自称冒険家の父親が勇者だと今さっき知りましたが、王女攫ったらしいのでちょっと〆てきます。
リハビリ作です。
推敲…ちゃんと出来てるかなぁ…
──私の父さんは冒険家だ。
少なくとも私の中ではそういうことになっていた。
私の家には不思議な剣や盾、民族的な模様を奇抜な色の糸で刺繍した布、木で作られた如何にも“夜、動きますよ?”って雰囲気を醸し出している人形…etcが飾ってある。
──父さん曰く、俺の冒険の証、だそうだ。
父さんが糊の効いたパリッとしたスーツを着て何処かへ行く所を生まれてこの16年間、1度たりとも見た事がないので、普通の職業に就いている訳では無い事は10歳くらいの時に既に察してはいた。
しかし、剽軽である父さんのことだから、実は考古学者であり、古代にロマンを求めて世界中を回っている、という真実を、私に面白可笑しく法螺を交ぜながら伝えた結果、インディー某的に、私の記憶の中に父=冒険家という方程式が染み付いたのだろうと、
十中八九そうであろうと思っていた。
──さっきまではね?
「2代目よ?聞いておるか?」
つい1時間ほど前、学校へ行こうとチャリキー片手に玄関のドアを潜ると、そこは異世界でした。
…いや、私がいちばん混乱してるからね?
そんで、すぐ目の前に金ピカな王冠と鋭い目つき、猛々しい雰囲気を纏った筋肉ムキムキマッチョマンな王様。
白髪混じりの金髪は短く切りそろえられていて、肌触りの良さそうな服の上から見てもわかる、主張の激しい筋肉。
80年代のシュ〇ちゃんかよ…ってなるくらいにはムキムキだからな?
混乱に混乱が重なって一周回って落ち着いたわ畜生め。
んで、話を聞いてみると、
うちの父さんは勇者で、17年前に世界を救って自力で地球に帰還。
帰還後も帰還に使った魔法の道具で度々こっちに来て遺跡やらの探索して変な物を見つけて帰るなんて事をしていたようだ。
…あれ?父よ。それってニートなのではないか?
──まあ、うん。それは置いておこう。置いといちゃまずい気もするが。
私は別の所にツッコミを入れてやりたいのだよ。
召喚だよ!?異世界召喚!?
神々しいエフェクトとずっしりとしたBGMが聴こえてきそうな魔法陣とか無いの!?
某猫型マシンの便利なドアだってもうちょっと演出凝ってるぞ!?
「おーい?聞いておるか?
目が死んでおるぞ?」
アッ、しまった。
回想しててなんにも聞いてなかった…
「ん、あー、魔王の討伐でしたっけ?
申し訳ありません、私、非力な一女校生でありまして…本件は辞退させて頂きたく…」
そんなことより父さんだよ父さん。
何異世界で勇者してるんだよ…道理で偶に剣と盾と一緒に行方不明になるわけだよ…
「…はぁ…やっぱり親子だなこれは…
人の話全く聞かねえんだから…」
「へっ?」
違うの?復活の魔王を倒せ!はい、檜の棒あげるよ!とかじゃないの?
てか喋り方変わったぞ?こっちが素か?
「これで最後だぞ?
お前の!親父を!ここに!連れ戻してくれ!つったんだよ!!」
うおぅ、怒鳴るな王様。
折角のナイスミドルが台無しだぞっ✩
…自分でやっててあれだが腹が立ったわ。
…そういや最近父さんに会ってないな。
連れ戻せ?ってことはこっちにいるって事なのか。
あれ、そういえば母さんが父さんの心配してた所見たことないな。
…色々知ってるんなら教えといてくれたって良いじゃん…
王様の怒りようから察するに、またとんでもない面倒事を起こしたんだろう。
「まァたなんか考えてんな?
おーい、話聞いてっか?」
「あー、すいません。
昔から考え事始めてるとどうにもトリップしちゃいまして…」
そう答えると王様は頭痛でも起こしたかのように額に手を当て、
「癖まで似てるのかよ…」
と呟いた。
「へっ?」
「あ、いや雰囲気というか、だな?
なんというか全体的に女体化したあいつだな…お前は。」
私には昔から、考え事をする時は腕を組み、右手の親指と人差し指で顎を撫でる癖がある。
王様の反応を見る限り、父さんからも同じ様な癖があるらしい。
……なんか微妙な雰囲気が漂ってきて気まずい。
深呼吸をして、ついでにこの小一時間で溜まった色々なあれこれを脳内で整理する。
んむ、段々と落ち着いてきた。
思考がクリアになってくる感覚は個人的に好ましい。冷静な対処、大事。うん。
…アレ?これ時間軸どうなってんだろうか。
地球と同じ速さで時間が進んでいるんだとしたら、あと15分程度で遅刻を食らう。
それは避けたいのだ。なんとしても。
善良且つ、模範的一般生徒として皆勤賞は当然目指すべき勲章だと思っていr、ん?異世界に召喚されてる時点で模範にしたくないし、一般じゃない?逸般?黙らっしゃい。
いやぁ…でもわざわざなんにも知らない只の小娘を呼んでまで父さんを連れ戻したいのだ。
こりゃ15分以内に片付く案件じゃないんだろうなぁ。
ほんとに勘弁して欲しいと思いながら、元凶の犯行について尋ねてみる。
「…やっぱり、何かやらかしてます?」
「とんでもねえ事して行きやがったよ、娘だろ?呼ばれたって事から、何となく察してるんじゃねえの?」
今度は何やらかしたんだ、父さんや…
…睡眠妨害してきた暴走族を全員取っ捕まえ、警察署前に暴走族製のえげつない人間オブジェ作って、翌日のニュースになってたのをゲラゲラ腹抱えて笑ったり、喧嘩の仲介入ったと思ったら、喧嘩はなァ!両成敗なんだよォォィ!とか叫びながら昇〇拳
を両人にクリティカルストライクしたせいで、危うくお縄につきかけたり…どうしよう!?絶対ろくな事してないよこれ!!?
「…とんでもない事?宝物庫から盗みを働いた…とか?」
「その程度だったら今更そんなに腹立たねえわ。」
その程度!?おぉう…今更って事は、宝物庫には度々侵入してるんかい…
しかし、宝より大事なもの…?
ふと王様の顔をちらりと見ると表情筋がヒクヒクとしていて、まさに悪鬼羅刹の如き表情をしている。
ふぇぇ…父さん死ぬ…これ、父さん連れ帰ったらとんでもない死に方する…
あ、こっち見た…“断ったら、分かるな?”って目が言ってる…ひぇぇ…
──腹くくるか。
こりゃ断ったらろくな目に遭わない。
いやまぁ、断らなくてもろくな目に遭わないんだが。
意を決して尋ねてみる。
「で、なにしたんですか?」
「王女誘拐だ。」
おーう、ノータイムの返とu…
──What?、、、はっ?
……ん?ええっと…えっ?
あ〜、ぷりーずわんもあせい?
「王女誘拐だっ!!」
「・・・」
──大きく息を吸って、すぅぅぅ…
「はあぁぁぁぁぁぁ!!?!」
多分、今月いちばん大きな声で叫んだ。
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【2代目勇者伝説について】
著,王宮研究家 ウェルヴ=シュタイン
記述自体が多くない2代目勇者だが、記述が少ない原因はその特殊性にあった。
初代勇者は魔王討伐を掲げ、世界の平和的シンボルとして人々に崇められた人物であるのに対し、2代目は、姿を消した初代を探し出す為に第5代トリゥース国王、マスラ=ヲゥ=トリゥースが秘密裏に召喚した人物であったそうだ。
2代目は初代と違い、冷静で理知的な女性と伝えられているが、このような記実が王国の書庫で発見されていないのは、記録媒体に残したくない、何らかの原因があったからとされている。
では、どのようにしてこのような記実が後世に伝わったか、それは幾つかの村に伝わる伝承やわらべ歌等の民俗的文化にある。
【中略】
という点から、2代目は初代を超えるスペックを持ち、尚且つ各地で世直しに近い行為を繰り返す、正義感の象徴のような女性であったのだ。
…なんだこれは。
私はただ、喧嘩の仲裁で勢い余って両成敗しちゃったり、我儘王女に振り回されてた父さんを影でニヤニヤと眺めていただけなのに…
どうしてこうなった!!?!
主人公
なんやかんやと冒険をして時空魔法を取得。
なんとなく気になって後世の自分についての本を魔法で召喚したら、予想以上に恥ずかしくて赤面。
冒険の後、しっかりと15分前には着席を果たせたらしい。
父さん
実は異世界のキャバクラで遊んでいた所をアグレッシブ王女様に写真の撮れる魔法具で写真を撮られていた為、泣く泣く世界中の観光名所巡りをさせられていたらしい。
馬鹿め、そういうことをするから痛い目を見るのだ。
王女様
真の黒幕。
王室での勉強が嫌になり、お忍びで城下に出てみたら、コソコソしている怪しい勇者を発見。女遊びの決定的瞬間を捉え、言いなりにすることに成功した。
主人公と一悶着あり、お姉様と呼ぶようになる。しかし、主人公を見る目がかなり怪しいので心配だ。(主に貞操が)
母さん
実は王様の妹。
あらあら系だが怒ると世界を冗談抜きで破壊できる力を持つ。
その力を欲した魔王に身体を狙われていたが、父さんに救われそのままゴールイン。
嫌いなものは浮気。ヤンデレが少々入っているようだが…よくキャバクラなんて行こうと思ったな、父よ。