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2.1 我の決意
御主人は我に大層な財産を遺したそうだ。
その所為で我の周りが些かごたついている。
だが、正直興味なし。我には不要な長物だ。
どうせなら我が忠実なる下僕にくれてやろうと思っていたが、どうやら下僕は要らぬらしい。
ならば欲しい奴に暮れてやる。好きにしろ。
我は老いぼれ。もう長くない。我が命はいずれ大地に還る。
抵抗しない。足掻く気もない。それが自然の摂理。大地の意思。
大人しく運命を受け入よう。
……だが、事情が変わった。
我が忠実なる下僕が死んだ。いや殺された。
十中八九、御主人の遺産の所為だ。
許さぬ。決して許さぬ。
尻尾を丸めて助けを懇願しようが、腹を見せて服従しようが容赦はしない。
丸めた尾を切り取り、見せた腹を八つ裂きに、内臓を引き摺り出しばら撒いてカラスの餌にしてくれよう。
必ず報いを受けさせる。幸い、協力者も見つかった。
余り有能な者ではないようだが、居ないよりましだ。
意思疎通が課題だが、いずれ何とかなるだろう。
だから大地よ。もう少しだけそなたを踏み締めることを許したまえ。
かの痴れ者を裁く、その日まで。