第6話 トロールの待ち伏せ
「マーレさん、ストーップ!!」
俺は大声で商隊を止めた。
「ヨージ、どうした!」
俺がこれまでに無く大声で緊張しているのに気づいてマーレさんは確認する。
「ガル達を集めてください。ちょっと相談しないといけません」
「わかった。すぐ集める。ちょっと待ってろ」
ガルたち5人は商隊の3つの馬車の中で、一番後方を主に警護しているため俺の声は届かない。
走ってマーレさんが呼びに行く。
10分ほどして皆で先頭の馬車の前に陣取る。
「なんかやばいのいましたか?」
みんな押し黙った状態のなか、ガルが俺に聞く。
「身長が3mくらいで、肌が緑色で一つ目、足が短く、腕が長くぶっとい。棍棒を持って、この先の街道上の5km先にいる。俺は名前はしらんが、やたらでかく強そうな奴が2体だ」
今見た情報をそのまま伝える。
「そいつは、トロールだ」
ミルが即答する。
「どんなやつだ?」
俺が聞くと、ナリアが細かく説明する。
「緑色で一つ目は、トロールのなかでガリア種と呼ばれるタイプで、トロールの中では比較的おとなしいです。基本は腕力にものいわせて殴りつけたり、棍棒で叩きつけたり、岩を投げてきたりします。ただ・・・」
「ただなんだ?」
「人を見ると、執拗に追いかけてきて、食べます・・・」
ナリアはそう答える。
まじか!?
食人鬼か・・・
「弱点はないのか?」
「基本手に比べて足が貧弱なので、人が全力で走れば追いつけないと思います。うろ覚えですが、背中に取り付けばいいと聞いたことがあります」
少し自身がなさげにナリアは説明する。
「マーレさん、どうでしょう、奴らが移動するまで少し待機するのは駄目ですか?」
俺はマーレさんに顔を向けて、聞いてみる。
「わかった。とりあえず、やり過ごせるならそうしよう」
そういって、3時間様子をみることにした。
様子を見ている間、いくつか気になったことがある。
まず、大きな岩があるため隠れて見えないが、馬車の屋根がチラッと見える。
一体は完全に道の上に仰向けで空を見ており、もう一体は岩を背もたれにしてくつろいでいる。
岩に寄りかかっているほうが、何かつかんだ。
「ん・!? 人の足? やばい、足を丸かじりしている」
3時間がたったが、奴らは一向に動く気配が無い。
再度みんなを集めて相談することにした。
とりあえず、3時間の間に観察したことを皆に伝えた。
1.別の馬車が襲われている
2.人を食っている
3.2体とも動く気配が無い
それを聞いて、皆一様に下を向いて黙ってしまった。
沈黙の中、俺が考えが推測を話した。
「たぶん、あいつら街道を通る商隊や人を待ち伏せしているんだと思う」
ナリアがそれについて、
「そうでしょうね。人の味を覚えて次の獲物がくるのを待っているんだと思います」
ミルがマーレさんに質問する。
「マーレさん、街道を避けることはできないっすか?」
「うーん、それは難しい。あそこをよけるには魔の森を通る必要がある。それだと奴らよりやばい魔物に遭遇する可能性が高い。それに他の商隊が襲われているのをそのまま見過ごすわけにいかん」
みんな黙ってしまった。
そこで俺が考えた案を話すため、ガルに顔を向ける。
「俺に1つ案があるんだが、作戦はこうだ。まず俺が岩に寄りかかっている奴の目を弓で射抜く。その間にガルとキーアが寝そべっている奴に挑発を加えて、引き離す。引き離している間に俺が1体倒し、そのあと3人でもう一体を倒すんだ」
「えっ、一人で一体倒せるんですか?」
ナリアが驚きの表情で答える。
「たぶんいけると思う。奴らをよく見ていると弱点が見えてきた」
「どういうことです?」
キラが聞く。
「さっきのナリアの説明で背中に取り付くと言っていた話だが、よく見ると奴ら背中に腕が回らない様子なんだ。岩にもたれている奴も寝そべっている奴も、どうやら背中がかゆくてやっているみたいだ」
「でもどうやって背中に取り付くんですか?」
ナリアが聞く。
「矢とショートソードでそれは何とかする」
「それで、ミルとキラとナリアはどうするんだ?」
マーレさんが聞くと、
「3人は馬車の護衛に残します。トロール以外に襲われる危険があるので」
俺がそう答えると、作戦は決まった。
では討伐開始だ。