関西人とチーター事情
目を開けるとまずきずいたのは
「ユーリスが.....いねぇ.....。」
もしかして。と思いシステムコンソールのフレンドタグを見る。
「まだフレンドのままだ....。」
まぁ、情報は得られたわけだし、そこまで執着する必要もないだろう。
それに街の中心がなぜか騒がしい。
「あれ?あいつ.....。」
俺はいま沢山のプレイヤーに囲まれている一人のプレイヤーの情報をみた。
「クシニダ......あいつ、テスターの一人じゃねぇか。」
そう、奴は120人いたテスターの一人。どうやらテスターのみが付与されたスキルについてもめているらしい。
「こいつテスターだぞ!。」
「くそ!お前みたいな奴だけ得しやがってよ!。」
「へっ!。テスターに選ばれなかったお前らが悪いんだろうが。」
クシニダというプレイヤーは自分からテスターであることを明かしていたようだ。
「これは逃げたほうがよさそうだな。」
きっとあのプレイヤー達は、ゲームを有利に進めることができるテスターに対して嫉妬しているのだろう。顔は覚えられてはないだろうが、一応テスターである俺に飛び火がくるかも知れない。
「うっ......ちくしょうぉぉぉぉぉぉぉ!!。」
後ろで断末魔が聞こえた。
「うそ.....だろ.....?。」
俺はVRRPGゲーム中に初めてPKというのを見た。
「ここにいたらやばい.....!。」
俺は直感的に町を抜け出し誰もいない路地裏へと入り込む。
この先を進めば安全地帯.....今のあいつらのレベル帯では一体倒すのがやっとであろうモンスターがたくさんいる狩場につく。そこで身を隠し、騒ぎが収まったころあいを見計らって街に戻る。
うむ、我ながら良い作戦だ。
「そうと決まれば....。」
俺はチートコンソールを開き『ALL ON or MAX』と、書かれているスイッチをオンにする。
「簡易スイッチを作っておいて正解だった。」
ALL ON or MAXというのは、名前のとうり自分のステータスを書き換えるチートを全てオンにし、さらに数値については×10000000.つまりカンスト状態まであげてくれる便利なスイッチだ。
「ま、レベルだけは戻しておくか......。」
俺は『Lever』と書かれているスイッチのみオフにする。
「これでばれにくいはずだ。」
さて、どこらへんまで逃げたものか.....。
「あんさん、ちょいとまってくれんか?。」
俺はいきなり呼び止められゆっくりと後ろをむく。
「なんでしょうか?」
「いやー。別に悪いとはいわん。わいもテスターで、特殊スキルっちゅうもんを付与されとる身やからとやかく言うつもりはない。」
「はぁ....。」
この男なにを言ってるんだ?
「でもな。さすがにチートはあかんのちゃいますか?。」
「はっ?!。」
まさかさっきのコマンドをみられてたか?。いや、他のプレイヤーには俺のコンソールはみえないはずだが.....。
「なぜ俺がチータだと確定できる?。」
ここは冷静に対処しなければ。
「わいのスキルは『心眼』なんですわ。」
「だからどうした?。」
「この『心眼』っちゅうのはすばらしいもんでな。なんと相手MOBや他のキャラクターの詳細な数値まで全部みえるんですわ。」
「つまり.....。」
「もう気づきましたかな?。わいにはあんさんのステータスが全てカンスト状態になってるのが丸見えなんですわ。」
「..........。」
不覚だった。
特殊スキルってActiveスキルだけじゃなかったのか。
「で、俺をどうしたいんだ?さっきの奴らにでもつきだすか?。」
覚悟はできている。もしかかってきたら.....。
「っけっけっけ。」
男は笑う
「そんなことしまへんわ。あんさんをあんな奴らに突き出した所でわいも捕まるんだろうし、まずあんさんと今戦って勝てる気なんかしまへんわ。」
「そうか.....。」
少し安心した。俺はこのキャラクターに手をださなくて済む。ということにだが。
俺は今話しているプレイヤーをみる。
髪はつんつんしていて茶髪、服装は和服だし、腰になぜか長剣をさしている。
いかにも武士という感じだ。
「つきださない代わりに手伝って貰いたいことがあるんですわ.....。」
目の前の武士はさっきのふざけたような話かたではなく、真面目な声のトーンで俺にそう言った。
「手伝い?」
「せや。わいを手伝ってくれれば、あんさんがチートを使ってることは他のプレイヤーには内緒にしといたる。」
俺に頼むということは今現在、俺にしかできないであろうことか。
とすると......。
「すまないが人殺しの手伝いは勘弁だぞ?。」
チーターの称号のかわりにプレイヤーキラーの称号をもらうのはさすがに嫌だ。
「そんなあくどい話やありまへん。わいが手伝ってほしいのはこの国のエリアボス討伐の手伝いですわ。」
「エリアボス?。」
エリアボスとは、『ロクノ』の中にいる中型ボスだ。
「一応聞いておくが何人で戦うんだ?。」
「もちろんわいと、あんさんだけですわい。」
やはり二人だけか。
まぁ、俺が負けるなんて事はないが......。やばい。俺今フラグたてちゃった?。
「いいだろう。」
「そうときまれば出発進行やでー!。」
「まて、関西人。お互い名前ぐらいは名乗っておかないか?。」
『あんさん』って呼ばれるの実はあんまり好きじゃない。
「おぉ。忘れてましたわ。わいの名前は『辻斬りのUKM』。β時の最終レベルは24でしたわ。」
「まて、その二つ名みたいな名前がプレイヤー名なのか?!。」
「せや。」
たしかにこいつのプレイヤー表記は『Tujigirino UKM 』と、なっている。
まぁβ最終時のレベルが24か......。中間でがんばってた奴なのかもしれない。
ちなみにトップランカーの最終レベルは52だったはずだ。
「まぁ、気軽にUKMでもゆーちゃんでも呼んでくれてええで!。ちなみにおすすめはゆーちゃんや!」」
「じゃあUKMって呼んでおくことにするよ。」
「つれないなー。」
つられてたまるものか。
「俺も自己紹介をしておこう。俺の名は『ロミテカ』。β時の最終レベルは......。」
ここで言葉がつまってしまう。少し言うのが恥ずかしい気がするが......。
「....3だ。」
少しもった。本当は2だ。
「3?!たったの3?!。ロミテカはんはβ時になにしとったんや!?。」
「しかたないだろ!?。βの期間を使ってツールの開発してたんだから。」
そう。俺がベータ期間中に10レベルに達せなかったのはこれが理由だ。ツールができあがり、十分に使えるようになった時は、すでにベータ期間終了2時間前となっていたのだから。
「もう自己紹介はいいだろ。次は俺からの質問だ。」
「なんや。」
「UKMはなんでここのエリアボスを倒したいんだ?しかも俺と2人だけで。」
「もちろんドロップアイテム狙いや。いまからいくエリアボスは『侍の書』っちゅうもんを落とすんや。」
「なんだそれ?。」
「まぁ、簡単にいうなら職業変更の書やな。侍の職業になることができるんや!。」
「それだったら俺だけじゃなくても.....。」
「続きがあるんや。ええか?ボスドロップは最後に攻撃したチームにしか与えられないんや。」
なるほど、つまり俺とUKMだけのパーティーでエリアボスを倒し、侍の書を確実に獲得するのが狙いなのか。。
「俺はかまわないが、それを他のプレイヤーに知られたらどうする気だ?。」
「それは後々考えればええねん。今は目先のことに集中するのが優先や。」
「そうか。」
もしさっきのようなテスターに対して高圧的なプレイヤーに囲まれたらこいつはどうする気なんだろうか。
もちろん俺はUKMなんてプレイヤーに借りはないし、一人で逃げるつもりだが.....。
「そや、わいがもし他のプレイヤーに囲まれたとしても勝手に逃げてもらってもええで。」
「そ、そうか。」
こいつスキル関係なしに心眼もってんじゃねーのか?なんて考えてしまう。
「みえたで。あいつがここのエリアボスや。」
俺達の目の前には巨大......ってほどでもないが、通常の30倍はありそうなヘビがとぐろを巻いていた。