやく中盤に…4話長くない?

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