3話-11 また来る夜に
3話-0の続きになる部分です。時間に余裕がある場合、先に3話-0を読むことをオススメします。
彼、彼女にとっての激動の1日が終わり、迎えた明くる日の夜。
白はいつしか日課となっていた屋敷の掃除をしながら、例の書斎で始祖に尋ねた。
「あれが貴方が予想した結末だったんですか?」
一連の吸血鬼事件について。彼らが選んだ結末に対しての問いに、始祖は読書を中断して答えた。
「別に予想していたわけじゃないさ。ただ、僕はこう在るべきと思っただけだよ。」
「こう在るべき、とは?」
白がもう一度尋ねる。
「人が、いや生物が歩むべき道ってやつかな。」
彼女はそう言った。
彼女は人や生物の呼称に、決して「僕ら」という代名詞は使わない。
自ら距離を置くような言動。
しかし、白は彼女の視線がどことなく羨望を表しているように見えた。
自分から突き放しておいて、裏でその疎外感に悲しむ。
矛盾したその言動に、白は手を差し伸べようとしたが、
その言葉は口から出なかった。
「ですが、狼男の方は未だに昔の恩人のことを忘れていないようですよ。」
代わりに白はそう返事を返す。
始祖は言った。生物は常に明日を見据えて歩むべきだと。
ならば、過去を振り返ってはならないのではないか。
白はそんな言外の意味を視線で伝えた。
「うーん…そうだなあ。」
一方の始祖は少し困ったような表情を見せたが、
「でも、それで良いんだよ。間違ってない。」
すぐに結論を出した。
「人を形作るのは歴史だよ。過去と一切を切り離して生きられるものはいないさ。むしろ、彼は今が一番安定してるんじゃないかな。」
「安定…ですか。」
実感の湧かない言葉に、白はそう聞き返す。
始祖は笑みを浮かべながら、言葉を続けた。
「そうさ。過去は生の目標だ。今の彼には生きる目的がある。前を向ける程度に過去を背負えてる。今の君みたいにね。」
「え?私ですか?」
自分もそうだと言われて、白は思わず動揺した。
今まで実感のなかったことである。無理もない。
始祖はそれを理解し、諭すように言った。
「君にだって、守護という歴史があり、夜乃に助けてもらった過去があったから、こうしているんだろう。夜乃もそうさ。そして…」
「きっと僕もね。」
最後の言葉に、白は最初驚いた。
彼女は優しく微笑んだ。
それを見て、白もまた笑った。
自分もまた生物であると、私たちの仲間であると始祖が言ったことに安堵した。
たとえ今は場の空気を読んだ発言だったとしても、
いずれ本心から出させてみせよう。
そう決意を固め、彼女は部屋を後にした。
一方でそれを見送った始祖は、中断していた読書に戻ろうと本に手を伸ばした。
しかしその途中で偶然何かが手に当たった。ひらひらと宙を舞った一枚の紙。
いつからそこにあったのか、ゆったりと地面に落ちて行くその紙に彼女は視線を移す。
そして、彼女はその紙を拾い上げ内容を確認した。
彼女は暫し一考した後、1人口を開いた。
「そろそろ、夜乃に頼むかな。」
何処かで一つ、くしゃみが鳴いた。
3話終わり!4話に続く。
(ただ、先に前作の続編を書くかもしれません。詳しくはTwitterにて)




