第63話 珍獣? その16
その後、バレス冒険者ギルドはアルケイン商業組合に事情を問い合わせたらしい。
しかし、アルケイン商業組合は、今回の依頼をカリン村を迂回させてバレス冒険者ギルドに頼んだ事実は決してないと断固否定したそうだ。
バレス冒険者ギルドは、そこでアルケイン冒険者ギルドを介して更に追求を進めた。
それでも、アルケイン商業組合は事実を認めなかった。
ただし、アルケイン近くの街道の安全を確保してくれてたことに関して、間接的だが物流の弊害を取り除いてくれたので、独自に報奨金を出したいと急に言ってきたそうだ。
その額が、バレス冒険者ギルドが再度クイーンコボルトの集団の討伐の査定をしなおした金額の3倍を提示してきたそうだ。
その結果、今回の追加報酬となったということだった。
もちろん、バレス冒険者ギルド自体もそこから利益を十分得ていると思われるが査定しなおした金額はなぜか教えてもらえなかった。
まあ、ホントのところ、どのようなやり取りが2者であったかは、俺達にはわからない。
アルケイン商業組合的には、こんなセコイことをしていた事が発覚すると、多方面で信用問題になりかねないので、それだけは回避したかったのだろう。
結果、最初の経費も合わせるとかなりの出費をしてしまったということだ。
冒険者ギルドとしても、メンツがあるので依頼が迂回されていたということが公になることは避けたいのかもしれない。
更に各商業組合は、いろいろな面でバックアップしてもらっているという負い目もある。
ギルドとしては俺達に追加報酬とランクを上げることで、手を打てということだ。
なかなかしたたかというか、なんと言うか、命をかけた俺達としては微妙な感じだ。
ただ、カイン達は大喜びだった。
こいつら単純だから仕方が無い。
そのあたりの事も教えてやったのだが、追加報酬が出ただけでもありがたいと思っているふしがある。
よくよく聞くと、このように追加報酬が出ることは稀なことだそうだ。
つまり、騙されたくなかったら、もっと経験をつんで依頼を見る目を鍛えろということが言いたいらしい。
今回は、カイン自身、そのあたりが不安だったから、俺を仲間に引き入れたそうだ。
こいつらはこいつらで、実は意外と、したたかだった。
本人の中でも理想的な考えと、現実をわきまえているのだろう。
こういう世界で生き残るということは、そういうことなのだ。
ある意味、俺とは違って、逆に物事を悟っているかもしれない。
結局、俺自身が甘いのだろう。
死んでしまったら、文句も言えないのだから。
その後、俺は追加報酬については均等割りにした。
最初、カイン達は追加報酬も事前の取り決めと同じにしようと考えていた。
実際、追加報酬の7割を渡そうとしてきたのだ。
しかし、俺はその真摯な心根がうれしかったので、断固として拒否した。
理由はそれだけでは無い。
そうすることによって、カイン達もより生活が楽になるだろうし、装備関連もマシになるだろう。
ナンダカンダ言っても、俺はカイン達に死んでほしくない。
俺を慕ってくる、ちょっとこずるいが、憎めないこいつらが好きなのだ。
ただ、俺が出来るのはこの程度が限度だ。
ランクが上がれば、選べる依頼も増えるが、逆に危険も増す。
死なずで頑張ってほしいという気持ちが、偽ざる本音だ。
「兄ちゃん、本当に、本当に、均等割りでいいの?」
「ああ、いいさ。追加報酬については取り決めはしてないんだから。均等割りにするのが筋だ」
カインは、仕事の成果内容から言うと、圧倒的に俺が高いことをよく理解している。
だから、うれしさを一生懸命我慢しているが、子供なため我慢できず口角が少しつりあがっている。
「気にスンナ。俺としては、今回はムチャを手に入れたことが最大の報酬だ。現に俺の命をコイツは救っているからな。なあぁ、ムチャ」
「クーーーーーゥ!」
俺の首に巻きついた、黒い人型蛇は自身の腰に手を当てて胸を張り、えっへん、という仕草をしている。
「まあ、兄ちゃんがそういうなら、俺達は超超うれしいけどね!」
「ただ、無駄に浪費はすんなよ! ランクが上がったんだから、ダンやミシェル達の装備も考えてやれ。それがある意味、俺からの注文だ。数日後、お前らの訃報とか聞きたくないからな!」
「やだなぁ、そんな縁起の悪いこといわないでくださいよぉ」
ムーイはちょっと引きつった笑いをして、現実に起こりえる可能性が高いことと理解している。
「ほんとです。縁起でもない。それよりヨージさんの方こそ気をつけてくださいね。ムチャちゃんがいるといっても、ソロには変わりないんですからね」
キュィも腰に手を当てて、プンプンとプチ怒りって感じで言ってきた。
「わかったわかった。お互い気をつけよう。よし、じゃあな。また何かあったら臨時でいいので呼んでくれ」
「わかったよ。じゃあね」
そういって、俺はカイン達と別れて宿屋に戻った。
◇◆◇◆◇◆
「ただいま、帰りました」
「おう、どうだった?」
宿屋に戻ると、エルバンがカウンターから乗り出す感じで、興味津々で聞いてきた。
「ええ、追加報酬とランクが1つ上がりましたよ」
「ほぉ、こりゃまた、ギルドも大盤振る舞いしたなぁ」
エルバンも、このことが異例だと思っている。
腑に落ちないと感じているのは俺だけのようだ。
俺は、エルバンに事の顛末を全て教えた。
「・・・いい落しどころだな。ギルド的にはかなり良心的な対応だ。まあ、お前は前の一件もあるし、かなり気を使っていると俺は思うよ」
エルバンは意外なことを言った。
俺が騙されて殺されかけた件のことを指している。
「そうですか? 俺的には今回は少し納得いかない感じがするんですけどね。依頼の内容の誤情報を含めて」
「はっ! そりゃ、お門違いだな。強制で依頼をさせているわけじゃないんだから、そこんところも込みで依頼を見なきゃぁ冒険者としては。俺も経験上、実際行ってみて、全然違うということは山ほどあった。つまり、嫌ならやらなきゃいいんだ」
「そんなもんですかねぇ」
「そんなもんだ」
やはり俺は、この世界の人は達観しているなぁと思った。
「あっ! あと、全然別のことになるんですけどいいですか?」
「なんだ?」
「コイツのことなんですけどね」
俺はムチャを指差す。
ムチャは疲れたのか、いつの間にか俺の顔にしがみついた状態で、器用にスースー寝息をたてて寝ている。
「それで?」
「ええ、魔物について詳しい人はだれかいませんか? こいつについてちょっと知りたいんで」
そういうと、エルバンは腕を組んでうーんと唸りながら考えている。
「魔物関連について詳しいといえば、やはり魔物使いだなぁ。そうなると・・・」
エルバンはカウンター後ろからバレスの地図を出してくる。
「ここは、主に奴隷を扱う場所だが、ここに魔物の取引をする店もある。ここで聞いたらどうだ? ただ、あいつら、がめついから、ただで教えてはくれんだろうがな」
そういって、エルバンは歓楽街の裏手にある、1地区を指したのだった。




