俺のチート事情
チートという言葉を聞くと悪い意味に捉えるやつが多いだろう。
そもそも、チートというのはスペル表記であらわすならば「Cheat」。意味は、「ズル」「だます」である。だが、全国のゲーマーからすれば不正行為、つまりは許されない行為であることは間違いない。
この俺、岡田竜也もチート行為の常習犯である。ソーシャルゲーム、PC用オンラインゲーム、家庭用ゲーム、などなど色々なゲーム機種でチートソフトを作り、自身の端末やパソコンにインストールをしては使用していた。
事の発端は数日前にさかのぼる
「できた....!」
暗い部屋の中、ディスプレイ5枚を前に俺は歓喜の小言をほざいていた。
俺が作っているのはバーチャルゲーム機『UFAX』のオンラインゲーム『ロクサスノーツ』の専用ツールである。
「さっそく試運転といきますか。」
俺はヘッドパーツを頭に装着し、こう叫んだ
「ログインゲーム・ロクサス!」
何かに吸い込まれるような謎の感覚におちいり俺は目を閉じた。
目が覚めるとそこは薄暗い部屋ではなく、太陽の光がたっぷりと当たっている草原だった。
そう、この世界こそが『ロクサスノーツ』 、通称『ロクノ』の中である。
ワールドは一つしかなく、今ログインしている全プレイヤーがひとつのワールドの中にいる。
ゲームワールドの広さは日本の広さと同じだったはずだ。
「現在の総ログイン数が約200000ってところか。」
なぜこんなにも人が多いのか......答えは簡単である。このゲーム、『ロクノ』 は昨日配信されたばかりなのだからな。
確か今のトップランカーのレベルが6.....だったはずだ。
ちなみに総ログイン数もトップランカーも運営情報であり、まだチートを使用しているわけではない。
ちなみにちなみに、トップランカーがレベル6だが、このゲームの最高レベルは999である。
俺は何かをスクロールするような操作を行う。すると効果音とともにシステムコンソールが出現した
「アイテム、ログアウト、ステータス、性別、簡易メッセージ、チャット....。」
色々な項目がある。
「他のプレイヤーから見えるのが....。」
俺は近くにいた適当なプレイヤーの情報を確認する。
「レベルと性別、簡易メッセージだけか。」
なぜこんなことを確認したかというと、この時点でレベルをいじってしまうと怪しまれるのは確定である。そんなことになると俺はゲームマスターから追放されかねない。そうなると今までの苦労が水の泡になってしまう。
俺は人がいそうにない森の中に入っていった。
「ここなら誰もこないだろう。」
この森はレベル効率が悪く敵も無駄に強い。
パチンッ!
俺は右手の指を鳴らす。するとさっきのシステムコンソールとは違い、いろいろなステータスやつまみが沢山並んでいるコンソールが出現した。
このコンソールを出現させている状態でチート使用可能である。まだなにもいじっている状態ではないが。
「まずはあいつに挑んでみるか。」
ちかくにいるモンスターに切りかかる名前は『ウッドスライム』だったはずだ。
敵のHPゲージがほんの少し.....ミリ単位で削れた気がした。
「?!」
目の前のスライムが俺に飛び掛ってきた。が、こんな攻撃は簡単に避けることができる。
「きゅい!」
もう一度攻撃してくるが俺は右に飛び攻撃をかわす。なぜかわしてばっかりなのかって?
それは、今の俺のレベルが1でやつの攻撃を一発でもくらえばたぶん瀕死になりかねない。リスポーンしてもかまわないが、またここに戻ってくるのがめんどうである。
「ちょっとにげるか。」
俺はさっき出現させたばかりのコンソールの『Jump』と書かれている部分までスクロールし、横のメーターを『×8』まで上昇させる。意味としては、ジャンプ時の高さを8倍にするという意味だ。
「ッ!」
近くの木の枝までジャンプする。さっきのスライムは気の真下で立ち往生している。
俺はさらにコンソールの『Attack』、『HP』と書かれているところをどちらも『×400』まで上昇させる。
上昇は『×100000』まで可能だ。
自分のHP数値が522から208800まで増えていることを確認し、俺はスライムのいる木の下まで飛び降りる。
ドンッ!
少しダメージを受けた。落下ダメージもあるらしい。しかも痛みも感じてしまう。
「こりゃーできるだけ攻撃されたくないが....。」
誰だって痛いのは嫌である。
「こいよスライム!」
その言葉に挑発されたのか目の前のスライムはさっきより早い突撃をしてくる。
HPが400程度削れる。
「こりゃー元のHPだと2発で負けちまうわな。」
近くにあった棒をダーツのようにスライムに向けて投げる。
スライムのHPゲージが1300から0に一瞬で減り、大量の英数文字羅列となって消えてしまった。
経験地が入ったが残念なことに1レベルも上がらない。
「狩続ければ3レベまではちょろいな.....。が。」
俺はコンソールを消し通常のシステムコンソールを開く。
「飯の時間やぁ。」
ログアウトのスイッチまでスクロールしログアウトボタンを押す。
『ログアウトしますか?』
俺のだけに聞こえるシステムアナウンスが流れ『Yes』のボタンを押す
すると目の前が白くひかり、目を開くと俺は自室にいる......はずだった。
「は?」
俺はいらつきを隠せずに何度も同じことを繰り返す。
「なんでログアウトできねぇんだよ!」
10回程度繰り返したところで手を止めた
「とりあえず、町に戻ってみればなにか情報が手に入るか。」
あまり人付き合いが良い俺ではないが、今回ばかりはしかたない。
コンソールのスキルタグにいき、転送スキルを使用する。このスキルは最初の街に転送されるというなかなか使えるスキルだ。ただし10レベルまでしか使えないが......。
俺の周りを青白い光とともにスキルエフェクトがかかる。
目を開けるとそこは沢山の人が話している街だった