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第5話 護衛の旅

 「ヨージ、どうだなんかいるか?」


 問いかけてくる人は、旅の行商人のマーレさんである。

 俺は現在、馬車の屋根に立ちキョロキョロあたりを見回し返事をする。


 「いえ、とりあえず視認できる範囲には魔物はいません。そのまま馬車を進めて下さい」

 「わかった。じゃあそのまま監視を続けてくれ」


 こんなやり取りを、ほぼ一日ずーっとやっている。

 現在、俺は商隊の護衛をしている。

 なぜかというと、村の周囲の魔物を俺が無双したため、狩る獲物がいなくなってしまったからである。

 それでいろいろ考えて、神父さまに相談したところ大きな町に行き、冒険者として仕事することを勧められた。

 ただ、町まで徒歩だと最低でも3週間の道のりである。

 途中小さな村が点在するが、野宿は確実である。

 しかし、一人で見張りも立てず魔物がいるフィールドに暢気に寝るのは完全に自殺行為である。

 どっかのRPGゲームのように野宿しても安全なアイテムでもあればいいが、そんな都合よくこの世界は出来ていない。

 そこで、月1で物資の取引をしている商隊に護衛として同行させてもらって町まで馬車で行こうということになった。

 村長に仲介を頼んだところ、最初は嫌な顔をされた。

 村長の考えとしては、俺に村の誰かと結婚してもらい、このまま村の周囲の魔物駆除をずっとやってほしかったみたいだった。

 何とか神父さまを仲介にたてて説得し、村長はしぶしぶ商隊の隊長のマーレさんに話をつけてくれた。

 現在、商隊は5人の初級上位の冒険者が護衛をしているが、俺が村の周囲の魔物を一人で一掃した実力を聞き、町まで乗せるだけでいいと言うと、喜んで同行を許可してくれた。


 商隊の仲間は、商人で隊長のマーレさん(男)45才と補佐のカルナさん(女)23才と商人見習いのガッシュ君10才が商人部隊である。


 それに加えて、冒険者の護衛部隊が

 戦士職のガル(男)18才 (リーダー) 冒険者E級

 戦士職のミル(男)16才 冒険者E級

 回復職のナリア(女)17才 冒険者E級

 魔法職のキラ(女)18才 冒険者E級

 弓職のキーア(男)14才 冒険者E級


 彼らは、これから向かう最終目的地のガーレン伯爵の居城がある、バレス城砦都市の冒険者ギルドに所属している正式な冒険者である。

 まだ、初心者上位レベル程度で、すべてにおいて若いパーティだか、商隊の護衛の任務は10回以上こなしているらしい。

 若いがまじめに護衛をするということで、隊長のマーレさんから信頼されている。


 「ヨージさん、悪いっすねぇ。ずーっと見張り役をさせて」


 護衛隊のリーダーのガルは申し訳なさそうな顔をして言う。


 「なに言ってんだ、適材適所だよ。俺は目が良いから索敵したほうが全体的に危険も少ないだろ。気にすんな」


 俺はそういってガルの心を軽くしてやる。

 まあ、実際のところ護衛で金をもらっているわけではないので、そこまで本気でやる必要は無いんだが、


 「俺は夜の見張りはしないんだから、これくらいはやってやるよ」


 一応、村長の計らいで、俺は夜はぐっすり寝ることが出来るようにしてもらった。


 「そーだぞ。ヨージの目は非常に良いからな。そのおかげでこれまで一度も魔物から不意打ちを食らっていない。予定よりかなり早く進んでいるのが何よりの証拠だ」


 マーレさんはそう言ってガルを諭した。

 実際、鷹の目の能力をフルに使って街道沿いを馬車の上から見ると、大体どこに魔物が潜んでいるかよくわかる。

 特に、今いるような平原に近い場所では5km先まで良く見渡せる。

 そして、魔物をいち早く発見し、更に正確に種類を判別できるため、タイミングよく馬車を止めて魔物を回避したり、5人に馬車を守らせ俺一人が走って先回りして討伐できる。

 まぁ、出てくる魔物はほとんどゴブリンかオークで、現在スキルの振り分け技術が格段に向上した俺の敵ではなかった。

 魔物の特性と弱点を正確に判別し、相手にとって最悪で、自分にとって最適な武器を選択する。

 そして必要なステータスのみ上昇させることで、本来の実力ではありえない成果が出せている。

 別に武術や剣術の修行など一切していない素人の俺なんだが、ホント、スキルボーナスさまさまである。


 「いやー。でもホント悪いっす。俺たちただ馬車の周りを歩いているだけで。発見した魔物もすべてヨージさんが先回りで倒しているからねぇ」

 「兄貴、それ以上は言わなくていいんだよ。悩みすぎると禿るよ」


 横からちゃちゃ入れたのは、ミルだ。

 ガルの弟で、結構軽口を叩くお調子者だ。


 「でもなぁ、一応正式な護衛は俺たちなんだから、楽しすぎなんじゃネェかと思うだよな」


 ガルはまだ気にしている様子である。


 「ガルはホント心配性ね。私たちはいざ強敵が出たら本気をだせばいいのよ」


 キラがガルに言って聞かせる。

 ナリアとキーアもうんうんと頷き同意する。


 「そんなんでいいのかなぁ?」


 とガルはまだ悩んでいる。

 俺はそのやり取りを見て、非常に良いパーティだと率直に思った。

 リーダーのガルが全体についてあれこれ考え、確実に危険を回避し、それをうまく残りが補助している。

 個々の実力は正直低いがバランスが良いと思った。

 彼らは皆バレス城砦都市で育った子達で、年齢は異なるが同じ日に冒険者に登録しその縁でパーティを組んだということだ。

 それから2年こうやって無事に冒険者を続けている。

 マーレさんの話によると、冒険者は最初の1年が一番の鬼門らしい。

 多くは最初の1年に何らかの原因で死んでしまうということだ。

 たぶん、彼らのこのようなやり取りが一人も欠けることなく今に至っているのだろう。


 「それにしてもヨージさんはほんと、多才でつよいっすよね。正直パッと見はヒョロくて、キーアでも勝てそうな感じがするのに」


 今度は、ミルがちょっと俺に挑発してきた。

 ナリアが続けて、


 「そうそう、特殊な技術があるというわけでもないのにゴブリンやオークを一人であっという間に倒すし、回復魔法や攻撃魔法も駆使するし、何でもありですよね」

 「どうやったらそうなれるんですか?」


 最後にキーアが質問してくる。


 「それはね。君達。うーーん。私の天才的な才能がなせる業なんだよ。ふっふっふっ、あっはっは」


 適当にごまかして俺は話を打ち切る。


 「「えーーー。ちゃんと教えてくださいよ」」


 5人はちょっと残念そうな顔をした。


 そんなやり取りをしながら結構楽しく旅を続けて、バレス城塞都市まであと村1つというところで非常に厄介な敵に遭遇することになった。

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