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サモナーVSチート事情

俺たちが実行する作戦はいたってシンプルだ。

正面からぶつかり合う。

うん。我ながらいい作戦だ。シンプルイズベストとはこのことだ。

「待て待て!勝率が悪すぎる!」

「そうよ!相手は100人超に対してこちらは.......」

「こちらの人数が3人しかいないと思っているなら間違いだ。」

その後シャルル(のパクリ)をちらりと見てこう付け足す。

「プラス何匹かいるだろ。」

.

.

.

今俺たちは素材集めの真っ最中だ。

なぜかって?

召喚術というスキルは召喚獣の操作が難しい訳ではなく、召喚するまでが面倒くさい。

というのが基本らしい。

召喚獣と言ってもただデカイだけの大型モンスターを召喚するだけでなく、中型や小型のモンスターを大量に召喚する方法もある。

俺たちが今回作戦に使用する召喚獣は後者ほうだ。何故なら前者で召喚できるモンスターは、強力で召喚する際一定のMPを支払い、どんなアイテムでもいいから100個支払うことによって召喚できる。ならこちらの方が簡単だと思うだろう。

世の中そんなに甘くは無ぇぜ。

大型モンスターを召喚した場合毎秒MPが召喚獣に吸い取られるというデメリットがある。どう頑張ったところで今のシャルルには5分が限界だ。

それとは逆に通常のモンスターを召喚したい場合、そのモンスターからドロップするアイテムを10個消費しなければならない。その代わり召喚時のMP消費がなく、持続してMPが減ることはない。

が、弱い。

そんなどこにでもいそうな雑魚MOBを大量に召喚した所で目くらまし程度にしかならない。

だから俺たちはレアモンスターのドロップ品を集めてそのレアモンスターを大量に召喚して戦力の足しにしようという計画だ。

雑魚MOBは弱いがレアモンスターは通常より強く設定されているため、100体程度いれば十分だろう。

「いや!無理だろ!!レア素材1000個だぞ?!何ヶ月かかることか.......」

「こんな素材集めになったのは、どっかの誰かさんが私の召喚獣を全滅させちゃったからよ!誰とは言わないけど。」

誰だろうな。そんな無礼な事をする奴は。そんな奴は母ちゃんに本棚の裏に隠しているアダルティックな本が見つかってしまえば良いと思う。

「どうせ全部召喚できたところでぱくりちゃんのMPじゃあ1分持たないだろ?」

「も、持ちますーーー!1分30秒ぐらいなら持ちますーー!!あとぱくりちゃんなんてプレイヤー名じゃないわ!シャルル様と呼びなさい!!」

「はいはい。ふぁーふぁー。」

「にしても全然出現しないな、『暴食竜ギガドラン』」

「そりゃーな、レアモンスターがそんな簡単に出現するはずがないだろう。」

「さっき一体倒したけどあの時にできなかったのか?ロミテカ君のチートとやらを。」

「あぁ、あの一体からドロップしたアイテムIDが増殖の基本になるからな。あとプラス一体倒してくれると助かる。」

「了解だ!」

俺はこうやって説明しているが実際はさっきに一体で十分だ。

だが事故というものはいつおきてしまうのかわからない。スペアを用意する必要がある。

『暴食竜ギガドラン』のドロップアイテム『暴食竜の牙』のアイテムIDを確認する。もちろんこのIDも普通のプレイヤーは分からないと思う。ツールを通して確認するのが基本だ。

『A6M0928:8199I29391KQIZE』

うん。全く意味が分からん。

こういうチートはあいつの方が得意だろうな。固有IDとか座標位置とか全く分からん。

「現れたぞ!!」

「まかせて!『神話から呼び出されし水流の美女!神々からの使いであるこの私に力を!その凍てつく瞳に敵を捕えたまえ!サモン!ウィンディーネ!』」

シャルルが唱えると足元に水色の魔法陣が現れる。

てかこんなに長いのか?召喚術のスペルって。

『はいはーーい!みんなのアイドル、ウィンディーネちゃんだよぉーい!』

まぁ.......美女だけどさ......背が普通の人間サイズなんだよなー.....もっとましな召喚獣いなかったの?さっき出したドラゴンとか.......

「あんたさっきだしたドラゴンとかより弱そうとか思ってるでしょ?!」

「気のせいだ。」

「くぅー!!思ってたのね!汚名返上よ、ウィンディーネ君!」

『僕はウィンディーネちゃんだよぉーい?』

「あ、すいません。」

こわ!ウィンディーネちゃんこわ!

「ウィンディーネちゃん!アイス・フローディアン!!」

『アイス・フローディアン!!』

アイス・フローディアン......氷属性魔法の上級魔法か。でもそんなMPどこから.....。

俺はパーティーコンソールを開きシャルルのステータスを確認する。

『 98/310』

待て待て、こいつのレベルが21だろ?なんで上級魔法なんか使ってんの?

こいつら相手なら初級魔法強化で十分じゃん?!

「おい!シャネル!なんで上級魔法なんか使うんだよ!」

「仕方ないじゃない!大型召喚魔法の召喚獣は上級魔法以外覚えてないんだから!あと私はシャルルよ!ファッションに革命を起こした様な人じゃないわよ!」

もちろんギガドランは倒したが周りの敵も挑発してしまったらしく.....。

「ロミテカ君、ここは危ないぞ。素材は今ので集まったんだろ?ここは一旦ひいたほうが。」

今まで取り巻き狩りをしていた店長が提案をしてきた。

「そうだな。おい!一旦退却だ!」

「あんたなんかに言われなくても聞こえてるわよ!」

やっぱ大手ギルドの前リーダーだ。早い段階で的確にフィールド全体を把握し、既に退路まで作ってある。

退却している途中こんな話をしていたのを覚えている。

「なぁ、シャルルのステータスを確認した時に思ったんだが.....」

「あまりに強力すぎてびっくりした?」

「いや.....魔法職にしてはMP低いなーって思った。」

そう、魔法職なのにMPが低すぎるのだ。β時代は20レベ超えたあたりで魔法職は2000を超えていたはずだ。俺の記憶が正しければ。

「は?何言ってんの?私は戦士職よ。」

は?

「だって召喚魔法......」

「だからあれはβスキルよ。」

「効率悪くないか?」

「えぇ、悪いわ!」

「じゃあなぜ?!」

「だってー、リーダーと一緒の職業系列がいいからに決まってるじゃない!」

うわー。すっげーやつ。好きな人と同じ職業にするのかよ。

「......リーダーは私の憧れだから.....」

そう話すシャルルの顔は少し悲しそうだった。

「見えてきたぞ!あそこまで逃げ切れば俺たちの勝ちだ!」

「ないす店長!」

取り敢えず俺たちは安全地帯に着くことができた。

「んーで、あんたはどうやって2個しかないアイテムを1000個まで増やすのよ。」

「まぁみとけ。これが俺の錬金術だ。」

まず俺はアイテムコンソールを開き、『暴食竜の牙』を1個選択し、アイテムIDをコピーする。

次にあらかじめ買い占めておいた『パン』を1000個、『change item ID』と書かれたコンソールにぶち込む。そしてパンのアイテムIDを『暴食竜の牙』に書き換える。

changeと書かれたスイッチ押すと出来上がり。

「ほらよ。『暴食竜の牙』1000個だ」

「チートみたいね。」

「チートだからな。」

まぁそうだけど。と言ってそうな顔でシャルルは『暴食竜の牙』を受け取る。

『サモン!暴食竜ギガドラン!』

シャルルの足元にさっきより小さめの魔法陣が形成され、大量のギガドランが出現する。

「あれ?さっきのくっそ長いスペルは?」

「あんな長いスペルがあるわけないじゃない!私の趣味よ!」

「はぁ?!ふざけんなよ!!51文字返せよ!」

「ちょっと。なんでそんなに怒ってるの?!51文字返せって言われても.....」

ちくしょう!俺の人生で30秒も損しちまった!

「おぉ!本当に100体もいるじゃないか!」

「店長、狩らないでくれよ。」

「パーティーメンバーの召喚獣には攻撃しても当たらんよ。」

「お、おぅ!そうだったな!それぐらい常識だよな!常識!」

俺そんなにパーティー組んだこと無いから分かんねーよ!ちくしょう!

「準備は整ったわ!」

「ロミテカ君はどうだい?」

「俺もばっちりだ。」

「そうか.......。俺は奴らに勝つ!そして『鶏肉の生姜焼き』を取り戻す!」

やっと良い雰囲気になってきたじゃん。 でもギルド名がな......。

「出陣じゃあ!!」

「「おぉー!」」

3人+100匹もいれば負けることはない。

もちろん俺は使わせて貰うつもりだ。ここで負けたら笑い話になんてならないからな。






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