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刑事の感

「なんであんなことをしたんだ!」

「200000人のユーザを助けるためです。」

このセリフ.....何回目だろうか。いいかげん飽きてきた。

今俺は事情徴収室なる所でポリス2人を前にしてお話中だ。

「さっきから君は同じ事ばかり言っているじゃないか。」

あんたが同じ質問ばかりしてくるからな。

「200000人の人間を救うのと、大手の会社に君がハッキングする事のどこに共通点があるのかな?」

「その大手の会社がロクサスノーツという仮想世界の中に200000人のプレイヤーを隔離していたからです。」

俺の考案した全プレイヤーBAN作戦は成功した。しかしそれは全プレイヤーをBANできたのではなく、ロクサスノーツのサーバ自体が落としての成功となったのだ。

しかもビックリなことにロクサスノーツは某大手企業のバックアップを受けて開発に成功しており、サーバ自体もその大手企業のものを使っていた訳だから、当然サーバを落としてしまった俺たちの家には警官隊が突入してきた。

隔離部屋みたいな所に2日間、俺と姉貴は違う部屋に放り込まれた。

3食と風呂と、あまり活字は好きではないが新聞は読ませてくれたので目を通しておいた。各地で眠っていたプレイヤー達が続々と復活しているらしい。

「だめだ。園原巡査部長を呼んでこい。」

「し、しかし園原さんは昨日復帰したばかりですし.......」

「巡査部長も同じゲームにダイブしてたんだ。多少は話しやすいだろ。」

「わ、分かりました!」

数分後に園原巡査部長なる人が入室してきた。

結構巨体だ。

「君が.......岡田竜也君だね?」

「はい。」

少し目が合った。どこかで会ったような気が........そんな訳ないか。

「話す前に.......少年。お腹は空いてないか?」

「いや.....別に......」

「そうか。」

すると巡査部長は後ろの二人にこう言った


「佐伯町にある浜野屋でテラ盛り牛丼を2人分買ってきてくれ。」


うそだろ?今飯なんか食える余裕ないし、テラ盛りなんて聞いたこと無いんだけど?!

「待て!その牛丼って俺の金で買うんだろ?!たしか....」

「佐伯町って!!ここから20キロも車走らせないといけないじゃないですか!牛丼なら出前で.....」

「その通りだ少年!!因みに俺の分も奢って貰う。」

「最低だな!!!」

また俺の大切なお小遣いちゃんが減っちゃう。

「なんで出前じゃないかって?......テラ盛りはあの店にいるお姉さんしかしてくれないからな!」

その為だけに往復40キロも行かされるのか。この人たちも大変だな。

「意義はあるか?」

「あります!!」

「ほぅ.....」

「なんで......!!なんでカツ丼じゃないんですか?!」

室内が静まり返る。

「お前すべってるぞ。」

「ギャグで言ったんじゃないんですけど?!」

まぁ、なんやかんやで2人の警官が理不尽な買い出しに行き、部屋には俺と巡査部長のみとなった。

2人になった瞬間巡査部長さんは俺の方を向いてくる。

「久しぶりだね。ロミテカ。」

「!?」

突然の身バレで硬直する。なんで俺のプレイヤー名.....

「いや....俺の.....」

「その反応だと当たりのようだね。」

「あぁ....でもなんで.....」

「刑事の感.....かな。」

「怖いな。刑事の感。」

現代刑事の感はここまで進化していたのか。

「ま、うそだけどね。」

「嘘かよ。」

そういえば.......この人も俺と同じ被害者だったっけ.....。だとしたら。

「もしかして浜野屋の店長さん.....?」

「おぉ!よく分かったな。」

やっぱりな。まぁ、声似てたし。あと俺の正体知ってて話しかけてくれる男性プレイヤーなんて一人ぐらいしかいないし。

「無事に戻れたんですね。」

「ロミテカのおかげだ。」

「いぇいぇ!でも......」

俺は今捕まっている。そんなこと言えるはずもなかった。

「もっと胸を張っていいじゃないか!君は200000人の人間の命を救ったんだ!」

「まぁ。引きこもり気味だった俺でも名誉なことだったと思ってます。」

でも今この状況じゃ心から喜べない...........せめて姉貴だけでも釈放させて由紀の面倒を見てもらわなければ。

「浮かない顔しているな。あと、向こうの世界の時とは態度なんかが全く違うような気がするんだが。」

「すみません。やっぱそう見えちゃいますよね。」

だって俺は今、半分くらいは犯罪者扱いだし?しかも今まではゲームの中だったからタメ口で喋ってたけどさすがに警官相手じゃ無理があるだろ?!

「もしかして.......このあとの刑務所生活のことにでも悩んでいるのか?」

「........」

刑事の感って結構当たるのな。

「図星って感じだな。」

「半分くらいは当たってます。でも法的処置を受けるのは俺だけで良い気がするんですけど。」

「君がお姉さんに命令をしたと聞いているが?」

待て、命令じゃなくて『お願い』したつもりだったんだけど。

「結局の所、実際にハッキングしたのは君のお姉さんだから、法的処置を受けるのはお姉さんのほうになるだろうね。」

「そうですか.......」

姉貴......会社クビになったりするのかな?給料入ってこなくなっちゃうと由紀困ると思うんだけど.........あいつまだ小学生だし。俺と違って学校には積極的に通ってるし。

「ロミテカ少年。、俺は少し席を外させて貰う。」

電話のようだ。

そう言って店長さんは部屋から出て行く。部屋には俺1人だけになってしまった。

.

.

.

.

数分程度すると店長がニンマリした顔で戻ってきた。なんか気持ち悪い。

「ロミテカ少年!君に面会者だ!!」

「俺に?!」

由紀か?!でも、あいつにはこないように言ってあるし......

「面会相手は『六壁院家』の方だとよ。知り合いか?!」

「いや.......全く.......」

六壁院家は日本でも有数の資産家だ。そんなお家柄ネットの掲示板で見かけたくらいだし、俺にはそんな知り合い一切いない。

「姉貴の知り合いか?」

「すぐにでも出発するぞ!」

店長さんは既に準備万端という感じだ。

「え?!でも......牛丼どうするんですか?」

「彼奴らの事だから察するだろ。それなりに頭良いし。」

頭が良くて察することできるのか?これも刑事の感だったりして.......。

だとしたらやっぱりすごいな刑事の感。


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