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マルチエンディング①

「俺はまだロクサスノーツに希望を持っている。

それに、一人のゲーム好きな運営が自分の人生を賭けて作り上げた作品だ。

ワールドを復活させて貰うよ。」

マウスを操作し、『Open the World』をクリックする。

新しい世界の幕開けの気分だ。

『カチッ』

爽快なクリック音と共に何やら波動のようなものがパソコンから発せられたような気がした。

「ありがとう......本当に.......」

「おい泣くなよおっさん。」

「ふっ。僕はまだおっさんと呼ばれる歳じゃないさ。まだ22だからね。」

「案外若いんだな。」

「そう言って貰えるとありがたいよ。」

そう言った六壁院裕二は泣いてはいるものの心の中で清々しい笑いを浮かべているような感じだ。

「お二人型。話は済んだかい?」

タイミングを見計らったように園原巡査部長が一人で入室してくる。

「あぁ。僕への逮捕状だったよね。」

六壁院裕二はいさぎよく両手を差し出すと手錠を掛けられた。

「六壁院裕二。署まで同行を頼もうか。」

「こちらこそお願いします.......岡田君。君の選択で僕は救われた気がしたよ。運営については某大手の『リーマング』が快く引き受けてくれたから大丈夫だ思う。」

「あぁ........そうか。」

リーマング......AVBというFPSゲームが有名な運営だったな。

俺はあまり得意じゃなかったので青階級で辞めちまったが、面白いゲームだったと思う。

広く感じた屋敷の中はあっという間に終わり玄関をでて、これまた広い庭に出る。

庭の中間まで行ったあたりで後ろが騒がしい事に気がつく。

メイドと少女の言い合いだった。

少女は14歳くらいで髪は金髪で長い。ハーフだろうか?

服装はよくあるようなフリルのついたワンピースって感じだ。

「凪お嬢様!!今、彼は忙しいのです!!勝手に外に出ては......」

「いやだ!!離して!!だいたいなんで僕のことは『お嬢様』をつけるのにお兄様には名前すら呼んでくれないの?!それでも昔仕えていたメイドでしょ?!」

「ですから彼はもう六壁院家の家の者ではなくなって.......」

「なんでお兄様は!?ねぇ?!なんで?!」

「ですから......」

そこでメイドさんの手が緩んだのか凪と呼ばれた少女がこちらへ駆け寄ってくる。

「お兄様!!どこへ行かれるのですか?!お父様には許してもらえたのでは......っ!!」

色々言おうとしていたがここで少女がこける

「凪......っ。」

六壁院裕二の方は一度後ろを振り返ったかと思うとすぐに前を向き直る。

「進んでください。」

「いや......妹さんが.......」

園原巡査部長もキョドッているっぽい。

「あいつは強い女の子です。........ロミテカ君。妹の元へ行って慰めてやってくれないか?」

「それはお前の仕事じゃないのか?」

「僕はもう凪には顔を合わせられないよ。だから頼む。僕の代わりに?な?」

俺は言われた通り後ろに戻り少女の元へ行く

「進んでください。」

大事な事なので2回言ったんだろうな。

俺と少女との距離は近づき、巡査部長達との距離は離れていく。

少女の元へ辿り着いた時、これまたタイミング良く雨が降り出した。

なんて天気だ。まぁ、予報では80%雨だったけどさ。

「お兄様.......なんで......」

少女は両膝ついて目は宙を泳いでいた。

俺が彼女になんて声をかければいいかは既に決まっている。俺は岡田竜也ではく『ロミテカ』なのだから、彼女も六壁院凪ではなく....

「ユーリス!!!」

その言葉で現実に戻されたように少女がこちらを向いてくる。

「ロミ......テカ?」

「ユーリス!!今ならまだ間に合うぞ!!早く立て!!」

少女は最後の力を振り絞って立ち上がる。そして前に進もうとしている。

「だけど行くな!!」

俺はあえて少女の肩を掴み引き戻す。

「なんで?!ロミテカ?!」

「ユーリス!お前の兄貴は覚悟を決めて署に連行されるんだ!それを止めようとするなんて.......最低の行為だぞ?」

「っ!!でも!!お兄様がぁー.....」

そう言ってユーリスは俺の胸にうずくまったかと思うと、ポカポカと殴りを入れてくる。

体は全く痛くないが心が痛くなってくる。

「ユーリス。見送ってやれ。それがお前の兄が望んでいることだ。」

正直俺にだって姉貴がいるから、もし連れて行かれそうになってたら同じようなことをするかも知れない。

でも.....だからこそ今止めておかなければ六壁院裕二の信念はすぐにで曲がってしまうはずだ。だから第三者である俺は心を鬼にしてでもユーリスを止める。それが元ロクサスノーツのゲームマスターとの約束でもあった。

しばらくすると殴り疲れたのかユーリスはまた虚ろな目に戻ってしまった。

「すみません......」

さっきの人とは別のメイドが駆け寄ってきたかと思うとユーリスを抱きかかえて屋敷の中に戻って行ってしまった。

「お兄.....ちゃん......」

最後にユーリスがそう言ったように聞こえた。

こちらは、ハッピーではないけど良エンドです。

エンドと言ってもあと一話あります。

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